キャンプブームで「山買う人」が急増! でも......プライベートキャンプのために山を買うと後悔する!

キャンプブームで「山買う人」が急増! でも......プライベートキャンプのために山を買うと後悔する!

  • ハーバービジネスオンライン
  • 更新日:2020/10/16

キャンプ愛が過熱し、他人に気兼ねなく自然と戯れようと自ら山のオーナーとなる熟練キャンパーが増えている。だが、自分だけの「秘密基地」を手に入れるのと引き換えに大きな代償も……。今回、過酷な現実をリポートする。

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草刈りなど厄介な作業を片付け、キャンプを楽しむユタカさん

◆1haの相場は30万~80万円!山を買う“リスク”とは?

プライベートキャンプを夢見て山を買う人が急増している。空前のアウトドアブームの中、キャンプを愛好する芸人・ヒロシさんが山を購入したことが大きなニュースとなったが、コロナ禍で「3密」を避けるレジャーが人気となったことも強力な追い風になっているようだ。

山の売買仲介に16年間携わる山林バンクの辰己昌樹代表は、驚きを隠さない。

「キャンプ目的の山林購入の問い合わせは今年1月から激増し、8月には月500件を超えた。問い合わせの7割がキャンプ目的で、こんなことは初めてです。芸人さんが山を買ったことが報じられ、思いのほか山は安く手に入れられると、広く知れ渡ったことが大きな理由でしょう」

山林の価格相場は、1ヘクタール(約3000坪)=30万~80万円。宅地などに比べてケタ違いに安いため、中古車1台買える程度の予算があれば、憧れのプライベートキャンプ場が手に入るのだ。

埼玉県のユタカさん(35歳)は芸人ヒロシのYouTubeチャンネルを見て興味を持ち、キャンプを楽しむようになって2年。キャンプ熱が高じて、今年5月に埼玉県内に100坪の山を250万円で購入した。

「最近はブームの煽りで、どこのキャンプ場も大混雑。爆音で音楽をかけるようなマナーの悪い人も増えたので、自分だけのフィールドが欲しくて、山を買おうと決めたんです。ただ、最初に下見した物件は、挨拶回りで行ったお隣のおじいさんがいろいろ難癖をつけてきて……揉めそうなので諦めました。最終的に買った山は勾配が大きいのですが、建設関係の仕事をしており、重機を扱えたので自分で整地しています。山を買ったおかげで、4歳の子供が虫に触れるようになったのはよかった。想定外だったのは、土嚢6袋分(約120㎏)の廃材を不法投棄されたこと。道路に近いので狙われやすいんです。今後、厄介なゴミを山に置いていかれないか不安です」

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建設関係の仕事に従事しているだけに、ユンボの扱いはお手のもの

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道路が近い山は、不法投棄されることも珍しくない

◆忘れがちな山を買うことの「リスク」

近年、山の所有者が頭を悩ませているのが、産廃やゴミの不法投棄だ。森林ジャーナリストの田中淳夫氏は、山を買うことの「リスク」について警鐘を鳴らす。

「山を維持・管理するのは想像以上に手間がかかる。日本の山は放置するとアッという間に草が生い茂るが、草刈りしても1か月もすれば元に戻ってしまう。木の伐採中のチェーンソーの事故も多い。水の確保も大変で、沢があるからと勝手に水を引くと、地元の水利権を侵してトラブルになる。また、ヒルや虫は想像以上に多いし、最近はクマに襲われることも珍しくない。さらに、キャンパーが好む焚き火は山火事と勘違いされて通報されたり、近隣の人が怒鳴り込んでくることもあるので、事前に伝えておかなければいけません」

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月に1度の草刈りは欠かせない

◆境界線が不明確で隣人とのトラブルも

大阪在住の飯田裕さん(仮名・33歳)は物心ついた頃から家族と共にアウトドア・ライフを満喫してきた熟練クラスだ。結婚後も子供を連れてのファミリーキャンプや仲間とのブッシュクラフト(最小限の道具で自然と共生する)を楽しんでいるが、今年4月、思い切って奈良県内にある700坪の山林を70万円で買ったという。

「とにかく草刈りが大変で、夏場は汗と泥に塗れて延々と単純作業……地獄ですよ。スズメバチにも出くわす命懸けの作業だけど、草刈りを仕事にしている仲間が手伝ってくれている。僕の山には井戸があるので、ありがたく使っていたら近隣の人に注意されてしまって……実は、不動産屋さんの勘違いで、井戸は僕の土地の外にあった。境界が不明確なこともある山では近隣とのコミュニケーションは必須なので、苦手な人には向いていない。友人の協力や家族の理解なしには、やっていけません」

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BEFORE→AFTER。きれいに草刈りされているが、「人の背の高さの雑草が700坪に生えている……夏場は地獄の作業です。それでも1か月後には、草刈りすることになる」

山の近隣トラブルはよくある話のようだ。前出の辰己氏が続ける。

「境界線が明確な山林を選ぶべきなのはもちろん、流通している山林の1割ほどは実測しておらず、法務局に登記された面積と違うこともあるので要注意です」

山を持つには想像以上の苦労が伴う。先に紹介した山の購入者2人は、重機を扱えたり、草刈りのプロの協力があったりと、今も自分の山でキャンプを楽しんでいられる相応の理由があるのだ。

◆「山と一生共にする」覚悟が必要

永田健介さん(仮名・42歳)は現在のブーム到来前の’13年、中部地方の180坪ほどの山林を40万円で購入。数年かけてプライベートキャンプ場を完成させた。

「40年近く放置され、当初はジャングル状態(苦笑)。ほぼ毎週末、東京から2時間半かけて妻と2人で通い、半年がかりで開拓しましたが、朝から夕方までの重労働は仕事より大変なほど。草刈り機やチェーンソーなどの用具代も山林の値段以上と、バカになりませんが、開拓そのものが好きなので苦にならなかった。今もキャンプシーズン以外に草刈りなどのためだけに通いますが、逆にやることがないと物足りない(笑)。単に遊ぶのが目的なら、キャンプ場に行ったほうが無難です」

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毎週のようにジャングル状態だった山に通い(写真上)、半年かけてコツコツと開拓。その後、プライベートキャンプ場を完成させた(写真下)

永田さんは山の維持・管理を徹底しており、ライフワークの中心にしているが、一方で、熱量が失せてしまうケースもあるという。前出の田中氏が話す。

「キャンプ用に売られている山は小さく分筆(分割)されている上、オーナーも全国に散らばり、不在地主になっている。そのためキャンプに飽きて放置された山で何か起きても、所有者と連絡すら取れない。また近年、増えている豪雨災害で土砂崩れなどが起きれば、責任は所有者が負うことになります」

山を買うということは、一生、山と共に生きていくことなのだ。

◆将来、無人島に住みたいので、想定外も全部勉強になる!

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かほなんさん

可愛いルックスと高いアウトドアスキルのギャップが人気となっているYouTuberで、「さばいどる(サバイバルできるアイドル)」として活動するかほなんさん。そんな彼女も最近、山を買った一人だ。

「標高1000m超なので、11月には雪が降るけれど、夏はヒンヤリしてます。もちろんキャンプするには、まず草刈りとスコップでの整地からスタート。冬にはさすがに行ったことがなくて、今年春に行って、朝起きたら一面銀世界!?(笑)でも、ハードな環境のほうが、むしろ楽しい! もともと、私の目標は、無人島に永住することなんで!」

高く掲げた目標はジョークではない。実際、かほなんさんは、わな猟狩猟免状、第4級アマチュア無線、車両系建設機械(整地等)などの資格を取得済みだ。そんな高度なサバイバル・スキルを兼ね備えた彼女でも、自分の山で想定外のトラブルに見舞われたこともあったという。

「雪が解けて草刈りをしたら、1か月後にはほぼリセットされて雑草って丈夫だなと思ったり……。でも、想定外のことさえ楽しんじゃえ!って思っているし、学ぶことも多い。将来の夢のために、全部が勉強なんです。ただ、勢いで買った私が言うのも何ですが、購入後に『違うなぁ』ってなるのは悲しいので、本当に山を維持できるのか、ちゃんと通えるのかを考えたほうがいいと思います」

トラブルを楽しむポジティブな姿勢を学ぶべし!

【森林ジャーナリスト・田中淳夫氏】

日本唯一の森林ジャーナリスト。森林や林業のほか、山村社会の文化や田舎暮らしもテーマに取材、執筆。『森林からのニッポン再生』『森林異変』(平凡社新書)ほか著書多数。

【山林バンク代表・辰己昌樹氏】

山林売買に特化した仲介サイト・山林バンク代表。マウンテンボイス社長。’05年にサイトを開設し、16年にわたり山の売買に携わる。自身も山林を所有し、キャンプを楽しむ。

【さばいどる・かほなんさん】

アイドル業界のみならず、どんな環境でも生き残る術を修得するため、試練に挑むさばいどる。YouTube「さばいどるチャンネル」は登録者数28万人。近著に『お金をかけない! 山登り&ソロキャンプ攻略本』(KADOKAWA)

<取材/三浦晋哉 取材・文/齊藤武宏>

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