コロナ禍でも活躍 AI通訳機「ポケトーク」の意外な使われ方

コロナ禍でも活躍 AI通訳機「ポケトーク」の意外な使われ方

  • Forbes JAPAN
  • 更新日:2020/11/23
No image

「いまはポケトークを接客に使う機会はめっきり減りましたね」

こう語るのは、コロナ禍前には、多くの外国人が買い物のために訪れていた東京・上野のディスカウントストア「多慶屋」の従業員だ。

日本政府観光局の発表によれば、10月の訪日外客数は前年同月比98.9%減の2万7400人。冒頭のディスカウントストアでは、2018年11月からAI通訳機の「ポケトーク(Poketalk)」を導入、外国人客の接客に積極的に活用してきたが、新型コロナウイルス感染拡大の影響で、インバウンドが激減。外国人旅行客の姿も、店ではまったく見られなくなり、ポケトークの出番もなくなっていた。

そんな逆風のなかで、ポケトークの累計出荷台数が80万台を突破(11月5日現在)、売れ行きを伸ばしているという。日本を訪れる外国人だけでなく、海外に出かける日本人も激減するなかで、なぜAI通訳機に需要があるのか。その裏には、コロナ禍で増加した意外な使われ方があった。

マスクでコミュニケーションが困難に

ポケトークは、日本のソースネクストが開発して、2017年12月から市販している通訳機だ。日本語、英語、中国語など世界74もの言語に対応しており、外国人とのコミュニケーションに便利なスグレものだ。

実は、いま「コミュニケーションの壁」を深刻に感じている人は、日本にやってくる外国人たちや、海外に出かける日本人たちだけではない。日本には約1430万人もの難聴に苦しむ人々がいると言われているが、コロナ禍によりマスク着用が日常化しているなかで、いままでより大きな不便を感じているのだ。

全日本難聴者・中途失聴者団体連合会の「新型コロナウイルスに関する声明」によれば、聴覚障害者の多くは、人の表情や口元の動きを見ながらコミュニケーションを図っているため、相手の表情や口元が見えないマスクの着用は高いハードルになるという。

またソースネクストが、病院で難聴と診断された1000名を対象に行なった調査でも、8割以上が「マスク着用の日常化で会話がしづらくなった」と回答している。

そんななかで、ポケトークの意外な機能が、難聴者のコミュニケーション補助に役立っているという。本来は異言語への通訳機であるポケトークだが、設定を「日本語から日本語へ」にすることで、筆談と同じような用途として使用することができるというのだ。

このような使い方をしている人たちは、ポケトークのユーザー全体の1.5%にあたる約1万2000人もいるという。ユーザーの1人は次のように語る。

「2年くらい前から急速に高度難聴になってしまい、会話は筆記に頼っていましたが、ポケトークが予想以上に便利だったので、とても助かっています」

ソースネクストはこうしたユーザーの声をきっかけに、筆談用途に特化した「ポケトークmimi」と「タブレットmimi」を新たに開発。 話した内容を瞬時にテキストで表示することで、耳の遠い人との会話をサポートしてくれる。言わば「AIボイス筆談機」というようなものだ。

ポケトークの技術を活かしたこの筆談機の強みは、その音声の認識精度だという。「筆談をするだけならスマートフォンのアプリで間に合うのではないか」と思う人がいるかもしれないが、通話用途を前提としたスマホのマイクでは、十分な認識精度が担保できないのが現状だ。

それに対して、翻訳の精度を高めるために音声の聞き取り能力に力を入れてきた「ポケトーク」の新シリーズには、スマホよりも高性能なマイクが搭載されている。マスク越しのコミュニケーションであっても、十分な認識精度を誇るため、コロナ禍でもストレスなく使用できるという。

母親とのやりとりから開発が進む

また使い方が極めて簡単で、スマホが苦手な高齢者の方でも安心して利用できる。ソースネクストの松田憲幸社長は、開発の手助けとなったのは、自分の母親とのやりとりだった言う。

「私の母親が難聴を患っているもので、マスクをしている人とのコミュニケーションが困難だということは前から認識していました。実は、今回の新製品は、半年以上前から母親に実際に使ってもらいながら開発してきました。81歳になる母親が、実際に毎日継続的に使用しているのを身近に見てきたので、この商品は、難聴で悩む多くの人の役に立つだろうと自信を持っています」

難聴の人たちにとっては、外出先などでコミュニケーションに困難が感じられる場合に筆談が有効だが、筆談ボードの設置がない店舗も多く、不便も多い。このAI筆談機なら、電源を入れて本体に向かって話すだけで、音声を自動的に文字へと変換してくれるため、電子機器の操作が苦手な高齢者でも、簡単に使うことができる。

コロナ禍が生んだポケトークの意外な使われ方。「捨てる神あれば、拾う神あり」ということわざが頭に浮かんだ。

この記事をお届けした
グノシーの最新ニュース情報を、

でも最新ニュース情報をお届けしています。

外部リンク

  • このエントリーをはてなブックマークに追加