長時間労働を強いられる教員の負担軽減へ 部活改革、新しく増える仕事は誰が担うのか

長時間労働を強いられる教員の負担軽減へ 部活改革、新しく増える仕事は誰が担うのか

  • THE ANSWER
  • 更新日:2021/11/25
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今回のテーマは「日本の運動部改革の課題」について

連載「Sports From USA」―今回は「日本の運動部改革の課題」

「THE ANSWER」がお届けする、在米スポーツジャーナリスト・谷口輝世子氏の連載「Sports From USA」。米国ならではのスポーツ文化を紹介し、日本のスポーツの未来を考える上で新たな視点を探る。今回は「日本の運動部改革の課題」について。

◇ ◇ ◇

前回の連載でも述べたように、日本の運動部活動はいくつかの改革が行われようとしている。

外部指導者、部活動指導者を学校に迎えること、運動部の指導を民間に委託すること、地域への移行や連携などである。これらは、長時間に及ぶ時間外労働を強いられている教員の負担を減らすことを目的としている。指導そのものを教員以外の人に託せば、教員の負担を減らすことにつながるだろう。

しかし、教員の負担を減らすための「移行作業」や「マネジメント」を誰かが新しく担う必要が出てくる。どの部活動に外部からの指導者を招くのか、その採用の手続きはどのように行うのか。指導を希望する学校教員にはどの部活動を任せるのか。学校と地域とはどのように連携するのか。これらを取り決めて、実際に手続きすることは、新しく増える仕事と言えるのではないだろうか。

こういった仕事のうち一回限りで済むものは少ないように思える。外部からの指導者と指導を希望する教員の配置は年度ごとに調整しなければいけないだろうし、学校と地域の守備範囲も毎年、確認しあうことが必要になる。問題発生時には誰かが窓口になって、解決を図らなければいけない。このような仕事は、校長や地域スポーツの代表者が便宜的に担うことになるのだろうか。

米国にも学校運動部があり、指導を希望する教員と外部からの指導者が指導に当たっている。そして、各学校には、全ての運動部活動をマネジメントするアスレチックディレクターという人たちがいる。この役職は、校長の下の管理職という位置づけで、私が取材した学校では副校長や体育科主任と兼任しているところがあった。

米国の「アスレチックディレクター」の仕事とは

各アスレチックディレクターは具体的にどのような仕事をしているのだろうか。

主な内容を挙げてみる。

・各運動部指導者の割り当て、外部からの指導者の雇用、解任
・現職の各運動部指導者の評価
・運動部予算の管理、各運動部からの用具購入リクエストの承認
・運動部が使用する各施設、用具の点検
・各運動部の大会、試合の日程調整、記録の管理
・州の体育協会の規則の理解
・学校の運動部の活動規則の作成
・保護者対応

アスレチックディレクターは、教員から運動部指導を担当できる人を募り、埋まらないポジションは外部からの指導者を探す。その外部の指導者が、学校運動部の理念を理解し、生徒の発達や競技についての知識があるかを見極め、校長とともに採用するかどうかの判断を下す。運動部を指導する教員や外部からの指導者が、州の体育協会規則と学校の運動部規則に従って運動部を運営しているかを見守り、これを評価する。もしも、教員、外部からの指導者が規則に反していて不適切な指導をしているときには、指導者から外すという人事もアスレチックディレクターの仕事だ。

この他にも、さまざまな仕事がある。各運動部の指導者が、部員や保護者と良好な関係を築けるように、シーズン前のミーティングで押さえるべき内容を伝え、指導者と保護者間のトラブル発生時には介入することもある。予算の管理と各運動部への分配、活動規則の原案作りなどの仕事も担当している。運動部の活動規則の範囲で各運動部が活動しているかをモニターし、施設や用具を点検することは、事故発生時の訴訟などに備える意味でも重要な仕事だ。

日本でも求められる「マネジメント」の役職

また、アスレチックディレクターは、教育に関する各州の法律と、各州の高校体育協会の規則についてもよく知っている必要がある。

なぜならば、各学校の運動部は州の法律とその範囲内で作られた各州の高校体育協会の範囲で活動しなければいけないからだ。運動部は「州→各学区の教育委員会→各学区の教育長→各学校長→各アスレチックディレクター→各運動部の指導者」という図式で運営されている。つまり、州の法律に拠って、各学区の教育委員会はそれぞれに規則を決め、そして、各学校で活動規則を決める。さらには、各州の高校体育協会が定めた指導者資格、活動のルール、競技ルールに従って、各学校長と各アスレチックディレクターは運動部を管理・運営しなければいけない。

今、日本では運動部活動に外部からの指導者を迎えたり、地域移行したりしていくなかで、指導に対価を払うことを当たり前のことにしていこうという動きがある。これを是とするならば、部活動改革によって、より複雑になる指導者の配置や地域との連携をマネジメントする役職を作り、その仕事に対して対価を支払うことも併せて議論されるべきではないだろうか。少なくとも、そのマネジメントの仕事を「見える化」しないと、ここでもまた、無償の長時間労働が発生するのではないか。(谷口 輝世子 / Kiyoko Taniguchi)

谷口 輝世子
デイリースポーツ紙で日本のプロ野球を担当。98年から米国に拠点を移しメジャーリーグを担当。2001年からフリーランスのスポーツライターに。現地に住んでいるからこそ見えてくる米国のプロスポーツ、学生スポーツ、子どものスポーツ事情を深く取材。著書『帝国化するメジャーリーグ』(明石書店)『子どもがひとりで遊べない国、アメリカ』(生活書院)。分担執筆『21世紀スポーツ大事典』(大修館書店)分担執筆『運動部活動の理論と実践』(大修館書店)。

谷口 輝世子

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