精神科医が教える、ネットにあふれる「怒り」に巻き込まれない方法

精神科医が教える、ネットにあふれる「怒り」に巻き込まれない方法

  • マイナビニュース
  • 更新日:2021/07/21
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インターネットの普及が人々の生活を極めて短時間に便利にしました。地図や、時刻表等を調べたり、レストランの予約などをとったりすることを以前より簡単にできるようになりました。しかし、その影響で人々は、『待たされる』ことに耐性が下がり、待たされるとイライラ、ムカムカする人が増えています。

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○ネットに怒りの書き込みが増えている背景

アルコール依存をはじめ、様々な依存症がありますが、インターネット依存やゲーム依存はアルコールなどと異なり、法律で対象年齢が制限されていないため、特に重症化しやすいです。

ネット依存やゲーム依存が、悪化すると、食事や入浴、睡眠時間などに影響を与えるだけでなく、耐性が生じて、さらにインターネットやゲームを使用する時間などが増大する傾向があります。また、インターネットやゲームが使えない状況では、落ち込み、イライラ、対人コミュニケーション障害などの症状がみられることもあります。

そして、インターネットにまつわる問題に、SNSなどへの書き込みによるトラブルがあります。ネット上は対面とは異なり一方的なコミュニケーションです。対面の場合、相手が沈黙していても、同意や反対や困惑など、自分の意見を持っている可能性があることを感じることができます。

一方、ネット上では、中立的な考えを持っている人は、自分の考えを表現することなく沈黙を保つ傾向があるといえます。そのため、ネット上では、極端な思想をもつ人々が、一方的な主張を繰り返す傾向があることが報告されています。その結果、コメントする人がさらに攻撃的になります。つまり、コメントし続けて 炎上を誘発しているのは、極端な考えを持っている人である可能性が高いということです。

また、ネット上は、あくまでも一方向性のものですから、ずっとコメントしやすい状態になるため、同じようなコメントが続くことでさらにエスカレートした攻撃や怒りに溢れた状態になりやすいといえます。

[参考文献]
・田中辰雄、浜屋敏2019『ネットは社会を分断しない』角川書店
・田中辰雄、山口真一2016『ネット炎上の研究』勁草書房
○ネット上の怒りとリアルな怒りの違い

脳は正常な状態において、前頭葉と扁桃体の機能が拮抗しています。怒りとは、前頭葉と扁桃体のバランスが崩れた状態です。怒りという状態になる前に、まず『苦しい、悲しい、不安である、痛い』などの状態が先立ちます。そして、リアルな怒りの状態になります。リアルな状態では、視覚、聴覚、嗅覚、触覚などすべての感覚を使って認識しています。

一方、ネット上で感じる怒りは、リアルな怒りの状態より、限定的な怒りです。ネット上に、不快になる情報が現れます。あくまでも、活字や音声を伴う視覚的、聴覚的な情報です。つまり、ネット上の怒りは、パッケージされた情報によって間接的に誘発されるため、同時に多くの人々に影響を与え かつ同質的な怒りを引き起こします。

また『匿名性』が保たれていることも、激しく炎上しやすい状態であるといえます。以上のことをまとめると、ネット上の怒りは、リアルな怒りと異なり、同じようなプロセスを経て、非常に多くの人々が反応した状態といえます。

オキシトシンは、哺乳類である人間が母子のスキンシップの時代に増加するホルモンであり、それが不足すると情けが薄くなり、猜疑心が強くなり、一人遊びを好むようになるといわれています。 最近は、オキシトシンの低下した状態の人々が増加しているといわれ、このこともネットの炎上が増えていることに関係していると考えられます。
○夜にネットに書き込むべきでない理由

前の日の夜に、ネットやSNSに書き込みをして、朝起きてから書き込みを読み直すと、不適切な表現を見つけた経験はないでしょうか?

自律神経は交感神経と副交感神経によってバランスがとられています。自律神経は夜になると副交感神経メインになり、リラックスして胃腸、消化などの機能が高まり、心臓や呼吸などの機能は安定します。理性的な統制が穏やかになるぶん、感情的になりやすい状態になります。このような時間帯では、ネットやSNS、メールは距離をとる方が賢明です。夜間の書き込みは誤解を生じやすい表現や非論理的に感じる表現が出やすくなります。夜に書きこんだものは、翌朝に読みなおしてからアップした方がよいでしょう。
○SNSにあふれる感情とうまく付き合うコツ

SNS鬱という言葉があります。アップされている写真をみると、落ち込んでしまう現象です。自分は、変化のない生活をしているのに旅行に行ったり、食事に行ったり、友人と会ったりしている場面をみると、不安感や怒りや嫉妬心にとらわれてしまうのです。

自分は、誘われていないんだ、という落ち込みもあるかもしれません。ネット上の写真ではでは、笑顔でうつっていても、実際は案外義理で参加して楽しまなかったかもしれないのです。ネット上の写真も、あくまでも一方向性のものです。アップされた写真を見ることによって様々な感情がわいてくる場合はSNSを見る機会を減らすことが好ましいともいえるかもしれません。

新型コロナウィルスの流行に伴い、外出したり、人と会うことが楽しみだった人は、ストレスフルな生活を余儀なくされています。女性は『共感脳』男性は『解決脳』といわれており、この観点から見ると、一般的に男性は単独で行動して解決できる傾向があるため、自粛生活が比較的苦にならないかもしれません。

一方、女性や子供の方が対人交流やスキンシップによろこびを見いだす傾向があります。幸せホルモンと言われているオキシトシンは、スキンシップをしないと、女性や子供で低下しやすいのです。ちょっとした握手やスキンシップでもオキシトシンの分泌は増大します。自粛生活ではそれらが減少するため、特に女性や子供の方が男性よりもメンタルな状態が不安定になりやすいといえるので、SNSとのつき合い方に慎重になることをおすすめします。

精神科医 : 伊藤拓 いとう たく 精神科医。1964年、東京都西東京市出身。東京大学理科二類(薬学部)卒業後に医師を目指し、横浜市立大学医学部医学科に再入学。卒業後に内科研修を1年履修した後、精神科に興味を抱き、東京都立松沢病院で2年間研修する。1993年に医師免許、1998年に精神保健指定免許を取得。現在、大内病院副院長。 精神科医としてこれまでの26年間でのべ5万人以上を診ている。統合失調症、気分障害(躁うつ)、軽症うつ病の分野で高い評価を得ている。近著に『精神科医が教える 後悔しない怒り方』(ダイヤモンド社)がある。 この著者の記事一覧はこちら

伊藤拓

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