持続可能な社会をつくるための「SDGs」。2030年までの達成をゴールとした「持続的な開発目標」を指し、世界的に注目されています。一見難しそうに感じますが、じつは私たちの暮らしのなかに取り入れられることがたくさんあります。今回のテーマは「韓国のエコ事情」について。SDGsに詳しいフジテレビの木幡美子さんにつづってもらいました。
脱・使い捨て、置き配…韓国の最新“エコ事情”

ソウルの街並み(2023年3月上旬)
韓国ソウルに行ってきました。コロナ禍で制限されていた旅行や食事会、ライブなどがほぼ通常モードに戻ってきたことで、久ぶりにパスポートを使う旅へ。
ソウルにはコロナ前も何度か訪れていますが、エコという視点で改めて見ると、日本にはないさまざまな興味深い取り組みがありました。韓国のエコ事情を前後編でご紹介します。
●韓国のプラスチックフリーはどこまで進んでる?
5年ほど前にも、韓国ではすでにスーパーやドラッグストアでレジ袋をくれないことに驚いたのですが、昨年(2022年)4月以降は、レストランやカフェでの使い捨てプラスチック製品の使用が全面的に禁止になりました。さらに11月24日からは、スーパーやコンビニなどでの使い捨てレジ袋の販売も禁止。プラ製のストロー、マドラー、傘用のビニールも廃止になったそう。
カフェなどでは持ち帰り以外は、紙コップもダメになり、通常のカップでの提供になっていたのです。

ソウルにはおしゃれなカフェがたくさん!
日本でもスターバックスが冷たい飲み物のフタをなくしたり、店内では樹脂製のグラスを使いはじめました。これも、環境に配慮した取り組みの一環で、利用者にもすんなりと受け入れられているようです。
●韓国の宅配は「置き配」が基本
さらに宅配においても、ちょっとビックリな方法をとっていました。
それは基本「置き配」ということ。韓国で生活していた人に聞くと、在宅してようがしていまいが、玄関前にポンとおいていくそうです。
生鮮食料品の宅配専用にはこんなバッグもあるそうです。

置き配用保冷バッグと紙製の保冷剤
これがなぜエコかというと、配達のために何度もトラックなどで往復するのは、それだけガソリンを消費し、二酸化炭素を排出します。また、配達員の過重労働にもつながります。
これで盗難などのトラブルはないの? と聞くと意外とないと。防犯カメラがいたるところについているのも、トラブル防止につながっているのかもしれません。配達を受け取るために予定を変更したり、家にいて待つのもストレスなので、私は置き配大賛成です。
●梱包資材も環境に優しい素材を活用、しかもおしゃれ!
そして、ネットショッピングをすると必ず入ってくるのが、梱包のための資材(空気の入ったプラ製の緩衝材、いわゆる“プチプチ”など)。これも韓国では環境に優しい紙などの素材になっていました。ビニールテープのいらない箱も開発されていて、環境にいいだけではなく、あけやすく、見た目もすっきりしていておしゃれ。

こうした海外の風景を見ると、日本で当たり前になっていたことも、段階的に改革を進めていけばじつは意外とあっさりと受け入れられるのかもしれません。
日本ではネットショッピングをすると、まだまだプラスチックが幾重にも使用されていて、罪悪感さえ感じてしまいます。日本の流通業界もぜひ参考にしてほしいです。
●値上げの今こそ見直したい「ペットボトル」のこと
また、ペットボトルについても、新しい施策が始まっていて、透明ペットボトルは高品質再生原料としてリサイクルするため、マンションなどの共同住宅では一般のプラスチックと分けて捨てることを義務づけたそうです。

ホテルに置かれた水も、リサイクルしやすいラベルフリー
そもそも世界で販売・消費されるペットボトルの数は年間5831億本! 日本では2021年度に234億本が出荷されたそうです(PETボトルリサイクル推進協議会調べ)。1人当たり年間185本使っている計算になります。
あらゆるものが値上げして家計を圧迫している今だからこそ、1本100円~200円するペットボトルの飲み物を買うかわりに水筒を持ち歩いたり、スーパーから家までの距離だけのためにレジ袋に3円とか5円を払うのをやめ、エコバッグを使うなど、環境にも家計にもやさしい選択をすることが、住みやすい地球を残すことにつながるのではないでしょうか。
木幡美子