《京都・平安女学院で内紛勃発》“敏腕経営者”理事長vs.“愛の教育”ミッション系教職員の行方は?

《京都・平安女学院で内紛勃発》“敏腕経営者”理事長vs.“愛の教育”ミッション系教職員の行方は?

  • 文春オンライン
  • 更新日:2021/08/03

《どうか本校をお助けください》京都のミッション系伝統校「平安女学院」からSOS 校長が“学院出禁”の異常事態発生から続く

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いま、京都の中心地にある名門女子校が揺れている。舞台となっているのは幼稚園から短大・大学までを擁するキリスト教主義の平安女学院(以下・平女)だ。きっかけになったのは今年3月1日、平女の高等学校の卒業式で山岡景一郎理事長(学院長・大学学長も兼任/91)が語った式辞だった(#1で詳報)。

この式辞が146年の歴史を紡いできたキリスト教系の名門女子校では大問題に発展した。同学院の現役教職員が語る。

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「理事長は平女を“エルメスやヴィトンと同じようなブランド大学”と表現しました。しかし、これは言い換えれば他の学校は、平女より品格が劣るということを言っていると同義であり、謙虚さを重んじてきた平女146年の歴史とは相いれません。

不適切発言で保護者やOGから批判が殺到

また、式辞のなかで人間は社会の役に立つか立たないかによって、5種類に分けられ、《世の中におったら害になる人》もいると指摘するなどの差別発言もしています。人間の存在そのものを赦し、肯定するキリスト教主義の平女において、不適切にもほどがある発言でした。保護者やOGからも批判が殺到しました」

そこで同学院の今井校長が中心となり、理事会で理事長に式辞内容についての説明を求めようとする動きが加速した。しかし理事長側がその動きに勘付き、今井校長を自宅待機処分としたのだ。

「理事長は松下幸之助に私淑する“敏腕経営者”です。教育よりも学院経営を重視するため、これまでも教職員や生徒らと対立してきました。平女の教職員は俗世間とは隔絶されたような雰囲気がある方も多いので、経営者然とした理事長とは水と油。過去には、理事長と現場で訴訟沙汰にまで発展したこともあります」(地元紙記者)

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◆◆◆

「6月16日、理事長の責任を追及していた校長に自宅待機処分が下され、校長は生徒や教職員との接触を禁じられました。校長や教職員は以前、理事長から『学校の中には私の協力者がいるから』と聞かされたことがあるそうです。自分たちの中に内通者がいるのではないかという恐怖から、教職員らは互いに疑心暗鬼になり、相談し合うこともできない、異常な緊張状態に陥りました」(前出・現役教職員)

今井校長は「いつも穏やかで、どんなときも愛の教育を大切にしてきた平女の象徴のような方」(同前)なのだという。突如、校長不在となった学院内には大きな動揺が走った。

校長に次いで副校長や教頭も“処分”

「校長不在という異常事態について、生徒や保護者たちに何も説明しないわけにはいきません。そこで副校長や教頭らが生徒や保護者向けの文書を作成しました。6月26日の朝礼で教職員にその文書を配布し、その日のショートホームルーム(終礼)で各教室の生徒に配布する予定でした。しかし配布直前、理事長付きの秘書室のような部署である学院統括室の職員によってプリントの配布が阻止されてしまったのです」(同前)

そうして、生徒らに校長不在の理由が説明されないまま、10日が経った。そして6月28日、学院統括室が中・高の教職員に緊急招集をかけた。

「学院長付参与から、これまで理事長に対して式辞の説明責任を求めてきた副校長、教頭ら4人の『役職解任』が告げられました。彼らはこれまで教職員会議で、理事長の式辞での発言内容を問題視し、その対応を検討してきた中心人物でした。その会議の音声が録音され、音声データが理事長の手に渡っていたようなのです。教職員の誰がどんな発言をしていたのか、すべての動きが理事長に筒抜けになった結果、ついに副校長や教頭らまで『クビ』にされてしまったのです」(同前)

学院長付参与と男性教職員との間で激しい口論

前出の教職員によると、副校長らの解任が告げられた当日、理事長側の学院長付参与と男性教職員Aとの間で人事を巡って激しい口論があったという。取材班はそのときの音声を入手した。やりとりは以下の通りだ。

学院長付参与 「先生方、急なお呼び出しいたしまして、大変失礼いたしました。理事長の方からの決定事項だけお伝えしたいと思います。ちょっと急なんですが、今現在、副校長を務めていただいております●●先生、それから教頭をやっていただいている▲▲先生、■■先生、〇〇先生の方々につきましては、本日付で、その職の任を解きます。新たに副校長として☓☓先生を本日昼に、理事会決定により、中学校・高等学校副校長に任ずることに決まりました。(中略)なお、校長代行は規定によりまして、副校長である☓☓先生の方に務めていただきます。よろしくおねがいします」

教職員A 「意見があります」

学院長付参与 「言いたいんやったら言ってください」

教職員A 「すいません、質問があるので、それに回答してください。辞令と申しましたけども、何を根拠として、管理職にそのような辞令をやるんですか。それが明確でなければ私は従う気はございません。また、学校の公平性から言ったときに、この人事は明らかに不当だと思いますが、どう思われますか」

学院長付参与 「みなさんが例えば部長とか課長とか、職に就くときにいちいち理由を聞かれたことありますか?」

教職員A 「でもおかしいじゃないですか、これどう考えたって……」

学院長付参与 「みなさんに納得のいく理由を普通言う方がおかしいでしょ? 人事の問題って」

(中略)

学院長付参与 「あとでいくらでも議論はしましょう」

教職員A 「議論はここでちゃんとしましょう。明確な議論をしてください、だから私は今、怒ってるんです」

学院長付参与 「とりあえず一旦終了します、いいですね?」

教職員A 「おかしいって言ってるじゃないですか。全然答えてない」

学院長付参与 「いいですね? A先生、いつでもお相手しますから来てください」

教職員A 「お相手じゃないです、ちゃんと答えてください」

学院長付参与 「一応先ほどのが答えです」

教職員A 「答えじゃないですよ」

学院長付参与 「いいですか? どうもありがとうございました。以上で終わります」

一連のやり取りのあと、教職員Aは「なんなんですかこの学校、民主的じゃない……」と呟いたという。

事態急変! 理事長がマイクを握って謝罪

しかし校長が自宅待機となって23日目の7月8日、事態は急変する。朝礼の場に山岡理事長と今井校長の両者がそろって姿を現し、校長の解雇が撤回されたのだ。

「山岡理事長はマイクを握り、式辞での発言について、『不徳の致すところ』『ご迷惑をおかけしました。深く反省しています』と謝罪しました。今井校長はいつも通り落ち着いた様子で、解雇が撤回されたことを報告。教職員はみんな安堵の表情を浮かべていました。本当に安心しました……」(前出・教職員)

理事長が態度を軟化させたのは、SNSで理事長の式辞での問題発言が広まり、保護者や卒業生からの電話や問い合わせが収まらなかったことが理由のようだ。その夜、副校長や教頭ら4人の解任も撤回された。

取材班はこの一連の騒動について、校長にも話を聞こうと自宅へ向かった。今井校長は30分間にわたって取材に応じた。

「どんな権力を持った方に対してでも、間違っていることは間違っている、と主張すること。その姿を子供達に見せなければと、信念を持って、45年間、平安女学院で働いてきました。ですから単に理事長といがみあっているということではありませんし、そこは誤解なさらないでください。

もちろん理事長とは教育観も、経営、組織運営、全部考え方が違いますが、そこはまあ、経営者ですから。しかしキリスト教学校として、愛の精神を説いていかねばなりません。愛とは、人を大切にする、大切にされるということ。この一点なんです。それを否定されるような式辞については改めていただかなければ、平安女学院の教育が崩れてしまいます」

校長の「歯向かえば切られる」覚悟

今回の「異議申し立て」について、校長は「歯向かえば切られる」という覚悟で行ったという。

「理事長は京都だけでなく、文科省や政治家、財界も動かせる権力がある。そういう人物ですので。ですから理事長からすると『なんでそんな人に、お前が物言えるのや』みたいな感じでしょうね、きっと」(同前)

山岡理事長にも話を聞きに行ったが、自宅のインターホン越しに出た本人と思しき人物が「病床に伏している」と説明し、取材は断られた。平安女学院の関係者が語る。

「理事長は式辞での発言について謝罪し、校長先生らへの人事についても撤回しましたが、自分に歯向かう教職員に対して不当な圧力をかけた事実は変わりません。今後教職員会では、伝統ある平女を預かる役職に理事長がふさわしいかどうか、追及していくことになるでしょう。

理事長は着任してすぐ、教職員の給与を大幅にカットしたんです。校長に至っては、50%程度にされています。経営改革といっても、現場に身を切らせるようなやり方をしたわけです。しかも平女の文化に理解を示そうともしないのですから、人望が集まるはずありませんよ」

歴史深い京都で巻き起こったお家騒動。火種は、まだ燻っているようだ。

7月22日(木)21時〜の「文春オンラインTV」では、本件について担当記者が詳しく解説する。

(「文春オンライン」特集班/Webオリジナル(特集班))

「文春オンライン」特集班

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