[フランクフルト 21日 ロイター] - 欧州中央銀行(ECB)は21日、ユーロ圏の商業用不動産市場は厳しい状況が今後数年続き、銀行の貸出債権、投資ファンド、保険会社がリスクにさらされる可能性があると指摘した。
ECBは金融安定報告で「銀行の商業用不動産ポートフォリオの規模は比較的限定されシステミックな危機につながる可能性は低いが、より広範な市場ストレスが発生した場合は重大な増幅剤の役割を果たす可能性がある」との見方を示した。
銀行の融資残高に占める割合は住宅ローンが約30%、商業用不動産は約10%。問題が起きた場合は「投資ファンドや保険会社など、金融システム以外で商業用不動産へのエクスポージャーが大きい企業にも多大な損失をもたらすことになる」と指摘した。
2023年上半期の商業用不動産取引は前年比47%減少した。
ECBは、取引減少で価格がどの程度下落したか判断するのは難しいものの、大手の取引価格は純資産価値から30%以上割り引いた水準だとした。割引率は2008年以降で最大という。
不動産会社向けの銀行融資のサンプルからは、最近の融資コストの上昇により、赤字企業向け融資の比率が2倍の26%に達する可能性を示唆したと指摘した。
厳しい資金調達環境が市場の予想通り2年続き、企業が期日を迎えた融資を全て借り換える必要がある場合、比率は30%に増加すると予想される。
ECBは「特に、資金調達コストの上昇と収益性の低下の両方が数年続くと考えると融資債権には相当な脆弱性がある」と指摘。「パンデミック前の収益性と低金利を前提としたビジネスモデルは、中期的には持続不能となる可能性がある」とした。