米コロナ感染者の2割に後遺症 新ワクチンが予防に役立つ可能性

米コロナ感染者の2割に後遺症 新ワクチンが予防に役立つ可能性

  • Forbes JAPAN
  • 更新日:2023/09/18

米国ではこのところ、新型コロナウイルスへの感染が再び増加している。米疾病対策センター(CDC)によると、新型コロナ関連の死者は9月第1週に10.5%増加した。より感染力が強く、人々がすでに取得している免疫を回避できる新しい変異株が広まることで、感染者や入院患者、死者の数は秋から冬にかけてさらに増加する恐れがある。

しかし先週には、ファイザーとモデルナが開発した新型コロナワクチンの更新版が米食品医薬品局(FDA)の承認を得ており、これが感染拡大のみならず、後遺症を含む深刻な合併症を防ぐのに役立つ見込みだ。CDCの最近の発表によると、米国で新型コロナに感染した成人のうち、ほぼ5人に1人(19%)が今も後遺症に悩まされていると推定されている。

後遺症は時に深刻な影響をもたらす問題であり、更新版ワクチンの接種を受けるべき理由となる。以前は健康で活動的だったのに、新型コロナの後遺症で重度の疲労が続き、散歩にも行けず、子どもの世話もできないことを想像してみて欲しい。あるいは、記憶力や集中力が低下する「ブレインフォグ(脳の霧)」が何カ月も続き、仕事ができない状態に陥ることもある。こうした症状に悩まされている人は米国で1500万人、世界では6500万人に上ると推定される。

更新版ワクチンは何が違うのか?

米国では2023年5月時点で、人口の81.4%が新型コロナワクチンの接種を少なくとも1回受けている。しかし、新たな変異株が出現し続けているため、当面は更新版ワクチンを毎年接種する必要がある可能性が明らかになっている。これは、インフルエンザや新型コロナのようなRNAウイルスでは珍しいことではない。RNAウイルスは、変異して人々の免疫を回避することが知られている。

昨秋のブースター接種(追加接種)用ワクチンは新型コロナのオリジナル株とオミクロン系の変異株BA.4/5の両方を標的とする2価ワクチンだったのに対し、最新のワクチンは1価、つまり単一の変異体(オミクロン株のXBB.1.5系統)に対応している。昨年のブースターで対応していた株と比較して、最近のオミクロン株の亜系統には変異が多数存在するため、今回の更新が必要となった。これは、ウイルスが新たな変装をしたようなもので、以前の株を見つけて破壊するために体が産生した抗体では認識できなくなっているのだ。

米国ではこの夏、更新版ワクチンが対応しているXBB.1.5が、すでに「EG.5」(通称エリス)「XBB.1.16」(アークトゥルス)「BA.2.86」(ピロラ)などの他のオミクロン株亜系統に置き換わったが、最近の研究データでは、更新版ワクチンが現在主流となっている変異株に対しても、より強い免疫反応を引き起こすことが示されている。

なぜ更新版ワクチンを接種すべきなのか?

新型コロナワクチンは、重症化率、入院率、致死率を大幅に減少させることに成功している。しかし、新型コロナ流行の開始から3年半が経過し、体が一度得た免疫は長持ちしないことがわかっている。体が新しい変異株に対応する抗体を産生するためには、免疫の定期的な更新が必要なのだ。

多くの人は、過去の感染やワクチン接種によって得られた免疫が重症化や死亡の予防に役立っているが、一方で65歳以上の高齢者や免疫不全の人など、高リスクのグループは今も存在する。更新版ワクチンにより、自らが感染したり、他人にウイルスをうつしたりする可能性を減らせる。

さらに、新しいデータでは、ワクチン接種が後遺症の発症リスクの低下と関連していることが示唆されている。後遺症は、年齢や免疫不全の有無にかかわらず、すべての人が発症する可能性がある。

コロナ後遺症とは?

新型コロナ後遺症は「ロングコビッド」とも呼ばれ、感染した人なら誰でも発症する可能性がある。重症化した人、ワクチン未接種の人、複数回感染した人は、後遺症のリスクが高くなる。後遺症の一般的な定義は感染から4週間以上症状が持続することとされるが、症状は数カ月あるいは数年続くこともある。

後遺症の症状はさまざまだが、一般的なものとして、重度の疲労、ブレインフォグ、発熱、息切れ、せきがある。日常生活への影響は大きく、米国では最大400万人が新型コロナ後遺症により失業中とみられている。残念ながら、後遺症に特化した検査法や治療法は今のところない。唯一の予防法は感染しないことであり、そのためには更新版ワクチンの接種が重要となる。

CDCは、生後6カ月以上のすべての人に更新版ワクチンの接種を推奨している。副反応は過去のワクチンと同様に軽く、注射部位の痛み、体の痛み、発熱などが生じる可能性がある。ワクチンは安全かつ有効であることが示されており、毎年のインフルエンザ予防接種と同時に受けることができる。

forbes.com 原文

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