株主総会「ハゲタカ」たちの大いなる変貌のなぜ

株主総会「ハゲタカ」たちの大いなる変貌のなぜ

  • Forbes JAPAN
  • 更新日:2021/07/22
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6月に相次いで開かれた3月期決算企業の株主総会では、「物言う株主(アクティビスト)」との「会話」姿勢や会社側のESGへの取り組みをめぐる株主提案などが注目を集めた。

「一般株主の変化を感じた」。こう振り返るのはニッセイ基礎研究所チーフ株式ストラテジストの井出真吾氏だ。具体例として挙げるのは、みずほフィナンシャルグループの株主総会である。

メディアの関心は子会社のみずほ銀行で起きた大規模なシステム障害に関する会社側の発言に集中した感があったが、同氏は「気候変動対策に関する株主の質問が多かった」点に着目。「ESGやSDGs(持続可能な開発目標)に強い関心を抱く”令和時代の株主”が増えてきた」と見る。

その背景には「アクティビストの姿勢が変わってきたことがある」(井出氏)。日本における従来のアクティビストのイメージは「攻撃的」。短期間で高い運用利回りを上げようと投資先企業に対して大幅な増配、自社株買いなどの株主還元や、事業売却といった大規模なリストラを要求。このため、「ハゲタカ」などと称されることもあった。

ところが、最近は「アクティビストが企業と”ウイン・ウイン”の関係を目指す傾向が強まったため、一般株主などの賛同も得やすくなった」(井出氏)。高利回りを実現したら投資先企業の株式を売り抜けてしまうのではなく、中長期のスタンスで経営に参画し収益構造やガバナンスの変革などに注力するアクティビストも少なくない。

代表例が米サンフランシスコに本拠を構えるヘッジファンドの「バリューアクトキャピタル」。日本で同社の名が広く知られるようになったのはオリンパスへの社外取締役の派遣だ。

バリューアクトは2018年5月にオリンパス株の大量保有報告書を提出。5.04%の同社株保有が明らかになった。その後、19年6月に開かれたオリンパスの株主総会でバリューアクトのパートナーのデイビッド・ロバート・ヘイル氏が社外取締役に就任。経営への関与を強めたとみられる。

株価は報告書提出翌日の965円から先週16日には2196.5円と約2.3倍の水準に上昇。経営面でも立て直しが進む。20年6月には同社の象徴ともいうべきカメラ事業から撤退。医療機器事業への経営資源集中などが奏功し、本業の儲けを示す営業利益は19年3月期の282億円あまりから22年3月期には約4.5倍の1260億円まで拡大する見通しだ。

米『インスティテューショナル・インベスター』誌(電子版)によれば、バリューアクトのメイソン・モーフィット最高経営責任者は19年に行った講演で、「われわれは学び、教えるという関係を実現できる数少ない存在である」などと他のアクティビストとの違いを強調した。

20年6月にはフォトレジストなどの半導体材料を手掛けるJSR株式の大量保有報告書も提出。6.2%の同社株保有が判明した。JSRは今年6月の総会でロバート・ヘイル氏をJSRの社外取締役として迎え入れることを決めた。バリューアクトは、セブン&アイ・ホールディングスの大株主にも登場。日本企業への攻勢を強める。

アクティビストへの対応で揺れた東芝の株主総会では、会社提案の取締役選任案の一部が否決される異例の事態となった。同社が公表した総会での議決権行使結果によると、取締役会議長だった永山治氏への反対の割合が56.06%に達し、監査委員会の委員を務めていた小林伸行氏には74.36%が反対した。

同社の外国人投資家の持ち株比率は約50%。つまり、アクティビスト以外の海外勢だけでなく、国内の機関投資家や一般株主なども足並みをそろえた可能性が高い。

「ESGのSこそ収益に影響をあたえるのに」
今年の総会では女性を取締役として選任する例も相次いだ。女性の登用は株主側の意向を汲んだ面もありそうだ。

株式市場で”クジラ”などと称される世界一の機関投資家、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が20年度の運用状況を公表した。業務概況書にはGPIFの株式運用を受託する機関の重視する主なESG課題が記載されている。昨年12月時点でGPIFが受託機関を対象に実施した調査結果をまとめたものだ。

概況書によると、目安とするベンチマークの株価指数に連動した成果を目指すパッシブ運用(国内株式を受託する機関のすべてが重視するESG課題は5項目。19年度は『気候変動』『不祥事』『情報開示』の3項目だったのに対し、20年度は『サプライチェーン』と並んで『ダイバーシティ』が新たに加わった。

日本株を保有するフランスの資産運用会社の幹部は「ESGのうち、(ダイバーシティなどを含む)”S”への取り組みについては、収益に大きな影響を与えるとの認識が企業側に乏しい」と話す。株主側が今後、一段と厳しい監視の眼を光らせるのは必至だ。

一方、新型コロナウイルスの感染対策で昨年に続き、人数制限をする総会も目立った。あるコンサルタントは、全体の100分の1にも満たない株主の出席で開かれた顧問先企業の総会に参加。「短時間で終了した」などと満足げなようすの経営陣に「勘違いしないでください」と釘を刺したという。

企業側には、アクティビストなどの要求を受け入れても「仏作って魂入れず」という結果に終わることを懸念するムードも依然として強い。それでも、株主側の変化を見誤れば、総会でお灸を据えられる。東芝の例を「対岸の火事」で済ませてはいけないのは明らかだ。

連載 : 足で稼ぐ大学教員が読む経済
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