『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』京アニが“女性の社会進出”を実直に表現

『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』京アニが“女性の社会進出”を実直に表現

  • 日刊サイゾー
  • 更新日:2022/11/25
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2018年に放送されたテレビアニメ『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』は北米最大のアニメ・コンベンション「Anime Expo 2017」で、第一話が世界に先駆けてワールド・プレミア上映されるほど話題に。その後、ネットフリックスが全世界配信を手掛けた注目作だ。

好評を受け、2019年には『ヴァイオレット・エヴァーガーデン 外伝 – 永遠と自動手記人形 -』が劇場公開。それらに続くシリーズの完結編として2020年に公開された『劇場版ヴァイオレット・エヴァーガーデン』が金曜ロードショーにて初放送です。

『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』のあらすじ

大陸を二分した戦争が勃発。南西側の名門ブーゲンビリア家の当主、ギルベルト少佐は兄のディートフリートに戦災孤児の少女を「道具として使え」と押し付けられる。言葉もろくに話せず、読み書きもできないその子にヴァイオレットと名付け、少年兵として教育を施す。彼女はやがて一個分隊にも匹敵する「戦闘人形」の異名で知られるようになったが、感情の乏しい殺人機械にしてしまったことを、ギルベルトは悔いていた。

戦争が激化する中、ギルベルトを守るために両腕を失いながらも上官である彼を救おうとしたヴァイオレットに、ギルベルトは「自由になれ」そして「心から、愛している」と告げる。

直後、砲撃を受けて気を失ったヴァイオレットは救出され、療養中だというギルベルトの帰りを待ちわびながら、ギルベルトの友人だったホッジンズが終戦後に設立したC.H郵便社で、読み書きができない市民のために手紙の代筆を行う‟自動手記人形”として働きはじめる。ギルベルトの命令を聞くことだけがすべてだったヴァイオレットは「直接伝えられない言葉を手紙にする」仕事を通じて、ギルベルトの「愛している」という言葉の意味を知ろうとする。だが、ギルベルトは砲撃を受けた際行方不明になり、戦没者として処理されていた。以上がテレビアニメ版の大筋の物語だ。

劇場版ではデイジーという少女が祖母の葬儀に参列、遺品の中から手紙の束を見つける。それは曾祖母から誕生日の度に受け取ったバースデーカードで、病のために早くに亡くなってしまうことがわかっていた曾祖母は娘のために、50年に渡って誕生日に手紙が届くようにしていた。その手紙を「代筆」したのは‟自動手記人形”のヴァイオレット・エヴァーガーデンだった(この代筆のエピソードはテレビアニメ版で描かれた)。

デイジーは代筆したヴァイオレットの事が気になり調べてみると、彼女が務めていたC.H郵便社は国営の会社となり移転していた。ヴァイオレットも18歳の時に仕事を辞め、以後の消息は途絶えていた。デイジーはヴァイオレットがなぜ自動手記人形の仕事を辞めたのか、そしてどこへ去ったのか、彼女の足跡を求める旅に出る。

50年以上経った時代のデイジーが、テレビシリーズ以降のヴァイオレットの物語を辿っていくという構成の完全オリジナルストーリーだ。

製作は、圧倒的なクオリティで他の追随を許さぬ会社として知られている、京都アニメーションがシリーズを通して手掛けている。原作は京都アニメーションが発行している文庫レーベル、エスマ文庫の「京都アニメーション大賞」の第5回大賞作品。同賞では受賞作品の多くが京都アニメーションの手によりアニメ化されているが、『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』は、同賞の中で唯一の大賞受賞作品だ。

『ヴァイオレット~』がただひとつの大賞受賞作品という栄誉に輝いた理由として「女性の社会進出」というテーマを描いていることがあげられるだろう。

ドールと呼ばれる‟自動手記人形”の作業は、タイプライターで行われる。同作の世界は終戦間もない時代で、世の中の女性たちにとって社会に進出する機会としてこの仕事が選ばれている。

実際の社会でもタイプライターが普及するより以前は、手書きで口述筆記や清書を行うために速記ができる人材が存在したが、今度はタイプライターを打つ仕事、タイピストが誕生する。2012年のフランス映画『タイピスト!』は、地方では親の勧める縁談しかないという将来を嫌った主人公が、唯一の特技であるタイプライターの早打ち大会で世界一を目指すという物語。タイピストは秘書や電話交換手に並ぶ、女性が社会進出するための代表的な職業となった。

本作は十代の少女なのに戦争の犠牲になって効率よく人を殺すことしか知らず、常に無表情で「愛している」という言葉の意味もわからなかったヴァイオレットがタイピスト、代筆の仕事を通して人の感情を理解するようになっていき、平和な社会に溶け込んでいく。現実の社会を反映したかのような物語は、深夜アニメ作品ではあまり見受けられない。

昨今の日本のアニメーション作品における女性像は可愛らしさやヒロイックな面に集約されがちだが、社会に進出していこうとする女性の立ち位置(を殊更強調せずにさりげなく)を実直に表現した作品というのは、中々ないのではないか。

こういった点がディズニーやピクサー、ジブリといった会社とはまた違う方向性で全世界に通用する作品を生み出している、京都アニメーションの特色といえよう。

あまりに感動的で心から愛してしまう作品なので、他局で放送されたアニメなのに、金ローはテレビ版を再編集した『特別編』と『ヴァイオレット・エヴァーガーデン 外伝 – 永遠と自動手記人形 -』を去年放送してTwitterの世界トレンド1位を獲得した! そして今夜完結編にあたる劇場版が放送される。

局の垣根すら飛び越えてしまう『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』の完結をぜひ見届けてください。

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