共感疲労ってなに?報道を見て「辛い」と感じたときの対処法

共感疲労ってなに?報道を見て「辛い」と感じたときの対処法

  • コスモポリタン
  • 更新日:2022/06/24
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戦争や災害、パンデミックなど、スマホを開けば暗いニュースが次々に表示される昨今。

日常のなかでふと衝撃的な映像や情報を目にしたとき、私たちのメンタルヘルスが受ける影響は少なくありません。では、こういった報道とはどのように向き合っていけば良いのでしょうか。

この記事では、災害時における支援者のメンタルヘルスケアなどにも取り組んできた桜美林大学准教授の池田美樹先生に、惨事報道がメンタルヘルスに与える影響や心の不調への対処法を聞きました。

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【INDEX】

惨事報道がメンタルヘルスに与える影響

特に注意が必要な兆候

報道を見て「辛い」と感じたときの対処法

報道やSNSの情報との向き合い方

惨事報道がメンタルヘルスに与える影響

大災害や戦争などに関する報道を見聞きしたとき、私たちの心はどのような影響を受けるのでしょうか。

池田先生は、「たとえ自分の身に起こっていないことであっても、『自分がもしそこにいたら…』と恐怖心を感じたり、日常とかけ離れた衝撃に圧倒されてしまったり、直接的な体験でなくとも映像や情報に接するという間接的な体験だけで、大きな影響を受ける」と警鐘を鳴らします。

具体的に引き起こされる心理状態としては、不安や恐怖だけではなく、無力感や自責感、共感疲労なども挙げられるそう。

「たとえば、『今起こっている出来事に対して助けになれない』『世の中で大変なことが起こっているのに、自分は普通に日常を送っていて良いのだろうか』と無力感や自責感を覚える人もいます」

「また、『共感疲労』といって、まるでその出来事の当事者であるかのように『自分ごと化』して受け止めることにより、精神的に疲れてしまう場合も。たとえば、自分の子どもと同じ年頃の子が被害を受けているなど、自分と共通点がある状況に対しては、特に感情移入しやすい傾向にあります」

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スマートフォンやSNSの急速な普及によって情報伝達手段が多様化していることも、情報が私たちの心に与えるインパクトの大きさに影響しているとのこと。

「SNSなどで偶然目に飛び込んできた情報の場合、内容に対する心の構えができていませんよね。その状態で衝撃的な映像や写真、情報を取り入れると、印象に残りやすくダメージが大きいと言われています」

「アルゴリズムにより類似の情報に次々とアクセスできる環境も好ましくありません。空いた時間にSNSをぼーっと眺め続けることは、このような刺激に長時間晒される危険性がありますので気をつけてください」

先生によれば、メンタルヘルスが受ける影響は、出来事の種類によって以下のように少しずつ異なってくるのだとか。

自然災害

例:東日本大震災(2011年)

地震や津波などによって街が破壊されたり、人命が奪われたりする衝撃的な映像などに繰り返し接すると、不安や恐怖が強まると言われています。

戦争・紛争

例:ロシアによるウクライナ侵攻(2022年)

自分がいる場所から物理的に離れている異国の出来事であっても、被害の様子や都市が破壊される衝撃的な映像・情報を見て、不安や恐怖だけではなく、人や故郷など大切なものに対する喪失感を抱くことも。

人為的な出来事である紛争状況は、事態に関係する人々や組織への怒り感情も引き起こします。

パンデミック

例:コロナ禍(2020年~)

「外出自粛などの行動制限は実生活と大きく関連してくるため、感染状況や関連する事柄についての報道は、より身近なものとして緊張感やストレスをいっそう強めます」と、先生。

コロナ禍の場合、特に初めのころは“目に見えない未知のウイルス”との戦いであったという点で、自分が感染すること、知らないうちに自分から誰かにうつしてしまうこと、感染し周りから責められることに対する不安や恐怖を抱く人が多かったのだとか。

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特に注意が必要な兆候

報道によるメンタルヘルスへの影響について、特に注意が必要な人やケースはあるのでしょうか。

池田先生によると、もともとメンタルヘルスの調子が良くない人は影響を受けやすいのだそう。また、過去にトラウマティックな出来事を経験している人も注意が必要とのこと。

「虐待やDV、被災などの心理的苦痛を伴う体験をしたことがある方は、報道される衝撃的な映像や情報を見聞きすることで、それが自身の経験と直接的に重なるものでなかったとしても、過去のネガティブな感情や体験を想起してしまう可能性があります」

心の不調の兆候をチェック

日常的に刺激を受け続けることで、気づかないうちに心にダメージを負っている場合も。「自覚がないケースもあるので注意してほしい」と池田先生。

以下のような症状がある場合、少なからず影響を受けている可能性があるので要注意だそう。ニュースを見て気分が落ち込むことがあるという人はチェックしてみて。

夜の寝つきが悪く、日中にも眠気が残る

以前より注意力が散漫になり、仕事でのミスや忘れ物が増えた

なんだか気持ちが沈むことが多く、物事を楽しめない

「心と身体には相関関係があるので、頭痛や腹痛など身体にストレス反応が出ていないかもチェックしてほしいですね」

さらに、次の症状が当てはまる人は専門家に相談するのがおすすめ。

食欲が湧かず、体重が大幅に減った

不眠(あるいは過眠)が続き日常生活に支障をきたしている

自分が悪者である、あるいはダメな人間であるように感じることが続いている

「これらの兆候があるなら、一度メンタルヘルスの専門家(心療内科・精神科)に相談することをおすすめします」

「いきなり心療内科や精神科に行くことにハードルを感じるという方は、まずかかりつけの内科医に相談してみましょう」と、先生は言います。また、 専用の電話相談窓口※を利用するのも一つの方法とのこと。

※こころの健康相談統一ダイヤル
Tel. 0570-064-556

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報道を見て「辛い」と感じたときの対処法

報道を見聞きすることで感じた心の不調には、どのように対処したら良いのでしょうか。池田先生に聞きました。

「無力感や自責感を覚えて辛いという人は、『私には何もできない』と悲観するのではなく、『今、自分にできることは何だろう』と考えてみてください。直接的ではなく、身近なことで支援につながるような何かできることがあるかもしれません」

一方、共感疲労を感じた場合には「『人の気持ちはその人だけのもの』という認識を前提としてもちましょう」と、先生。

「自分と他者の感情を区別して考えるようにしてみてください。ニュースの向こう側にいる人に共感しても、自分が苦しくなってしまうだけで何かが変わることはありません。もし自分との共通点を見つけたとしても、自身や大切な人を重ねないように意識しましょう」

また、報道を通して理不尽な状況などに怒りを感じた場合は、「信頼できる相手に気持ちを打ち明けるなどして、感情を抑え込まずに適度に表現すると良いでしょう」と先生。

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報道やSNSの情報との向き合い方

メンタルヘルスへの悪影響も懸念される一方で、いまや私たちの生活はSNSやニュースをはじめとした様々な情報と切り離せないものになりました。心の不調に陥らないようにするためには、それらとどのように向き合っていけばいいのでしょうか。

池田先生は「ながら見」の危険性について強調します。

「衝撃的な映像や情報を、繰り返し長時間見ることは避けましょう。心の準備ができていない状態で、不用意に惨事報道に触れるとダメージも大きくなるので、『ながら見』には十分注意してください」

「つい視聴時間が増えがちなSNSであれば、スマホを使う時間を決めるとか、特定のワードをミュートにして表示しないようにするなど、工夫次第で情報と距離を置くこともできます。そのためにも、まずは自分の心が何に反応しているのか、しっかりと見極めることが大事です」

また、他の人の心を守るためにも「衝撃的な映像や情報をむやみに拡散しないことも意識してほしい」と、先生。

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「社会の一員として今起こっていることに関心をもちたい」という思いから、世の中の様々な出来事に関するニュースを積極的にチェックしている人も多いはず。そして、そのなかで不安や気持ちの落ち込みを覚えたことがある人もいるかもしれません。

そこで池田先生に、社会問題への関心と自身のメンタルヘルスのバランスのとり方について、アドバイスをいただきました。

「『社会のために何かしたい』という思い自体はとても尊いもの。しかし、今すぐに他者や社会の役に立てるかというと、タイミングの問題もあり、思うようにできないことも多々あります」

「だからこそ、まずはご自身の心身の健康を最優先してほしいです。いざというときに誰かの役に立てるよう、健やかな状態でいることが大事なのではないでしょうか。目の前の日常を大切にし、自分にできることが見つかったときにそれを実行する。そんなスタンスでいられるといいのかなと思います」

今回お話を伺ったのは…

桜美林大学リベラルアーツ学群 准教授
池田美樹先生

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