安定収益で希少な投資機会、住宅リートをはじめJ-REITに一段と注目高まる

安定収益で希少な投資機会、住宅リートをはじめJ-REITに一段と注目高まる

  • モーニングスター
  • 更新日:2021/11/25
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2020年3月のコロナショック前の高値を更新した国内の株式市場に対して出遅れ感のある国内REIT(不動産投信)市場だが、グローバル市場と比較すると、国内の不動産市場には他にない魅力があるという。ドイチェ・アセット・マネジメントのオルタナティブ調査部長兼DWSアジア太平洋リサーチ&ストラテジー・ヘッドの小夫幸一郎氏(写真)は、11月25日に開催したメディア向けの不動産投資市場研究会で「世界の主要都市では中古マンションが1億円超が当たり前になる中、国内の不動産は東京23区の中古で6000万円台と割安な水準にある。世界のマネーが国境を超えて自由に行き来している今、海外の投資家の目には、住宅をはじめとした国内の不動産が非常に魅力的な投資対象に見えている」と現状を解説した。

東京23区のマンション販売価格は、2012年頃の新築5000万円台をボトムとして毎年値上がりし、特に、2021年に入ってからの新築の値上がり率が大きく、9月末には1億円に迫る勢いがある。この新築物件価格の上昇に連れて中古マンション価格も上昇し、6000万円台に乗せて上昇の途上にある。小夫氏は、「共働きで世帯年収が1000万円を超える夫婦世帯には、世帯年収の10倍である1億円までのローンが組めるようになっていて、この世帯らが都内の一等地にある物件を購入している」という。「コロナ禍にあって、自宅の価値に気付いた人が多い。一般に、現在の住まいに満足している人は少ないといわれ、自宅で過ごす時間が長くなるのならば、もう1ランク上の住まいで暮らしたい。あるいは、テレワークをするのであれば、もう1部屋欲しいなど、住まいをグレードアップするニーズが高まっている」と、直近の新築物件の価格上昇を解説した。

この主要都市のマンション価格の上昇は、世界的な現象になっている。たとえば、香港では既に中古マンションの価格が1戸あたり2億円に迫っている。香港よりも一足早く2017年頃に2億円に迫ったロンドンは、ブレグジット(英国のEU離脱)などの影響から価格が下落し、現在は1億6000万円近辺になっているのが唯一例外で価格が下落している。また、ニューヨークも2017年以降は横ばいで1億1000万円程度だが、その他の地域では、北京、上海、シンガポールといったアジアの都市でも値上がりが続き、現在は1億1000万円以上の水準になった。また、近年は韓国のソウルの値上がりが急でシドニーを抜いて1億円超の水準に上昇している。このアジアの主要都市と比較すると、東京23区で中古6000万円台という価格帯は割安に見えてくる。

このような日本の不動産に対する海外の評価は高まっている。たとえば、投資対象国別の不動産クロスボーダー取引額の国別ランキングをみると、2020年現在で日本は世界で第5位になる。トップは米国で、以下、英国、ドイツ、フランスという欧州各国が続く。日本はアジアではトップを占めている。2018年は11位だったが、そこから順位をあげている。日本の不動産に海外の投資家が関心を高めるのは、収益不動産の取引市場について、規模が大きいことと、外国人投資家に比較的開かれた市場である点が背景にある、たとえば、2020年10月から21年9月までの1年間で、アジア太平洋地域の都市別不動産の売買高を調べると、東京は約240億ドルの取引が実行され、この取引に占める外資系の比率は29%だった。これは、第2位のソウルの170億ドルで外資系比率13%、第3位の上海の約120億ドルで外資系4%などと比較して、規模と外資系比率が大きい。

一方、各国のREIT指数の推移を振り返ると、2019年12月末を100にした指標では、米国REITが115ポイント程度とコロナ前の水準を上回って上伸し、豪州REITが105ポイント程度とコロナ前の水準に回復していることと比較すると、J-REITは97ポイント前後で出遅れている。アジアでは香港REITが中国本土との関係性が不透明なことから80ポイント程度と低迷しているが、そのような特殊事情がない日本のREITには、出遅れ感が強い。また、J-REITのセクター別の価格推移を振り返ると、「物流」が好調を持続している一方、「オフィス」の低迷が目立つ。「リテール(商業施設)」や「住宅」が既にコロナ前の水準を回復し、「ホテル」がコロナ前水準をめざして値上がりしているものの、「オフィス」は90ポイントを割れる水準にとどまっている。

小夫氏は、国内のオフィス市場について、「2020年に史上最高水準の供給があったことで、空室率が大きく上昇したところへ、コロナ禍による在宅勤務の進展などがあってオフィス需要に変化が起こっている」という。「東京で5フロア借りていた物件を1フロア減らす方が、地方の物件で200平米借りていたものを150平米に減らすよりもコストカットの効果が大きくなる。地方都市よりも東京のオフィス賃料に下押し圧力がかかりやすい。オフィスの不振は続きそうだ」との見方だった。テレワークの定着の問題については、「情報セキュリティの問題を指摘する向きもあり、在宅を取りやめてオフィスで勤務した方が良いという議論もあるため、一時期はオフィスワークは全体の30%程度となっていた企業でも6割、7割戻っている企業が増えている。ただ、フリーアドレスにして100人のオフィスでも70席しか椅子を用意しないなど、常に一定数のテレワークを前提にした企業も現れている。今後の動向は慎重に見ていきたい」としていた。

半面、都心3区などの一等地では、「オフィスの賃料と住宅の賃料の逆転現象が起こっている。一時期、都心ではホテルの方がオフィスよりも高い賃料が取れる時期があって、都心のホテルが投資対象となったが、今は、都心の住宅に投資家の関心が高い」という。「都心部のマンション取引価格が上昇を続け、分譲価格が上昇すると賃貸価格に強気の賃料設定が可能になる。これが、住宅REITの中長期での安定成長を見通せる根拠になっている」と語っていた。そして、投資用不動産として住宅(賃貸マンション)の市場があるのはアジア太平洋地域では日本だけであり、物件としての希少性も魅力とした。また、近年好調が目立つ「物流」については、「本社所在地の変更などと比べると、企業の物流ネットワークの変更は、より慎重に行われ変更には時間が必要だ。現在、新築の物流施設が供給が拡大しているが、新築物流施設が満床になるには時間がかかる。物流はじっくりと、緩やかに成長が続くだろう」と引き続き、物流施設の好調が持続するとの見方だった。

このように、J-REITは、セクターによる好不調の濃淡はあるものの、全体としては世界のREIT市場の中で割安感があり、魅力的な投資対象であると紹介していた。

徳永 浩

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