「引き算の幸せ」を教えてくれる。神の住む島、奄美の魅力

「引き算の幸せ」を教えてくれる。神の住む島、奄美の魅力

  • Forbes JAPAN
  • 更新日:2021/07/23
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コロナ禍、リゾート地で働きながら休暇を取る「ワーケーション」が注目されたり、3密を避けられるということで、ゴルフやキャンプなどのアウトドアが人気だ。コロナ禍における閉塞感や疲労感から、自然に癒やしを求める理由も背景にはあるだろう。

なぜ、人々は自然を求めるのか。

奄美大島本島、最南端の秘境にあるリゾートホテル「THE SCENE」を訪ねた。

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自然の中で、心も体も浄化する

奄美空港から2時間ほど車で南下した鹿児島県大島郡瀬戸内町蘇刈にそのリゾートホテルはある。2017年に指定された奄美群島国立公園内で唯一、天然温泉のあるホテルだ。

建築家の上田 斉、代官山「カノビアーノ」総料理長の植竹隆政、西麻布「すし通」大将の藤永大介らが監修に携わったという「THE SCENE」のコンセプトは「ネイチャークレンズ」。手付かずの豊かな自然の中で過ごすことによって、心も体も浄化できるということなのだろう。

このホテルを運営するのは、ストレッチ専門店Dr.Stretchや、ストレッチピラティス専門店 WECLEを展開するFUBIC(フュービック)。フィットネスサービスを手がける企業がホテルを展開とは、一見奇異に映るかもしれない。だが、「健康」×「IT」×「スポーツ」という3つの柱を掲げるサービスの集大成として、ウェルビーイングという概念があると思えば、腑に落ちる。ホテルには、身体的・精神的に充足感を満たす、天然温泉やリラクゼーションルームも用意され、心・脳・体を理想的な状態に導いてくれるという。

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(C)THE SCENE

2015年9月に開業してから6年。全ての部屋から海を一望できる客室は計21室とアットホームな雰囲気が漂う。この奄美というロケーションは、ダイビング好きなフュービック代表取締役社長の黒川将大が、これまで潜った国内外の海の中で最も美しかった場所として選んだそうだ。

そんな黒川が惚れ込んだ地で、ホテルの目の前には1万6千坪のプライベートビーチが広がり、その先には手付かずの美しい島、加計呂麻島が見える。

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最近では、女性の一人旅のお客様も多くなっているといい、筆者が訪れたときも、様々なアクティビティに参加しながら、優雅に時を過ごしている女性がいた。

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(C)THE SCENE

また、ウェルビーイングを語る上で「食」は欠かせない。THE SCENEでは奄美大島の食材を使い、シンプルな調理方法とこだわりを披露する。ここの食が気に入り、リピートする顧客も少なくないという。イタリアンは唐辛子とにんにくを使わずに旨味を引き出し、和食は鹿児島の食材をふんだんに使った体に優しい味付けになっている。

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引き算の幸せ

THE SCENE 支配人の小林良輔は、2014年、支配人就任とともに東京から奄美大島に移り住んだ。元々東京で車のセールス事業に在籍していたという小林は、東京在住時代、数字を追う職業柄、何でも「一番」にこだわっていたという。

「一番いいものを食べ、いい洋服を着、いい車に乗る。そして、一番いいところに住むことが幸せの価値観だったんです。しかし、奄美大島に来て、いい車乗っていても誰も羨ましがらないし、誰も時計のブランドを気にしない。それで、どんどん手放していくと、見えてきた新しい価値観、幸せの形があったんです」

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THE SCENE 支配人 小林良輔氏

新しい価値観、幸せの形──。奄美におけるそれのベースになるのは、絶対的な自然であろう。

「ここに住んで7年になりますが、自然って飽きることがないんです。毎日違う顔を見せてくれる自然に、日々感動しています。私が大好きな瞬間は、部屋でカーテンを開けて寝るとき。すると、朝、自然と太陽の光で目が覚め、窓の外に広がる海と自身が一体化し、海の上で目覚めたような感覚になるんです」

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いまや、海やビーチ、山や高原のリゾート地だけでなく、贅沢な非日常を味わうホテルなど、「国内リゾート」と呼ばれる場所は数多くある。ただ、小林によると、THE SCENEを訪れる顧客たちは、他のリゾートに比べ、人工物が入っていない、ありのままの自然を求めて、奄美を選ぶことが多いのだという。

「先日、お客様に何が一番良かったですか? と伺ったんです。そうしたら『空気』と言われて、ハッとしました。私たちは様々な形でホスピタリティを提供していますが、やはり自然の絶大さを改めて感じました」

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小林支配人取材中、見つけたヤドガリ

奄美大島、世界自然遺産へ

奄美大島はこの7月にも世界自然遺産に正式決定する予定だ。登録されれば、国内の世界自然遺産として5件目となる。恐らくこの決定をきっかけに、国内外ともに奄美は益々注目されることになるのだろう。

奄美の自然、そして、特殊な気候は、これまで他では見られない豊かな動植物の生態系を生み出してきた。たとえば、アマミノクロウサギ、アマミイシカワガエル、ルリカケスなど、大陸では絶滅した希少な固有種が生息し、あちらこちらにクロウサギの交通事故を防止するための看板も設置されている。

また、ホテル目の前のプライベートビーチでは、スタッフいわく「100%ウミガメに遭遇できる」といい、実際、この旅に同行していた女性はシュノーケリングで2匹のウミガメに出会ったという。

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(C)THE SCENE

ホテルから海のその先に眺めることができる加計呂麻島は、奄美大島の港からボートで20分程で到着する。総面積の95%が山林が占める、秘境の地だ。島の周囲は約150km。島の人口は約1400人で、30の集落が点在し、それぞれ異なる雰囲気を持つという。

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筆者が訪れたのは、武名集落。そこには「武名のガジュマル」という名所が存在する。ガジュマルと言えば、垂れ下がる気根が特徴で、成長した気根はアスファルトなども突き破る強さを持っていることから、強い生命力の象徴として見られ、「健康」という花言葉をもつ。

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またガジュマルは、「多幸の木」とも呼ばれる。奄美では、ガジュマルにはケンムンと呼ばれる妖怪が住んでいると言い伝えられ、集落では古くから「神が宿る木」として大切にされてきた。

そんなガジュマルの巨木に囲まれ、静けさの中に佇むと、その言い伝えを知ってか、神々しさが木々から伝わってくるような気がする。ただ、その神秘性は、ガジュマルという木そのものや、パワースポットと呼ばれるその場所という理由だけでは恐らく語れない、荘厳な大自然への畏怖であることに気づく。

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自らと向き合う

3日間、奄美大島のTHE SCENEに滞在してみて気づいたこと。それは、自然の中で過ごすことは、すなわち、心と体を浄化し、従来の姿にチューニングする作業であるということだった。

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また、奄美の島が自身にもたらしてくれたのは、美しい自然が誘発する「癒やし」を享受するなどという、人間に都合よく解釈するコントローラブルな自然への感情ではなかった。自然に対し従属、共存させていただかなければならないという、畏敬の念。それはつまり、人こそが「万物の霊長」だとする驕りからの解放でもあった。

日が昇ったら活動し、日が落ちたら眠る。社会のノイズを最低限にまで落とした、本来の人間らしい生活。そして、自然との調和。この旅がもたらしてくれたものは、自然を介して、自らという本質に向き合う純然たる時間であった。

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