
本塁打を量産する巨人の4番・岡本和真のポジション問題が注目を集めている
「レフト・岡本和真」が物議を醸している。巨人・原辰徳監督はここ数年、故障に悩んできた不動のショート・坂本勇人を9月7日からサードで起用。現在セ・リーグのホームラン王である岡本はファーストに回った。中田翔が一軍に復帰すると、今度は岡本がレフトを守っている。最近の試合では中田がベンチに退くと、岡本がファーストになる機会も増えている。
【写真】ファウルフライを好捕する岡本和真。サード守備の定評は高い
岡本のポジションが固定されない起用法には、球界OBからも否定的な意見が出ている。V9時代のエースで、監督も務めた堀内恒夫氏は『週刊ベースボール』の連載『悪太郎の遺言状』で怒りをぶちまけている。
〈俺が最も不可解に思うのは、いつも試合終盤になると、サードの岡本和真をファーストへ持っていくじゃないか。時には「四番・ファースト」として、先発メンバーに名を連ねることもあるから、本当に驚きだね。〉
〈今季からチームリーダーの役割を託された男が、試合終盤になると、コソコソと毎試合のようにポジションを動かされる。駆け出しの選手ならまだしも、岡本はサードを守らせたら日本プロ野球で1、2位を争う守備の名手だからね。これは本当に不可解な話だ。〉
〈果たして現在の原監督は、岡本が守備位置を転々とする姿にいったい何をイメージしているのか。巨人の生末とともに、その理由を俺は問い質してみたくなるね。〉(以上、雑誌『週刊ベースボール』2023年9月11日号)
現役時代、サード長嶋茂雄、ファースト王貞治の固定布陣を経験してきた堀内氏ならではの意見とも言える。まだ中田復帰前のコラムであり、レフトに回った今はさらに怒りを溜め込んでいるかもしれない。
同様の意見は、ファンの間でも広まっているようだ。
「今年の阪神は岡田彰布監督がシーズン前から『大山悠輔はファースト、佐藤輝明はサードから動かさない』と明言。昨年までいろんなポジションを守っていた2人は固定された。近本光司、中野拓夢、木浪聖也というレギュラーも1年を通じて同じ守備位置です。その結果、チームは優勝した。ですから中心選手には複数を守らせるのではなく、1つにして打撃に集中させるべきという意見は多い」(プロ野球担当記者。以下同)
現役時代にレフトにコンバートされた経験
岡本はサードで2年連続ゴールデングラブ賞を受賞している。原監督が、その4番打者の守備位置を固定しないのは、どのような思惑からなのか。
「岡本はたしかに上手いですが、守備範囲はそれほど広くない。総合力を考えれば、坂本勇人やルーキーの門脇誠のほうが上です。また、中田翔のファーストの守備は12球団トップクラス。原監督はチーム編成を考えた場合、岡本がレフトに回るのが合理的だと考えているのでしょう」
現役時代、巨人の4番を打った原辰徳は8年目まではサードを守っていたが、9年目の1989年にはレフトにコンバートされた。この時、藤田元司監督は「次は塀の外しかない」と告げたが、1990年にはチーム事情でレフトだけでなくサードも頻繁に守った。この2年、巨人は連覇を果たしている。
「当時の経験が今の原監督の野球観につながっていると思います。4番であれ誰であれ、チームの勝利のためには自分のプライドなど、ちっぽけなものだと感じたのでしょう。1992年にはファースト、長嶋茂雄監督が復帰した1993年には再びサードに回った。
とはいえ、4番がポジションをたらい回しにされるのは他に例がないわけではありません。三冠王を3度獲得したロッテの落合博満も初めは本職ではないセカンドを守り、首位打者に輝いた翌年もポジションは変わりませんでした。1983年はファーストを守りましたが、1984年からはサード。1985年に2度目の三冠王を獲りましたが、1986年はまたファーストに移っています。中日に移籍した1987年はサード。1988年、1989年はサード、ファースト両方を守っていました。それでも落合はチームの勝利を最優先に考え、ポジションについて文句を言っていません。チームの中心選手でも、守備位置が頻繁に変わるのは起こり得ます」
1つのポジションに固定されれば、守備に余計な気を遣わずに済む。岡本がレフト、ファースト、サードと3つも守れば、そのぶん練習時間も割かなくてはいけなくなる。
「それが悪い効果だけを及ぼすかといえば、また別問題になります。いろんなポジションを経験すれば野球をいろんな視点から見られるし、新しい発見もある。将来、指導者になって活きる部分もあるでしょう。原監督はそうした部分も岡本に経験しておいてほしいと考えているのでは。
それ以上にレフトで実績を積めば、岡本にとってもメリットがあります。将来的にメジャーへ行きたいなら、複数ポジションを守れたほうが重宝される。日本人の内野手はメジャーでなかなか成功できていないので、内野しか守れないと懐疑的な目で見られてしまう。外野も守れれば契約段階でも有利になるし、出場機会も増えます」
順調にいけば、岡本の海外FA権取得は2026年になる。巨人は基本的にはポスティングを認めていないため、岡本の挑戦は早くても30歳の時になりそうだ。それまでに岡本はどのポジションを守るのが正解なのか。
NEWSポストセブン