―[道路交通ジャーナリスト清水草一]―
◆BMWの頂点に君臨するのは、ガソリン車? それともEV?
一般社団法人日本自動車販売協会連合会が発表している’22年1~9月のEV(普通乗用車のみ。軽自動車は除く)の新車販売台数は2万2234台。ここに軽EVの日産サクラや三菱ekクロスEVを加えると、4万台近いEVが日本でも売れています。今回はそんなEVの頂点かつBMWの頂点の7シリーズに乗ってみました!

TOP OF BMW
永福ランプ(清水草一)=文 Text by Shimizu Souichi
池之平昌信(流し撮り職人)=写真 Photographs by Ikenohira Masanobu
◆やっぱりEVは金太郎飴じゃない!?
われわれカーマニアは、EVに対して否定的だ。なぜならEVは、どれに乗っても同じように感じるからである。そりゃガソリン車からEVに乗り換えればぜんぜん違うけど、EV同士はどれも似たような乗り味で個性がない。冷蔵庫の冷やし方に個性がないのと同じだ。
同クラスのEV同士はもちろんのこと、軽EVの日産サクラ(233万円~)も、ジャガーiペース(1005万円~)も大差なし! 小型冷蔵庫と大型冷蔵庫の違いでしかなかった。
それでも欧州メーカーは、恐ろしい勢いでEV化を進めている。ごく近い将来、上から下まで全部EVになる。BMWのフラッグシップたる7シリーズも例外ではなく、このたび、「i7」の名で電動化された。
◆ガソリンターボの740iMスポーツに試乗

写真左がEV、右はガソリン車
幸い、7シリーズにはまだガソリン車やディーゼル車も残されている。かつて7シリーズはV8やV12ガソリンエンジンが主力だったが、新型はガソリン/ディーゼルともに3リッター直6ターボのみ。だいぶグレードダウンされているが、ガソリンエンジンが存在するだけでありがたい。まずはガソリンターボの740iMスポーツに試乗しよう。
BMWの3リッター直6と言えば、「シルキー6」の名でカーマニア垂涎の的だが、7シリーズは2tを超える重量級。さすがに荷が重いかと思いきや、450Nm(先代)から520Nmへと増強されたぶっといトルクが、低い回転からグイグイと車体を前に押し出す。回転も超なめらかで言うことナス!
◆新型7シリーズの超巨大モニター

一番驚いたのは、後席の31.3インチ超巨大ディスプレイ(Amazon Fire TVを搭載)。操作はドアトリムのタッチコマンドで行います。すげ~
新型7シリーズは、宇宙人っぽい顔のインパクトが強烈だが、全体のフォルムは超コンサバなロールスロイス風味。乗り心地もロールスみたいにフワッフワで超カイテキだ。後席には超巨大モニターが格納されており、ユーチューブ等の動画をシアター感覚で見ることができる。エンジンはちっちゃくなったけど、これ以上の高級車はいらん!としか言いようがない。
◆EVのi7に試乗
続いて、EVのi7だ。BMWのフラッグシップEVも、やっぱり冷蔵庫なのか。冷えるだけなのか。

うおおおおお~~っ! アッツアツやんけ~~!
740iでも十分すぎると思ったけど、静かさとなめらかさのケタが違った。加速もウルトラケタ外れ! 前後に2個搭載されたモーターは、合計745Nmのトルクを生み出し、アクセルを踏み込めば、宇宙船のように加速する。乗り心地のフワッフワ感もさらに増強されているが、電子制御エアサスゆえ、ハンドルを切ってもほとんど車体が傾かず、キュイーンと直角に曲がる。異次元だ……。
EVはどれも似たような乗り味だと思ってたけど、訂正します! さすがBMWのフラッグシップEVは違う! この高級感、V12搭載の先代760iをはるかに超えておりまする! で、お値段はいかほどで?

車両本体価格は1670万円。「安いっ!」と思ったら、試乗車にはオプションが570万円分つき、締めて2240万円でございました。さすがBMWのフラッグシップ!
◆【結論!】
EVはどれも同じではなく、頂点はすごかった! むしろ電気モーターは、その静かさとなめらかさゆえ、超高級セダンにピッタンコ! センチュリーも早くEVにしてください

i7のボディサイズは全長5390×全幅1950×全高1545㎜。システムトータル最高出力は544馬力

i7

i7先代BMW760iは2500万円級だったので、i7xDrive60エクセレンスの1670万円はマジで1000万円くらい安い。ちなみに740iMスポーツは、車両本体1490万円、オプション441万円、合計1931万円でした

740i7シリーズには、まだディーゼルエンジン搭載モデルも残ってます。V8やV12はないけど、今ならガソリン、ディーゼル、EVから選び放題。守旧派カーマニアとしては、選択肢が多い状態が少しでも続くことを願います!(7シリーズは買えないけど)

740i
―[道路交通ジャーナリスト清水草一]―
【清水草一】
1962年東京生まれ。慶大法卒。編集者を経てフリーライター。『そのフェラーリください!!』をはじめとするお笑いフェラーリ文学のほか、『首都高速の謎』『高速道路の謎』などの著作で道路交通ジャーナリストとしても活動中。清水草一.com