「この野郎!」片っ端からボコボコの“歌舞伎町スカウト狩り”はなぜ起きた? 潰された武闘派ヤクザの「メンツ」

「この野郎!」片っ端からボコボコの“歌舞伎町スカウト狩り”はなぜ起きた? 潰された武闘派ヤクザの「メンツ」

  • 文春オンライン
  • 更新日:2020/11/22

「おい! この野郎。お前! スカウトだろう」

【画像】関係者に流出した歌舞伎町の「スカウト狩り」とみられる動画

日本最大の繁華街である東京・新宿の歌舞伎町。6月4日の深夜に怒号が響き渡り、多数の暴力団組員がスカウトの男性を追いかけまわしては暴行を加える「スカウト狩り」の大騒動が起きた。

スカウトを追う男たちの数は、最終的に100人ほどに膨れ上がったという。乱闘の様子は動画に撮影され、インターネット上に流出し注目を集めた。

その後、警視庁は捜査本部を新宿署に設置して捜査を進め、10月28日、乱闘に関与した暴力団幹部ら4人とスカウトグループの3人を逮捕。一応の決着となったが、スカウト狩りが歌舞伎町の夜の街で働く人々に植え付けた恐怖感、そして彼らの動揺は続いている。

歌舞伎町では、いったい何が起きたのだろうか。

原因は「スカウトの掟破り」

スカウト狩りの大騒動が起きた原因を作ったのは、やり手のスカウトグループ「ナチュラル」だった。

ナチュラルは、歌舞伎町だけでなく都内有数の繁華街である渋谷や六本木のほか、横浜など首都圏で幅広くスカウト業を展開。キャバクラやガールズバーなど接待を伴う「夜の街」の店に若い女性を紹介することで巨額の利益を得てきた。接待を伴う店だけでなく、風俗店も紹介先だった。

No image

“武闘派ヤクザ”100人ほどが「スカウト狩り」に加わったという ※写真はイメージ ©iStock.com

所属しているスカウトは数百人にも及び、歌舞伎町での仕事は10年以上続いていたという。歌舞伎町の飲食店業界に詳しい関係者が語る。

「実績があり、その仕事ぶりの確実さから、キャバクラなどの歌舞伎町のお店から信頼を寄せられていた。同じようにスカウトを行っている複数のグループとも良好な関係を保っていたと思う」

ところが、今年の春以降、「ナチュラル」が同業のライバル会社から腕利きの優秀なスカウトを次々と引き抜き始めたのだ。このことが夜の街で大問題となり、関係者の間で不満が鬱積していた。

「誰でもすぐに若くてきれいな女性をスカウトできるものではない。どの業界でも同じだろうが、スカウト会社も、新人スカウトをゼロから指導して、一人前にして夜の街に出す。若手を育てて、育てて、ようやく仕事ができるようになったというところで、ナチュラルから横取りのように引き抜きにあったら、それは怒る」(同前)

夜の街の掟が、公然と破られていたのだった。

今年は、初春から新型コロナウイルスの感染が広がり、4月には全国で緊急事態宣言が出され夜の街の営業自粛が求められた。

歌舞伎町の飲食店の従業員は次のように指摘する。

「コロナの影響で、どこも売り上げが大幅に減ったし、全くなくなった店もあった。スカウトの引き抜きは、コロナの影響の危機感から強引に行われた可能性もあるのではないでしょうか」

武闘派ヤクザの「メンツ」つぶす

ナチュラルによる「引き抜き」が続く中、ライバルグループの不満は溜まっていった。前出の歌舞伎町の飲食店業界に詳しい関係者が語る。

「引き抜き被害に遭ったスカウトグループは、ナチュラルに抗議したが、彼らは聞き流すだけだった。そこで、トラブル解決のため、引き抜かれた側はあるところに相談を寄せた」

この際の相談先とは、「住吉会」幸平一家加藤連合会の傘下組織だった。

住吉会は山口組に次ぐ、国内2番目の勢力の指定暴力団として、東京都公安委員会に認定されている。中でも「幸平一家」は住吉会内の中核組織。さらに「加藤連合会」は3次団体となるが、歌舞伎町の顔役、仕切り役として知られる。

指定暴力団幹部によると、「関東どころか、全国のヤクザで『加藤連合会』の名前を知らぬ者はいない」という。加藤連合会は過去、数々の対立抗争事件において、多くの幹部が躊躇せずに拳銃を発砲してきた経緯があり、“武闘派組織”として名が通っている。

トラブルの原因を作ったナチュラルは、加藤連合会傘下の有力組織である「賢総業」と交流があり、スカウトを引き抜かれた会社は同じ加藤連合会傘下の「聡仁組」との関係が保たれていた。

そこで、引き抜かれたスカウトグループは聡仁組に相談し、同組は賢総業にナチュラルによる引き抜き行為をやめさせるよう要請したという。

その結果、手打ちに向けた会談の場が持たれることになった。

しかし、ナチュラル側が拒否した。ナチュラルを率いるのは、通称「木山兄弟」と呼ばれる3人の実の兄弟で、業界では知られた存在。いずれも身長約190センチで体重は約100キロという巨漢。その仕事ぶりは、ヤクザ顔負けの“イケイケ”だったとされる。

今回も、引き抜いたスカウトは戻さないうえに、引き抜き行為も止めないとして話し合いを拒否。事実上、ヤクザに楯突くことを宣言したのだ。

「その結果、武闘派で名が通る加藤連合会の2つの傘下組織がともにメンツをつぶされた格好となってしまった。ヤクザとしては許しがたいことだっただろう」(前出・指定暴力団幹部)

この瞬間から、加藤連合会の有力組織である「賢総業・聡仁組VSナチュラル」という対立構造となった。そして、加藤連合会系の暴力団組員らが一斉に、歌舞伎町の街中でスカウトに対して攻撃に出ることとなったのだ。

怯えながら過ごしたスカウトたち

そして6月4日深夜、加藤連合会傘下の賢総業と聡仁組の組員が、歌舞伎町の「区役所通」を中心に、スカウトを見つけては誰何し、大人数で取り囲んで、殴る蹴るの暴行を加えていった。

「お前、ナチュラルだろう!」

「スカウトをやってんだろう?」

なかには反撃に出たスカウトもいたが、多勢に無勢だった。加藤連合会系組員は100人前後を動員しての乱闘騒ぎとなった。

逃げまどうスカウトをヤクザが追いかけ回し、捕まえては暴行を加える様子の動画が撮影されており、後にネット上で「スカウト狩り」とのタイトルで拡散した。

事態を重く見た警視庁組織犯罪対策4課は新宿署に捜査本部を設置。歌舞伎町内に設置されている多数の防犯カメラで撮影された暴行現場の画像を収集して分析するなど、本格的な捜査が進められた。

約4カ月に及ぶ捜査のすえ、悪質な暴力行為に及んでいた実行犯らを特定し、警視庁は10月28日、傷害や暴力行為等処罰法違反容疑で、賢総業幹部ら2人と聡仁組の2人、スカウト側3人の計7人を逮捕した。

スカウト側は「木山兄弟」の通称で知られた3人だった。逮捕容疑はいずれも今年6月4日深夜、暴力団組員らとスカウトがお互いに殴ったほか投げ飛ばすなどの暴行を加え、一部のスカウトらに軽傷を負わせたといったものだった。

この事件で警視庁が立件したのは、6月4日の夜に起きた区役所通でのスカウト狩りに限定した暴力行為だった。今回の立件対象とはならなかったが、加藤連合会傘下の暴力団組員らによるスカウト狩りは翌日以降も地域を拡大して行われた。

6月5日以降、木山兄弟は歌舞伎町から姿を消した。残されたスカウトたちは震え上がり、怯えながら過ごすこととなった。(敬称略)

「違います!僕はホストです!」歌舞伎町の男たちが次々と“武闘派ヤクザ”にボコボコにされていた〈終わらない「スカウト狩り」〉へ続く

(尾島 正洋/Webオリジナル(特集班))

尾島 正洋

この記事をお届けした
グノシーの最新ニュース情報を、

でも最新ニュース情報をお届けしています。

外部リンク

  • このエントリーをはてなブックマークに追加