ミッツ・マングローブ「明日からどうする? 日本の『性(ジェンダー)』意識」

ミッツ・マングローブ「明日からどうする? 日本の『性(ジェンダー)』意識」

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  • 更新日:2021/02/23
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ミッツ・マングローブさん

ドラァグクイーンとしてデビューし、テレビなどで活躍中のミッツ・マングローブさんの本誌連載「アイドルを性(さが)せ」。今回は、森喜朗氏の失言問題について。

【ミッツさんの手書きイラスト】妙に艶っぽい声といえば…

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確かに森さんは自爆しました。そして日本社会は「海外からも批判の声続出」という恰好の加勢を得て、彼を辞任へと追い込んだわけですが、これを機に日本人の「性」に対する意識共有のフェーズは、一気に欧米レベルと肩を並べる勢いです。大丈夫でしょうか? そんな一気にハードルを上げて。

あくまで今回は「元首相」による失言であったことに加え、清く正しい「オリンピック理念」なるものの存在が、一連の騒動をより大きくしたと言えるでしょう。ただ、これを今後の「国内基準」にするとなると、この前例はあまりにも飛躍的過ぎて、今日明日で世間が適応できるとは到底思えません。本質的な部分は理解も納得もできていないまま、表向きの態度や言葉だけで「スマート&セーフ」を取り繕っていても、いずれ破綻します。それこそアメリカを見ていれば一目瞭然です。

とは言え、世の中は「その場凌ぎの建前」を繰り返しながら徐々に調教され、変容していく側面も多分にあります。とにかく日本は日本のペースと了見で。でないと何も変わらないどころか、外面だけの退屈な国になってしまいます。「オカマ」「ホモ」の代わりに「オネエ」などというぼんやりした言葉でお茶を濁した結果、「オカマ」や「ホモ」がそれまで以上に凶暴な言葉になってしまったように。

先日、読売ジャイアンツの「ウグイス嬢」に42年ぶりの新人が採用されたというニュースを目にしました。これまでは勤続43年と42年のベテラン専属ウグイス嬢(いずれも現在60代)がずっと2人体制で担ってこられたのだとか。あの爽やかで艶やかな場内アナウンスは、野球観戦を彩る臨場感のひとつであり、これは男女によって話し方の抑揚が大きく異なる日本語ならではの機微が生かされた「業」です。どういうわけか子供の頃「4番、サード、原。背番号、8。」と真似をする男子がたくさんいました。私を含め「男には入っていけない結界」みたいなものを子供ながらに感じていたのかもしれません。

将来的には「男性(あるいは元男性)のウグイス嬢」の誕生もあるでしょうが、いわゆる男女平等の理屈の下、いたずらに「男も採用しろ!」などと声を荒らげる者がいないのは、なぜならそこには男女の差異故の「おもむき」や「味わい」があるからです。しかし、そういった概念すらも「差別だ」「偏見だ」と捉えられてしまう昨今。現に私も常日頃「オカマがみんな語尾を伸ばして喋ると決めつけないで!」と世間のステレオタイプに腹を立てており、こんなことを言えた立場ではないかもしれませんが、今はただウグイス嬢たちの無事と安泰を祈るばかりです。何でもかんでも欧米由来の「同等主義」に落とし込むような勿体無い愚行にだけは巻き込まれませんように。

それよりも、世の中に溢れる「自動音声」における男女比率の偏りの方が、よっぽど気になります。カーナビも留守番電話も「お風呂が沸きました」も、女性の声である絶対的な必要性などないはずです。せめて初期設定段階で、どちらか選択できる余地があってもいいと思うのですが。ホモなのにまるで女と暮らしているみたいで、正直気持ちが萎えます。

※週刊朝日  2021年2月26日号

■ミッツ・マングローブ/1975年、横浜市生まれ。慶應義塾大学卒業後、英国留学を経て2000年にドラァグクイーンとしてデビュー。現在「スポーツ酒場~語り亭~」「5時に夢中!」などのテレビ番組に出演中。音楽ユニット「星屑スキャット」としても活動する

ミッツ・マングローブ

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