
沢口靖子
テレビ朝日の午後1時55分からの番組枠は、人気ドラマの再放送が毎日目白押しだ。11月21日は「科捜研の女スペシャル」。「科捜研の女」はSeason23まで続く、言わずと知れた人気ドラマで、法医研究員・榊マリコを演じるのは沢口靖子だ。25年もの間、ひとつの役を演じ続けられた沢口靖子の魅力とは?(「AERA dot.」2022年8月28日配信の記事を再編集したものです。本文中の年齢等は配信当時のもの)
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10月からテレビ朝日系火曜午後9時の新ドラマ枠で放送がスタートする「科捜研の女 2022」。もはや説明は不要だが、沢口靖子(57)演じる、京都府警科学捜査研究所(科捜研)の法医研究員・榊マリコを中心に個性的な研究員たちが、科学捜査で難事件に挑む人気ドラマシリーズだ。しかし、7月に公開された新イメージビジュアルでは、これまでとは違ったクールな雰囲気漂う榊マリコの姿が。これにSNS上では「新鮮でいい」「マリコはこういうオシャレな感じのイメージがない」など、さまざまな声が挙がった。
1999年の放送開始から現行連続ドラマ最多シリーズ記録を更新し続けてきた「科捜研」。一方、昨秋ごろからは週刊誌などでは終了説がささやかれてもいた。そんな中での新シリーズということもあり、「科捜研」が放送されることに対してSNSでは「よかったー、科捜研なくなったら寂しい」「科捜研の女が見られるのはうれしい」と、歓喜の声もみられた。歴史ある長寿ドラマゆえ、楽しみにしている人は多いようだが、そもそも、なぜそこまで人気を保つことができるのだろうか。
「科学を武器に仲間と協力しながら証拠を検証し、事件の真相を解明していくというサスペンスドラマで、流れもある程度決まっている“水戸黄門的な存在”というのが人気の理由でしょう。最近はそうしたドラマが少ない上に、『科捜研』は基本的に一話で完結するので何話目からでも見られます。また、同じく一話完結の人気刑事ドラマといえば『相棒』ですが、『科捜研』のほうが説明的なせりふも多くて分かりやすい。しかも、意外とハラハラドキドキしないので、『ながら見』することができるのです。そしてなんといっても沢口靖子の演技が良い。決して演技派とは言えませんが、だからこそストーリーがよりライトになり、誰もがとっつきやすい親しみある作品になっているのだと思います。長年見ていて、あの“棒演技”がクセになってしまったファンも多いのではないでしょうか」(テレビ情報誌の編集者)
沢口といえば、後に長澤まさみや上白石萌歌などを輩出する「東宝シンデレラオーディション」の第1回グランプリを獲得したことは有名だろう。
「グランプリとなった年に、武田鉄矢さん主演の映画『刑事物語3 潮騒の詩』に出演し、女優デビューを飾るとともに挿入歌『潮騒の詩』で歌手デビューも果たしました。さらに、映画『ゴジラ』で第9回日本アカデミー賞の新人俳優賞を受賞します。その後、NHK連続テレビ小説『澪つくし』でヒロインを演じてさらなる人気と知名度を獲得。東宝シンデレラということで、デビュー当初は東宝作品を中心に活躍していましたが、その後はそうした枠にとらわれず、さまざまなドラマや映画、舞台で活躍しました」(女性週刊誌の芸能担当記者)
■プライベートでは変装しない
年齢を感じさせない若々しさが注目されることも多い沢口だが、昨年8月に放送された「帰れマンデー見っけ隊!! 3時間SP」(テレビ朝日系)では、「めるる」こと生見愛瑠から、めるる自身が考案したポーズ“はっぴーす”を「一緒にやって頂きたいなって。全然はやってないんですけど……」とお願いされ、「いいですよ」と快く引き受けていた。演技やルックスだけでなく、そうした嫌みのない人柄も好感を持たれる理由だろう。
「沢口のモノマネで知られるお笑いタレント・メルヘン須長に対し、『確かに私が聞いても似ている』『少し(声が)高いんですよね、私』と、4月に放送されたバラエティー番組でモノマネにお墨付きを与えていたのも印象的です。そうした大女優としての余裕も魅力の一つだと思います。あれだけの美貌を誇りながら、長年浮いたうわさがほとんどなく、私生活はミステリアスな印象がある沢口さんですが、昨年9月のインタビューでは、自身の健康法としてウオーキングを挙げ、スーパーへ買い物に行くときも、車や自転車ではなく散歩がてら歩いて行くと告白。リュックを買って、それを背負って行くそうです。また、『プライベートでは変装しない』と、以前バラエティー番組で明かしていたのですが、街中で『沢口靖子さんですか?』と声を掛けられると『はい、そうです』と笑顔で答えているそうです」(同)
こうした気さくな一面も人気につながっているのだろう。芸能評論家の三杉武氏は、沢口についてこう評する。
「おしとやかな正統派女優のイメージもありますが、大阪出身なだけに関西ノリも好きなようで、撮影現場では気さくに共演者やスタッフと冗談を言い合ったりしているそうです。『科捜研の女』シリーズで長年共演している内藤剛志さんが一緒にバラエティー番組に出演した際、沢口さんとLINEのやりとりをするとすぐに返信がくることを暴露し『たぶん(沢口は)友達がいない』とイジって笑いを誘っていました。共演者と直接LINEをやりとりしたり、ジョークを飛ばし合ったりするあたり、チームワークの良さがにじみ出ていましたね」
周囲にもよき支えがあることで、沢口靖子が出演しているドラマはやはり“安定感”が違う。これからもブレずに「科捜研の女」を続けていってほしい。(丸山ひろし)
丸山ひろし