『霊媒探偵・城塚翡翠』ドラマ化で大注目! シリーズ最新作『invert II 覗き窓の死角』の衝撃

『霊媒探偵・城塚翡翠』ドラマ化で大注目! シリーズ最新作『invert II 覗き窓の死角』の衝撃

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  • 更新日:2022/09/23
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すべてが、ネタバレ。相沢沙呼の「塚城翡翠」シリーズについて語ろうとすると、どうしてもそう言いたくなる。もともとミステリの書評は、トリックやサプライズなど、作品のキモとなる部分を詳しく説明するわけにいかない、面倒なジャンルである。なかでも「塚城翡翠」シリーズは、ちょっと突っ込んだことを書こうとしただけで、ネタバレの危険大。したがって、ぼやかした表現をするしかないのである。

参考:

たとえばシリーズ第一弾の『medium 霊媒探偵城塚翡翠』。全四話で構成されており、どれも面白いのだが、注目すべきは最終話のどんでん返し。あまりにも予想外の展開に、ぶっ飛んだ。本当は、各種ミステリ関係のベストランキングで一位を獲得し、さらに第二十回本格ミステリ大賞部門を受賞したという事実が、作品の凄さを証明しているといえよう。

ただし内容から考えて、シリーズ化はないと思っていた。だから、あっさりとシリーズ第二弾『invert 城塚翡翠倒叙集』が出版されたときは驚いた。しかも今度は倒叙物だ。ちなみに倒叙物とは、物語の冒頭で犯人や犯行の様子を明らかにした、ミステリの一ジャンルのこと。読者は最初から犯人が分かっており、探偵役がいかにして真相を暴くかが、メインの読みどころとなる。作品は中篇三作で構成されており、倒叙物としてよく出来ているが、オーソドックスな作りだと思いながら読んでいたら、最終話で大技が炸裂。またもや、ぶっ飛んでしまったのである。

こうなるとシリーズ第三弾への期待は、否応なく高まる。その期待に作者は、『invert Ⅱ 覗き窓の死角』で、見事に応えてくれたのだ。今回も倒叙物で、収録されているのは中篇「生者の伝言」と、短めの長篇「覗き窓の死角」である。内容に触れる前に、主人公の城塚翡翠とその相棒の千和崎真を紹介しておこう。

城塚翡翠は、ゆるふわ美人で、ドジっ娘。ただし口調も態度も、どこから演技なのか分からない。本書では、スピリチュアル・カウンセラーを名乗っているが、特別な力があるかどうかも不明だ。なぜか警察と強いパイプがあり、幾つもの事件を解決している。その翡翠に雇われているのが千和崎真だ。主な仕事は家政婦だが、翡翠が事件に乗り出すと助手を務める。また副業として、私立探偵をしている。翡翠とは対照的な、中世的な美人だ。

「生者の伝言」は、友達の別荘に不法侵入していた夏木蒼太という少年が、友人の母親を刺し殺してしまったと、終始狼狽する場面から始まる。そこにやってきたのが、車の故障により、雨宿りをしようとした翡翠と真だ。美人二人の存在やラッキー・スケベにドキドキながら、二階に死体があることを隠そうとする蒼太だが……。

この作品は終盤の捻りが決まっており、よく出来たミステリになっているが、前菜といっていい。本書のメインは「覗き窓の死角」だ。お互いにミステリが好きということで、翡翠は江刺詢子という女性と友達になった。同性の友達がいなかったので、はしゃぐ翡翠。だが詢子は、いじめで死んだ妹の仇として、フリーランスモデルの藤島花音を殺し、翡翠をアリバイの証人とするのだった。詢子を信じようとしたが、ささいな気づきから、彼女が犯人だと確信した翡翠。複雑な思いを抱きながら、詢子を追い詰めていく。

詢子のアリバイ・トリックもよく考えられているが、もっとも凄いのは彼女を犯人と確定する証拠である。翡翠と詢子の心理戦の果てに、明らかになる証拠。それにより今まで見えていた風景が反転する。驚天動地とはこのことか。しかもその後、さらなる事実により、読者に追加ダメージを与えてくれる。本当に凄い作品なのだ。

さらに、いままでになく翡翠のキャラクターが掘り下げられていることも、大きな読みどころになっている。ここで留意すべきは犯人の詢子だ。倒叙物の利点に、最初から犯人を明らかにしているため、その内面をガッチリと描ける点が挙げられる。作者はそれを十全に活用。読めば分かるのだが、詢子と翡翠が、合わせ鏡のような存在であることが、しだいに露わになる。二人とも過去の出来事を原因(翡翠の方は不明な事が多いが)として、今の行動があるのだ。ただし詢子と翡翠の在り方は正反対である。詢子は怨みを晴らすために殺人を犯した。翡翠は人が人を殺すことがない世界を求めて探偵をしているのである。

いうなれば闇の道と光の道だ。しかし翡翠の光の道は、茨の道でもある。なぜならこの世界から、殺人がなくなることはないのだから。そんな翡翠を詢子と対決させることにより、作者は主人公の抱えている苦悩や憤りを、鮮やかに表現してのけた。シリーズは第三弾になって、さらなる深化を遂げたといえるだろう。

なお、「城塚翡翠」シリーズを原作とした連続ドラマが、日本テレビ系で十月より放送されるとのこと。城塚翡翠役は清原果耶。小説ならではの面白さを、どう映像に転換するのか、今から楽しみにしている。

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