「ずっとロシアを撮ってきたけど『まさか』と」「いつもは怖いと感じないが、今回は...」不肖宮嶋61歳、なぜそれでも戦争を撮りに行くのか

「ずっとロシアを撮ってきたけど『まさか』と」「いつもは怖いと感じないが、今回は...」不肖宮嶋61歳、なぜそれでも戦争を撮りに行くのか

  • 文春オンライン
  • 更新日:2022/06/23

数々のスクープ写真で知られる報道カメラマンの宮嶋茂樹氏(61)こと不肖・宮嶋は、日本メディアのほとんどが現地入りを躊躇していた3月にウクライナ入りし、4月17日に出国するまで各地で取材を続けた。

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5月中旬、不肖・宮嶋は再びウクライナへ。なぜ戦争のない国のカメラマンが戦争を撮りにいくのか。岡村靖幸氏が聞いた。

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「反戦運動や反核運動も一緒じゃないか」

岡村 コソボ、イラク、アフガニスタン、さまざまな戦場を取材され、いまはウクライナにも行かれている。実際、どうなんですか? 戦地って、恐怖感はないんですか? 最初は怖かったとかは?

宮嶋 初めての経験は、ルーマニア革命(89年)だったんですが、恐怖感はなかったんです。この頃はまだ、自分らの先輩にベトナム帰りの人が多かったので、ことあるごとにベトナムの話を聞かされて。ジャングルで虫食った、みたいな話を。ま、自慢ですよね。たまたま早く生まれただけじゃねぇか! っていう(笑)。

そういうこともあったので、「これでオレも国に帰ったら自慢できる」っていう下世話な気持ちでした、正直言って。この戦争がどうのというより、初体験済ましたる! という妙な高揚感があって。

岡村 でも、自分の国では戦争体験が「ない」わけじゃないですか。「ない」人間が、他国へ行き、殺し合いの現場を見るわけですよね。

宮嶋 それはもうその通りで、現在のウクライナ戦争もそうですが、自分が取材に行き、写真を撮るのは、不謹慎極まりないものだと思っています。人の不幸で飯を食ってる、という指摘は否定しません。ただ、行って撮った以上は、発表したい。せめて自分が平和な国から来た以上、この平和の国で発表したいという思いがあって。

岡村 複雑な気持ちを抱えつつ。

宮嶋 実は、それをどうクリアするのか、が悩むところ。そこで心が折れ、カメラを手放した人も結構いるんです。ただ、僕は、反戦運動や反核運動も一緒じゃないかと。つまり、戦争のない国のカメラマンが戦争を撮ってなにがわかる、というのは、戦争のない国で反戦運動してどうする、核のない国で反核運動をやってどうする、というのと同じだと。

だから、なおさら、行った以上は発表する。それがせめてもの償いだと。そう自分で納得してやっているんです。

学生時代からロシアを撮り続けたけど、「まさか」と

岡村 宮嶋さんは、ロシアについては昔から関心があったそうで。

宮嶋 学生時代から行ってました。最初は、大学に入ってすぐの頃。当時はまだソ連。アメリカの雑誌『LIFE』に、反戦メッセージを書いたプラカードを掲げた老婆が、はがい締めにされて連れていかれる写真があったんです。それ見て、「あ、この国を撮りたい」と思って行き始めたのが最初です。

岡村 ゴルバチョフの前?

宮嶋 ブレジネフの時代です。そのときは、結構、開けっぴろげだったんですよ。要は、北朝鮮や中国と違って、同じ共産主義でも、売春婦がいる、物乞いの人がいる、暴走族がいる、闇ドル買いの兄ちゃんもいる。「あ、これって全然知られてないじゃん」と。で、2年目からは本格的に撮りはじめて。

岡村 いまのロシアは、さもありなんですか? まさかですか?

宮嶋 もちろん、「まさか」のほうが強いです。ただ、やっぱり、年配の人は圧倒的にプーチンファンが多い。いま、もし選挙をやったなら、有力な対抗馬がいないというのもありますが、やっぱりみんな投票しちゃうと思うんです。ただ、サイレント・マジョリティはいっぱいいる。特に若い連中は。でも、黙っていますよね。

岡村 しかし、いまのロシアって、彼らの言い分があるにせよ、到底正当化できるものではなく。子どもがいようが、学校だろうが、病院だろうが爆弾を落とす。どこでどんな目に遭ってもおかしくない、そういった恐怖感はないですか?

宮嶋 私の場合、鈍感で楽観的で、あまり怖いと思うことはないんです。でも、さすがに今回は。ウクライナでは、防弾チョッキに「PRESS」という名札をつけるんですが、一緒についていくウクライナ軍の人は「名札を外してくれ」と。むしろ、それが目立って標的にされる。向こうはそういったことをまったく関係なく撃ってくるので無駄だと。

今まで経験した戦地は、バグダッドにしてもコソボにしても、やって来るのはNATO軍や米軍。侵略軍を迎える現場は今回が初めてなんです。米軍が来るなら取材もできるし、その後は米軍についていくこともできるけど、ロシア軍が来たら外に出られないどころか、捕まるんじゃないか、捕まったらどうなるのか。何をされるかわからない。

岡村 いままでのルールじゃない。

宮嶋 その恐怖はすごくあります。あと、ロシアが劣勢になれば戦術核を使うんじゃないかとかね。人命を軽んじる国なので本当に怖い。

宮嶋さんの妻(ロシア人)の反応は……

岡村 宮嶋さんの奥さんはロシア人で、奥さんのお母さんがウクライナの方だと聞きました。今回のことはどんなふうに言ってます?

宮嶋 家内はもうずっと日本で暮らしていて、ロシア在住のロシア人とは別の感覚なんですが、それでも以前は信じてました、プーチンのことを。「まさか、あのプーチンが」と。彼女だって、20代の頃は「プーチンのファンだ」と平気で言ってましたし。

岡村 プーチンって、ロシアでは女性にモテるタイプですか?

宮嶋 モテますねえ。まず、酒を飲まない、たばこを吸わない。それだけでもう、ロシアの女性は、「あら、この人真面目ね」と思っちゃう。ただ、インターネットのニュースを見れば、いくらロシア人でも善悪の区別はつく。今のロシアのサイレント・マジョリティは恐らく知ってるはずです。

※続きは発売中の「週刊文春WOMAN vol.14(2022年 夏号)」にて掲載。山口組田岡組長宅を撮影しに行った高校時代から、伝説の右翼活動家・赤尾敏、政治家ハマコーとの出会い、東京拘置所のオウム麻原スクープの撮影秘話、「徴兵制」を巡る2人の議論まで!

みやじましげき/1961年兵庫県生まれ。報道カメラマン。84年日大藝術学部写真学科卒業後、『フライデー』専属カメラマンに。87年にフリーランスとなった後は『週刊文春』を拠点に活躍。渡り歩いた国は推定70カ国、フィルムに収めた国内犯罪者は1000人以上、死刑囚だけで2桁。イラク、コソボなど戦場取材の経験も豊富。

おかむらやすゆき/1965年兵庫県生まれ。音楽家。86年デビュー。作詞・作曲・編曲&プロデュースを手がけたアイナ・ジ・エンドの「私の真心」が発売中。6月20日からは「岡村靖幸 2022 EARLY SUMMERツアー 美貌の彼方」がスタート。

text:Izumi Karashima
photographs:Takuya Sugiyama
hair & make-up:Harumi Masuda(Okamura)

(「週刊文春WOMAN」編集部/週刊文春WOMAN 2022夏号)

「週刊文春WOMAN」編集部

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