社説:DV保護命令 実情踏まえた改善必要

  • 京都新聞
  • 更新日:2022/11/25

ドメスティックバイオレンス(DV)の被害を防ぐため、保護制度の見直しが求められる。

2001年に施行されたDV防止法に基づいて裁判所が加害者に出す「保護命令」が、減少の一途をたどっている。命令が出ても身の安全が保障されず、使いにくいのが理由だ。

保護命令は配偶者らによる暴力の被害者から申し立てを受け、加害者に接近禁止や住居退去などを命じる。だが退去命令は少なく、対象行為も身体的暴力などに限られる上、申し立てから発令まで平均12日ほどかかってしまうという。

被害者はどこかに逃れざるを得ず、元の生活を続けられないケースが大半を占める。「相手を刺激して報復されるのが怖い」―。そんな声が上がるのも当然だ。

DVは大きな社会問題であり、新型コロナ禍で深刻さを増している。全国の配偶者暴力相談支援センターなどに寄せられた相談は、20年度に前年度比1・5倍の約18万2千件と急増し、21年度も約17万7千件と高止まりしている。

これに対し、21年に出された保護命令はわずか1%未満の1335件にすぎず、14年の2528件をピークに減り続けている。

約20年前に始まった制度が機能不全に陥っているのは誰の目にも明らかだろう。現場の実態に即さず、必要な人が救済されていなければ、何のための制度かと言われても仕方ない。

地域によって制度活用の差が著しいのも看過できない。行政や地域社会によるDV対策の濃淡が反映されているとみられ、当事者には不平等な状況といえる。

都道府県別に見て、人口10万人当たりの19~21年の発令数が10・9件で最多の宮崎では、早期救済のために県の相談員が申立書の作成を手伝い、裁判所の書記官と日程を調整しているという。一方、1・2件の東京など大都市圏は発令数が低調だ。京都は5・6件、滋賀は2・8件だった。

DV防止法はこれまでに4度改正され、保護命令は加害者に元配偶者や同居の恋人を含み、「生命などに対する脅迫」にも対象を拡大した。政府はさらに、対象に精神的DVを加える法改正案を来年の通常国会に提出する方針だ。

海外には加害者に更生プログラムを受けさせる仕組みもある。法改正するならそうした点も含め、もっと実効性のある制度にするべきではないか。活用に向け、自治体や地域へのサポート態勢を強化することも欠かせない。

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