
エンゼルス大谷翔平(23年9月16日撮影)
エンゼルスからFAとなっている大谷翔平投手(29)が、メジャー史上初となる2度目の満票MVPを獲得しました。大型契約にも追い風となりそうです。気になる移籍先ですが、大きな決め手として「勝てるチーム」だけでなく、「スーパースターの存在」も必要かと思います。
というのも、17年12月に大谷がエンゼルスと契約した時は、球界を代表するスーパースターで現役最高選手とうたわれたマイク・トラウト、さらにナ・リーグMVPに3度も輝き、将来殿堂入りが有力視される、偉大なアルバート・プホルスもいたからです。
当時と同じように、最有力候補とされるドジャースには大谷が「憧れの選手」と言ってはばからないムーキー・ベッツがいます。18年のレッドソックス時代に世界一に輝き、ア・リーグMVPと首位打者を獲得。20年のドジャース移籍1年目も世界一となり、走攻守と3拍子そろったスーパースターです。7月に両チームが対戦した時にベッツが大谷に握手を求め、談笑するシーンもありました。
ドジャースには球団新記録の59二塁打を放ったフレディ・フリーマンもいて、ナ・リーグMVP投票2位、3位による最強の1、2番コンビを形成しています。もし大谷がドジャースと契約すれば打順は3番が予想され、「最強の1~3番トリオ」が誕生しそうです。
今年ワールドシリーズで初優勝し、大谷獲得に本気と報道されるレンジャーズの1、2番も引けを取りません。今季ア・リーグで大谷に次ぐ長打率とOPSを誇り、20年のドジャース時代に次いで2度目のワールドシリーズMVPに輝いたコーリー・シーガー、リーグで最多得点と最多安打を記録したマーカス・セミエンがいます。
ア・リーグMVP投票では、大谷に次いで2位がシーガー、3位がセミエンでした。もし大谷が加われば1番セミエン、2番シーガー、3番大谷という打順が予想され、上位打線に「ア・リーグMVP最終候補3人」がそろい踏み。また、セミエン、シーガーの合計5億ドル(約750億円)コンビに、仮に大谷が総額5億ドルで契約すれば、3人合わせて「10億ドル(約1500億円)トリオ」の誕生となりそうです。
レンジャーズはさらに、先発投手陣にも偉大なエース2人が在籍しています。メッツ時代2度のサイ・ヤング賞に輝いたジェイコブ・デグロム、今年7月にメッツからトレード移籍し、3度もサイ・ヤング賞に輝いたマックス・シャーザーという、大谷にとっていずれも憧れの大投手です。デグロムは6月に2度目のトミー・ジョン手術を受けており、同じ境遇から学ぶことも多そうです。
一時期、大谷が興味を示していると報道されたブレーブスは最強打線を誇り、今年はメジャータイ記録の307本塁打をマーク。中でも、史上初の「40本塁打&70盗塁」を達成し、ナ・リーグMVPに輝いたロナルド・アクーニャが注目の的です。もし大谷が加入すれば、両リーグMVPによる「夢の1、2番コンビ」が誕生しそうです。
かつて、毎年のようにFA市場をにぎわせたヤンキースは可能性が低いとされますが、昨年ア・リーグ新記録の62本塁打を放ち、MVPに輝いたアーロン・ジャッジがいます。第16代キャプテンも務めるジャッジは大谷について「彼の才能があればホームランを80本、100本打てる」と大絶賛。それは多少オーバーでも「夢の60発コンビ」が誕生するかも知れません。また、今年初のサイ・ヤング賞に輝いたエースのゲリット・コールもいます。大谷が1年目で対戦したときに「素晴らしい投手」と絶賛。それに対し、コールも大谷の「大ファン」と公言するほどで、お互いに尊敬しあう良きライバル関係です。
それに引き換え、現在のエンゼルスはトラウトが3年連続でケガに泣き、看板の「トラウタニ」コンビが十分に機能せず。特にシーズン後半戦は大谷以外、ルーキーなど若手ばかりでした。やはり、今や世界最高のプレーヤー大谷には高いレベルで競い合い、お互いに刺激しあえるスーパースターの存在も傍らに必要かと思います。
【大リーグ研究家・福島良一】(ニッカンスポーツ・コム/MLBコラム「福島良一の大リーグIt's showtime!」)