「緊急事態宣言の効果には疑問」 治療薬として期待高まる人工抗体

「緊急事態宣言の効果には疑問」 治療薬として期待高まる人工抗体

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  • 更新日:2021/01/14
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西村康稔経済再生相 (c)朝日新聞社

東京都では入院患者数が今年に入って3千人を超えた。重症者も増えており、医療崩壊の危機が迫る。

都がコロナ患者向けに確保したベッド数は4千床で、使用率は約8割に及ぶ。今回の緊急事態宣言の再発出は、医療提供体制が逼迫(ひっぱく)してきたことを理由としている。

だが、医療ガバナンス研究所理事長の上昌広医師は疑問を投げかける。

「医療崩壊を回避するためならば、病院を手当てするべきです。米ニューヨーク州では重症者のためのICU(集中治療用)ベッドだけで約5700床あります。日本も世界標準並みにコロナ専用ベッドを確保しなければなりません。そのためには、コロナ専門病院を開設する必要があります」

都は今後、都立・公社14病院をコロナ拠点病院とし、計1700床の確保を目指すという。

一方、今回の宣言で壊滅的な打撃を受けるのが、午後8時までの営業時間短縮を要請された飲食店だ。菅首相は「経路不明の感染原因の多くは飲食によるもの」と語った。これに上医師が反論する。

「第3波の大きな感染源が飲食店だとするデータはありません。確かに第1波は飲食店が問題で、世界でも多くの論文が出ていますが、第2波以降は飲食店の感染リスクを検証した論文は非常に少ない。昨秋、英ネイチャー誌に掲載された論考には『レストランはホットスポットでないかもしれない』と書かれています」

その上で、指摘する。

「飲食店の自粛では思ったように感染者は減らない可能性があり、今回の緊急事態宣言の効果には疑問があります」

都の1日当たりの感染者数は2千人を超え、過去最多を更新している。いまや7割は感染経路が不明な状態で、飲食店ばかりをターゲットにするのは不合理だろう。

もちろん、飲食店の間でも感染対策には温度差がある。入店時に検温やアルコール消毒を行い、座席にアクリル製のついたてなどを置いている店は多い。その一方で、何の対策も施していない店があるのも事実だ。

大阪大学免疫学フロンティア研究センター招へい教授の宮坂昌之医師はこう語る。

「緊急事態宣言の下では、対策の取れている店も一律に時短になってしまうのが気の毒です。あるいは、せっかく対策をしていても、ついたてが顔の高さまでしかないこともある。これではマイクロ飛沫(ひまつ)は止められません」

本来ならば感染が収まっている間に、店の規模などに合わせた感染対策を指導しておくことが重要だったという。

「ただし、いまの保健所にはそんな余力はないでしょう。最近、民間のPCR検査センターが開設されていますが、飲食店の感染対策マニュアルについて民間の力を頼るのも手だと思います」

そうした中、コロナによる重症化を防ぐ治療薬として、いま期待されているのが、「人工抗体」医薬品だ。すでに米製薬大手のイーライリリーやリジェネロンの製品が承認されている。宮坂医師がこう説明する。

「人工抗体は、コロナから回復した患者さんの免疫細胞から抗体をつくっている遺伝子を抜き出すことで開発されました。短期間のうちにウイルス量を激減させることが確認されています」

日本でも1年以内くらいで使えるようになると見られており、感染制御の切り札になるかもしれない。(本誌・亀井洋志)

※週刊朝日  2021年1月22日号

亀井洋志

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