若手選手5人の“苦悩”と“成長”...中日ドラゴンズのYouTube担当者がドキュメンタリー“映画”を作った理由

若手選手5人の“苦悩”と“成長”...中日ドラゴンズのYouTube担当者がドキュメンタリー“映画”を作った理由

  • 文春オンライン
  • 更新日:2023/01/25

中日ドラゴンズが、球団史上初となる長編ドキュメンタリー「Truth of Dragons 2022」を公開した(1月29日までPIA LIVE STREAMで有料配信中)。ディレクターを務めたのは、ドラゴンズファンならおなじみ公式YouTubeチャンネルを登録数20万人まで育てあげた事業本部イベント推進部の岡田昌尚さん(文春野球にもコラム執筆者として参戦済)。

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立浪和義新監督を迎えたものの最下位に沈んだ2022年。それでも来季に向けてチームは変わりつつある。岡林勇希選手、石川昂弥選手、根尾昂投手、髙橋宏斗投手、小笠原慎之介投手という5人の若手選手にフォーカスし、彼らの“苦悩”と“成長”を描く。

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投手に転向した根尾 ©時事通信社

選手の素顔をファンに届け続ける岡田さんが、どのような思いでこの作品を作り上げたのか。裏話も含めてじっくり聞いた。

球団に入ったときからドキュメンタリーを作りたかった

――普段のYouTubeとは違って、今回は121分の大作ですね。

岡田 本当は90分ぐらいの予定でしたが、気持ち良くつないだら2時間になっていました(笑)。見てもらいたいと思った映像やインタビューは、なるべくカットしないで使っています。たとえば、小笠原さんが悩みながら言葉を選ぶ場面は、テレビではカットするでしょう。でも、そこに何かがあると思うんです。

――横浜DeNAベイスターズや侍JAPANが公式ドキュメンタリーを制作していますが、触発された部分はありましたか。

岡田 どちらも必ず映画館に足を運んで観ていました。もし自分がどこかの球団に入って同じ立場になったら、どんなものが作れるんだろう? と思いながら観ていましたね。

――岡田さんの中では「Truth of Dragons 2022」は“映画”なんですね。

岡田 はい。ドラゴンズに入ったときから、ドキュメンタリー映画を作りたいと思っていました。今年は「ぴあ」さんのお力を借りて配信という形になりましたが、ゆくゆくは映画館で上映できるようにしたいと思っています。そのための一歩は踏み出せたのかな、と。

――2022年のドラゴンズは最下位に終わりましたが、このタイミングでドキュメンタリーを作ろうと思ったのはなぜでしょう。

岡田 僕が入社して1年経って慣れたこともありますが、やっぱり立浪監督の1年目というのが大きかったですね。春季キャンプの段階では何かしらの形で1年をまとめておきたいと考えていました。立浪監督が沖縄入りしたときの車中インタビューも、この作品のために撮ったものです。

最下位とはいえ、いろいろなことが起こったシーズンなので、素材を撮りだめしておいて、優勝したときやAクラスに入ったときに作ればいいとは思いませんでした。選手たちの成長は今しかありません。岡林選手の成長も、2022年の岡林選手を記録しておかないと不自然になってしまうし、根尾選手の決断も決断した年を記録しておいたほうがいい。石川昂選手が復帰するまでの道のりを、このボリュームで観てもらえるのは今しかないんですよね。

――最下位だからこそドキュメンタリーを作ることに意味があるのではと思っていました。喜びと苦しみを経験した選手たちが、来季どんなドラマを見せてくれるのか、より楽しみになりましたから。

岡田 この1年の姿を見た上で来季以降、選手たちが活躍している姿を見たら、また応援していただけるんじゃないかと思って作っていました。今年はトータル的に見て、この5人が中心の構成になりましたが、来年は梅津投手や鵜飼選手が中心になる可能性もあると思います。

「言いたくない」なら突っ込まない

――立浪監督の発言も多めに引用されていると感じました。

岡田 テレビのニュースなどでは短いコメントしか報じられませんでしたが、実際にはもっと長く話しているんですよね。たとえば、選手たちの前で「相手に弱気な顔見せんなよ」と話した後に、現役であることがいかに幸せかを語っています。前者はクローズアップされますが、後者はなかなか伝わらないので、短く切り取らずに見せたいと思っていました。

――岡田さんが印象に残ったシーンを教えてください。

岡田 今回は僕が選手にカメラを向けて直接話を聞いている中で、驚いたり感動したりした場面を残していくという形で編集しました。ディレクター的な目線もありますけど、ドラゴンズファンとしての目線のほうが大きいかもしれません。

髙橋宏投手との会話で「柳さんからLINEもらうんですよ」と言ってくれたので、内容を教えてもらったら、すごく熱いメッセージが送られてきていたんですね。しかも、髙橋宏投手が登板するたびに、マウンドから下りた直後ぐらいのタイミングで送られてきている。先輩が後輩にそんなことをしてるなんて、と、すごく驚いたので入れさせてもらいました。

選手たちの言葉の力強さにも驚かされることが多かったです。石川昂選手は来季について「~します」と必ず言い切るんですよね。本当に頼もしかったですし、希望があると感じました。

――予告でも使われていた岡林選手の「出たいに決まってるじゃないですか!」という言葉や、投手に転向した根尾選手が「悩んでないっすよ」と言いつつ少し目が潤んでいるように見えた場面もすごく印象に残りました。

岡田 たぶん、テレビだったら上司や先輩に「もっと突っ込めよ」と言われていたと思います。テレビは短い尺ではっきりさせないといけないので。でも、選手から「言いたくない」という意思が見えれば、それ以上は突っ込みませんでした。その分、映像で表情や雰囲気を伝えているつもりです。ひょっとしたら目が潤んでいたかもしれない。違うかもしれない。それは観ている人に汲み取ってもらえばいいと思っています。

――そういう姿勢が岡田さんと選手の間の信頼関係につながっているんでしょうね。

岡田 そう思ってもらえているならいいんですけど(笑)。

「さらにドラゴンズが好きになった。応援したくなった」

――ナレーションにサカナクションの山口一郎さんを起用した経緯を教えてください。

岡田 スポーツドキュメンタリーのシリーズとして一歩踏み出すなら、山口一郎さんのお力を借りなければいけないと思っていました。活動をお休みしているタイミングでのオファーだったのでダメモトでお願いしてみたら、「断るわけないでしょ?」というお返事をいただいて。

この作品は、本当にドラゴンズを愛している人たちがお金を払ってまで観てくれるものなので、ファンと同じ熱と思いを持っている方に携わってもらいたくて、すぐに思い浮かんだのが山口さんでした。

事前にお送りした映像を見てもらったにもかかわらず、収録現場でも映像を食い入るようにご覧になっていて、合図を出してもナレーションを読むのを忘れることがありましたね(笑)。「さらにドラゴンズが好きになったし、今年一層応援しなければいけないと思った」と言っていただいて、すごく嬉しかったです。ご本人には伝えてないのですが、いつか映画になったら曲を書いてほしいと思っています。

――エンドクレジットは選手だけでなく、オーナー以下チームスタッフ全員の名前が記されていました。

岡田 チームスタッフの方たちがいなければ僕は撮影できなかったので、感謝の意味も込めて入れさせてもらいました。最初は球団の一体感を出すために、営業の方なども含めた球団職員全員の名前を入れようとしたのですが、今回は選手とチームスタッフのみにしています。

エンディングの曲を「燃えよドラゴンズ!」にしたのは、水木一郎さんがお亡くなりになった一報を聞いて、ほんのささいなことですけど、感謝の表現の一つになればと思って使わせていただきました。

――ところで、制作は何人でやっていたんですか。

岡田 球団映像の素材出し、ナレーション録り、テロップの仕上げなどはいろいろな方に手伝っていただきましたが、それ以外は僕一人です。年末年始もずっと作業していました。

――本当にすごい……。苦労されたところはありましたか。

岡田 苦労というのとは違うかもしれませんが、編集が終わった直後、作業していた僕のパソコンの電源が入らなくなりました。きっと力尽きたんだと思います(笑)。

――YouTubeともども来季もドキュメンタリー作品を期待しています。優勝の歓喜のシーンを映画館でファンと一緒に観たいですね。

岡田 今回が好評なら来季も続けていけると思いますし、映画館での上映やDVD化など、さらに規模の大きなこともできると思います。ぜひとも1月29日までの配信期間内に「Truth of Dragons 2022」をご覧ください!

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(大山 くまお)

大山 くまお

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