〈あらすじ〉
フィンランド北部の小さな村にある食堂へ、上海から料理人のチェン(チュー・パック・ホング)と息子のニュニョ(ルーカス・スアン)がやってきた。シルカ(アンナ=マイヤ・トゥオッコ)が一人で切り盛りする食堂で、チェンは恩人だという人物を探していると言うが、シルカも客たちも心当たりがない。シルカは疲れ果てている親子に空き部屋を提供し、恩人探しに協力する。お礼としてチェンが作った絶品の中華料理はまたたく間に評判となり、チェンはシルカや常連客と親しくなる。しかし、観光ビザの期限が迫っていた。
〈解説〉
北欧の食堂を舞台に、異国の料理人と地元の住民が織りなす心の交流を描くヒューマンドラマ。『モロ・ノ・ブラジル』のミカ・カウリスマキ監督作。114分。
中野翠(コラムニスト)
★★★★☆ラップランドの清涼感。自然と共にある、過不足のなさそうなディテール。中華も凄いが和食だってと、少しシャク。
芝山幹郎(翻訳家)
★★★★☆名作『バベットの晩餐会』には及ばないが、温厚な人々が食べ物で繋がる描写にうなずく。森と湖に包まれる感覚も快い。
斎藤綾子(作家)
★★★★☆ラップランドの広大な風景に思わず深呼吸したくなる。父と息子の姿が心地よく、料理が体を癒し心を弾ませ、幸せを堪能。
森直人(映画評論家)
★★★★☆『かもめ食堂』を連想させつつ、風土と食を通した異文化融合の楽天的な縮図のよう。カウリスマキ兄の大らかで優しい味。
洞口依子(女優)
★★★★☆陽の光を愉しむ日光浴気分なラップランドへの憧憬。異文化の障壁を超える(『ショコラ』的)料理は其々を乳化させる。

© Marianna Films
『世界で一番しあわせな食堂』(フィンランド、英、中)
2月19日(金)より新宿ピカデリー、渋谷シネクイントほか全国順次ロードショー
https://gaga.ne.jp/shiawaseshokudo/
(「週刊文春」編集部/週刊文春 2021年2月25日号)
「週刊文春」編集部