劇薬「丸サ進行」を酷使! なぜ『紅白』は似たような曲が多い?

劇薬「丸サ進行」を酷使! なぜ『紅白』は似たような曲が多い?

  • まいじつ
  • 更新日:2021/01/13
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(C)PIXTA

昨年大晦日に放送された『第71回NHK紅白歌合戦』。初の無観客開催にも関わらず番組後半部の平均視聴率は40.3%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)を記録し、2年振りとなる40%台を回復。お茶の間の年末恒例行事として返り咲く結果となった。

ストリーミングでの再生回数が2億回を突破した『YOASOBI』の『夜に駆ける』、SNS上で数々のパロディ動画が拡散された星野源の『うちで踊ろう』、『official髭男dism』の『I LOVE…』、『Foorin』の『パプリカ』…。番組内では、昨年話題となった数多くのヒットソングが披露された。しかし実はこれら全ての楽曲に、とある共通点があったことをご存知だろうか?

ヒットソングに隠された秘密

上記の曲に共通するのは、同じ「コード進行」が使われているということ。そもそもコード進行とは「コード=複数の音を同時に鳴らした時の響き」の流れであり、その曲の雰囲気全体を決める土台のようなもの。たとえば曲の弾き語りを行う際、ギターやピアノは基本的にコード進行をなぞって演奏される。つまり楽曲を一番シンプルにした時、最終的に残るのが「歌メロ」と「コード進行」であるほど重要な要素というわけだ。大雑把に言ってしまうと、コード進行が同じ曲はどれも似た雰囲気になりがちだと言える。

「夜に駆ける」に「うちで踊ろう」、「I LOVE…」に「パプリカ」。どれもメロディは異なるものの、どこか似ているように感じたことがある人も多いはず。それもそのはず、いずれの楽曲にも「丸サ進行」と呼ばれるコード進行が使われているからだ。

「丸サ進行」は元々、ジャズやリズムアンドブルースといったジャンルで使用されていた「落ち着いていて大人っぽい、都会的な夜の雰囲気」を醸すコード進行だった。しかし昨年の紅白を見れば分かる通り、近年のヒットソングでは非常に多く使われている。そしてこのコード進行をJ-POP内で流行らせた立役者が、今や紅白の常連であり、昨年も『東京事変』として出場を果たした椎名林檎なのだ。

今から20年ほど前、椎名は自身の楽曲である『丸の内サディスティック』にこのコード進行を使用。それまでのJ-POPとは異なるオシャレな曲調によって爆発的な人気を博し、「丸サ進行」という名称が生まれるきっかけとなった。

「丸サ進行」がヒットソングに多用されていることは、業界内では暗黙の了解となっている様子。2019年11月17日放送の『関ジャム完全燃SHOW』(テレビ朝日系)では、「丸サ進行」について誰が使っても良い曲に聞こえてしまう劇薬と評されていた。また、番組内でインタビューを受けた椎名は、自身の楽曲でこのコードをよく使用していることを告白。続けて昨今のヒットソングで多用されている現状を踏まえ、その使用に関して「抵抗がないかといえばある」と一流アーティストならではの複雑な心境を語っていた。

なぜ現代の音楽シーンで「丸サ進行」が流行っているのか?

とは言っても、他にもヒットしやすいコード進行は多く存在している。にも関わらず、なぜこれほどまでに近年の楽曲で「丸サ進行」だけが流行っているのだろうか。

最も大きい理由の一つが、音楽を聞くシチュエーションの変化だ。CDが売れていた時代では、音楽番組や音楽フェス、あるいはカラオケなどで、みんなで一緒に盛り上がれるような音楽がヒットの条件となっていた。しかし『YouTube』や『TikTok』などの動画サイトや各種ストリーミングサービスなどが普及したことで、「プレイリストを一人でながら聞きする」シチュエーションが一般的になっていく。この環境の変化によって、大勢で盛り上がれるパーティチューンよりも、落ち着いた雰囲気の音楽がリスナーに求められるようになっていったと言える。

とくに2020年は、コロナの影響でフェスが軒並み中止になったという背景も。みんなで大合唱できる音楽よりも、一人でいる時間を感傷的に演出してくれる楽曲の方が、世の中の波長と合っていたのだろう。そうした状況下で、「落ち着いていて、お洒落で大人っぽい」丸サ進行の楽曲が流行るのは必然だった。

つい先日も緊急事態宣言が発令されたばかり。2021年以降も、ステイホームで過ごす日々は続きそうだ。一人で家にいる時間に飽きたら、「丸サ進行」の楽曲を聞いてエモく過ごすのも一興かもしれない。

文=富岳良

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