訪米する菅首相に待ち受ける米中選択の踏み絵

訪米する菅首相に待ち受ける米中選択の踏み絵

  • JBpress
  • 更新日:2021/04/08
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ブリンケン米国務長官と会見する菅首相(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

米国国防省の報道官が日本海を東海と呼んだのはショックだったが、4月2日にワシントン郊外の海軍兵学校で開催された日米韓安全保障担当高官会議も、バイデン政権における日本の立ち位置を考え直さなければならないものだった。

この会議には、米中の外交トップが議論を交わした「アラスカ会議」に出席したサリバン米国家安全保障担当大統領補佐官、日本から北村滋・国家安全保障局長、韓国から徐薫・国家安保室長が参加した。

まだ新政権発足100日という状況もあるのだろう。米国側の発表文には3月の米中アラスカ会議での大立ち回りが嘘のように「中国」の名前はなく、米中で合意した北朝鮮の非核化について触れたほかは、現時点での一般的な協議に終わった印象を受ける。

注目すべきは、冒頭の参加者の紹介を除くと、日韓が出てくる文脈で日本と韓国の名前を最初に出したのがそれぞれ1回ずつと、双方を同じ扱いとし、日韓の関係改善により日米韓の3カ国協力の強化を促している点である。

日本のメディアは、米国の声明を「インド太平洋地域の安全保障を含む共通の懸念」と解釈して、今回の会議が中国を念頭に置いていたと報道している。しかし、厳密には「インド太平洋地域の安全保障を含む共通の関心事」という程度のものだ。日本の読者は対中強硬策を期待しているのかもしれないが、対中強攻策を意識したかのような声明と呼ぶにはやや無理がある。

これには以下の理由があったと考えるべきではないだろうか。

一つは、翌4月3日(厳密には米国東部時間の2日夜)に、中国の王毅外相と韓国の鄭義溶外相が中国のアモイで会談することを意識して、韓国の立場が悪くならないように配慮したという点だ。韓国の鄭外相にとって、中国は初の訪問国であり、米国との対話路線を放棄しつつある北朝鮮問題、および自国の経済に影響を与えかねない中国との経済関係を最優先したことが窺える。

このため、バイデン政権としては最初から中国との対立姿勢ばかりを見せるのではなく、東アジアの形勢に配慮した格好だ。

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米中の間を揺れ動く日本を牽制する米国

北朝鮮問題についても、米国の北朝鮮政策について日韓にレビューを求めたような書き方で、全く踏み込んだ印象はない。

本論の部分で、まずは日米韓の3カ国で北朝鮮の核と弾道ミサイルの開発に対する懸念を共有し、3カ国共同で非核化に向けて問題を解決するとしたものの、その後に、核の拡散防止のために国際社会によって国連安全保障委員会の解決方法を実行すると続けている。国際社会は抑止力を強めるため、および朝鮮半島の平和と安定を維持するために協力するというバイデン政権の国際協調を前面に出した形だ。

結局、外からは、今回の会議で踏み込んだ議論があったのかどうかがわからない。

今回の声明のポイントは、恐らく両国民のため、地域のため、そして世界のために日韓両国が協力するということを強調したことだろう。

在韓米軍への支援増加というトランプ政権の要求を拒否し続けてきた韓国が、バイデン政権になって方針転換をしたことで、米国の心配事項はなくなった。このため、安倍政権時代から続く韓国との関係の悪化をいち早く終わらせ、日米韓の協力体制を作り上げたいと考えていることは間違いない。

加えて、価値観外交を進めるバイデン政権は、米中の間を揺れ動く日本に白黒つけるよう迫っているという印象を受ける。実際、先日の電話会談の際に、米国のオースチン国防長官は日米安全保障条約の条文にない「台湾海峡の有事に備える」という点を岸防衛相に確認してきた。今のように米中の間で曖昧な態度を取り続けていると、いずれ米国から見放されるかもしれない。ただ、日本にとって中国との関係は対米関係の次に大事なもので、どちらも捨てられない。それをどうやって米国に理解してもらうかが鍵となる。

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価値観外交を推し進めるバイデン政権(写真:ロイター/アフロ)

この声明では、ミャンマー問題についても民主主義の回復に対する期待を謳っている。この点を見ると、今回の会議の二つ目のポイントだが、上述したような日本による米中間の揺れ動きを許さないという意志が明確になる。つまり、中国であれ、ミャンマーであれ、民主主義の目的に反する行動には反対しようと言っているのだ。

日本にとっては簡単には容認できない内容である。4月16日に訪米する菅首相には何か腹案があればいいのだが・・・と思うのは筆者だけではあるまい。

小川 博司

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