アート・バーゼルからLV Dreamまで。現代アートの手ほどき。

アート・バーゼルからLV Dreamまで。現代アートの手ほどき。

  • SPUR
  • 更新日:2022/11/25

アーティストにキャンバスや石膏の代わりにモードのアイテムを提供すると、どうなるか? インスパイアし合うアートとモードの相互関係が見える展覧会、LV Dreamがパリで幕を開けました(一般公開は12月12日から、要予約)。

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LV Dreamの展示より。右:ダミアン・ハーストによるメディカル・キャビネ(2009)、左:エピ・レザーを使ったボブ・ウィルソンのワードローブ・トランク(2001) 上:キム・ジョーンズとフラグメント・デザインのコラボレーションは、モノグラム・エクリプス・フラッシュ・キャンバスを使ったギター・ケース(2017-2018秋冬コレクション)。Photo : Minako Norimatsu

メゾンの長年に渡るアート・コラボレーションを集大成したこのプロジェクトが暗示されたのは、10月半ばに4日間に渡って開かれたフェア、パリ+ パー・アート バーセル(Paris + par Art Basel)にて。会場、グランパレ・エフェメールの入口に設置されたのが、同フェアのパートナーでもあるルイ・ヴィトンのブースでした。この機会に過去のコラボレーションアイテムの抜粋とともにお目見えしたのは、さまざまなジャンルからのアーティストを招いてカスタマイズされた「カプシーヌ」バッグの一連「Artycapucines」や、来年1月に発表されるカプセル・コレクションでコラボレーションした草間彌生の蝋人形などなど。

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パリ+ パー・アート バーセルのルイ・ヴィトンのスタンドにて。モノグラム・キャンバスを使ったカメラ・メッセンジャー・バッグとスタジオ・イン・ナ・トランクはシンディ・シャーマンの作(2014)。 Photo : Minako Norimatsu

ちなみにパリ+ パー・アート バーセルは、これまで数年間恒例のアート・フェアとして毎年秋に開かれていたFiacに代わり、スイス・バーセルを発祥とする 一大アート・フェアのパリ版として、スタート。第一回目の今年は広大な会場に新進から大御所まで150余りのギャラリーを集め、述べ4万人ものビジターを迎えました。ここには見るべきすべてのギャラリーが参加しているので、気になるアーティストの代表作を改めて見たり最新作を見つけたり、また新進アーティストの発掘をする機会。またメイン会場以外でも、チュイルリー公園をはじめとする4箇所に期間限定でサイトスペシフィック・アートが配されました。しかし広大なフェアでは、何をどう見たらいいいのやら、迷う方も多いでしょう。ルイ・ヴィトンのおかげでアート心が刺激された今週は、パリ+ パー・アート バーセルを振り返り、そのハイライトと効果的な見方をご紹介しましょう。

ルイ・ヴィトンと並んで現代アートに造詣が深いのは、ディオール。2020年 3月、ディオールのウィメンズ・プレタポルテのショーで会場を飾ったのは、クレール・フォンテーヌ(Claire Fontaine)によるネオンの光で綴ったマントラの一連でした。今回フェアでも、彼女の作品を再発見。社会へのメッセージや警告をストレートに、時には皮肉を込めて掲げる言葉には、多くのビジターたちがカメラをむけていました。

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Claire Fontaineによる Untitled (Someone is getting rich) 2012 : Galerie Neu(ベルリン)Photo : Minako Norimatsu

そして友人からのすすめで、アーティストとしてのマルタン・マルジェラを抱えるべルギーのゼノックス・ギャラリー(Zeno X Gallery)を目指します。思えば、自身の名を冠したブランド(現メゾン マルジェラ)を後にし、アート界に転身した彼の作品の一連が初めて個展としてまとめられたのはちょうど1年前、パリの現代美術館ラファイエット・アンティシペーションにて。彼のモードにおける代表作を思わせるウィッグのオブジェや、独特のウィットがきいたインスタレーションの数々とともに展示された作品Kitは、体のパーツを子供用のおもちゃキットのようにフレームにはめ込んだ作品です。個展を見たときの胸の高鳴りを思い出しました。

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Martin Margiela によるKit (black) 2020 : Zeno X Gallery(アントワープ)Photo : Minako Norimatsu

フェアでは一度見た作品を異なる環境で見られるのも、楽しみの一つです。アルバニア共和国出身のビジュアル・アーティスト、アンリ・サラ(Anri Sala)が古い生物図録と手描きの簡易地図を並列した作品は、ブルス・ドゥ・コメルス/ピノー・コレクションでこの秋に始まった彼の個展で見たばかり。

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Anri Salaによる無題 (Nile river/ Long Snouted Langaya) 2022。左のデッサンは紙にインクとパステル、右はヴィンテージの銅版。Galerie Esther Schipper(ベルリン) Photo : Minako Norimatsu

ちなみにブルス・ドゥ・コメルスは歴史的建造物を安藤忠雄が改築、昨年春パリ中心地にオープンした現代アート美術館です。同館の大アトリウムに設置された湾曲した巨大スクリーンや映写室の画面では、見る者を別世界へと誘うサラのビデオ作品を投影。

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無重力の宇宙にレコードが浮遊する様を投影したAnri SalaのビデオTime No Longer 2021。彼の個展はブルス・ドゥ・コメルス にて'23年1月16日まで。Photo : Minako Norimatsu

また彼の展示に目を止めたおかげで、このギャラリー・エスター・シッパー(Esther Schipper)では、アン・ヴェロニカ・ヤンセンス(Anne Veronica Janssens) を知ることができました。型版ガラスにPVCフィルムを貼った作品が、なんとも幻想的な光を発していたのです。

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Anne Veronica JanssensによるFrisson bleu, Frisson rose 2022:Galerie Esther Schipper (ベルリン)Photo : Minako Norimatsu

見覚えのある作品と合わせた展示によって、別のアーティストを発見する機会は他にもありました。取り憑かれたように世界各地の類似建築物を同じアングルでモノクロ写真に収める、ベルント&ヒラ・ベッヒャー。このデュオのタイポロジー・アートには、数年前からアートフェアや写真フェアで見かけるたびに見入っていました。今回もドイツの大手ギャラリー、シュプルース・マーガス(Sprüth Magers)のブースで彼らの写真に惹かれると、その下にはアルミニウムのオブジェが。早速キャプションを頼りにネットで調べてみると、ジョージアに1971年に生まれ、ベルリン在住のアーティスト、セア・ジョージャッツ(Thea Djordjadze)の作品だとか。インスタレーションを主とする彼女は、ある特定の場所の思い出を、廃物や工業用素材を利用して形にしています。

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Bernd & Hilla Becher によるGrain Elevator, Ohio 1987年と、Thea DjordjadzeによるAnblick der Aufmerksamkeit (視覚の喚起、の意)2019 : Sprüth Magers (ベルリン)Photo : Minako Norimatsu

そして知り合いが働くニューヨークの303ギャラリーのブースに立ち寄ってみると、またもや見覚えがあるオブジェに出合えました。ベルリン在住のポーランド人アーティスト、アリシア・クヴァーデによるオブジェは、昨年パリのギャラリー、カメル・ムヌール(Kamel Mennour)での個展で見たものでした。

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Alicja KwadeによるFormation 2021年(ブロンズと花崗岩、大理石)。背後の壁にはRodney Grahamの新作Untitled 2022(リネンに油彩と砂): 303 Gallery(ニューヨーク) Photo : Minako Norimatsu

ちょうどヴァンドーム広場に彼女が設置した、大理石を使った球体や階段から成る大掛かりなインスタレーションを見たばかりだったので、インパクト大。彼女は、時間や空間に関する錯覚を起こさせる概念的なアートで知られています。

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ヴァンドーム広場に設置されていた、Alicja Kwade によるAu cours des mondes © Photo. Archives Kamel Mennour

懇意にしているギャラリーが、もう一件ありました。パリのブランチをオープンした際に取材したことのある、マッシモ・デ・カルロ(Massimo De Carlo)です。ここで友人が見せてくれたのは、グラフィックな絵画を得意とするイタリアのカルラ・アッカルディ。プラダ財団で見たことがありましたが、改めて彼女の自由奔放な色使いに感激。

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Carla AccardiによるDue Verdi 2008 : Massimo De Carlo(ミラノ) Photo: Minako Norimatsu

また彼女の個展をパリ市内のル・コルビュジエのヴィラ、ラ・メゾン・ラ・ロッシュ(La Maison La Roche)で開催中だというので、この後行ってみたのでした。こんな風にアートは、自分のカンを頼りにしつつ、趣味をシェアできる人やギャラリーに耳を傾けると、自然と知識が高まっていきます。

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Carla AccardiによるDue Verdi 2008 : Massimo De Carlo(ミラノ) Photo: Minako Norimatsu

そしてフェアの参加ギャラリーではありませんが、グランパレ・エフェメールの回廊でハプニングをしたのは、ジョン・ジョルノ財団(John Giorno Foundation)。ジョルノは前世紀後半のニューヨークのアートシーンを語るには欠かせない、詩人&ビジュアル・アーティストです。1968年に彼がスタートしたDial a Poemはある番号に電話をするとポエムの朗読がきけるという、画期的なコンセプト。この秋、Dial a Poemはフランス語版(+33987675492)が始まりました。

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Dial a Poemのフランスでの電話番号を広めるための、ジョン・ジョルノ財団スタッフによるハプニング。Photo : Minako Norimatsu

最後にロンドンのメジャー・ギャラリー、セイディ・コールズ(Sadie Coles) をのぞくと大好きな肖像画家、エリザベス・ペイトン(Elizabeth Peyton)による新作、E.P.(Elvis)が見られました。エルヴィス・プレスリーと言えば、バズ・ラーマンによる監督による大掛かりな映画「エルヴィス」が今年公開されて話題になったばかり。一方ソフィア・コッポラは彼の妻、プリシラ・プレスリーの伝記的映画を準備中だそう。音楽はともかく、エルヴィスの人柄やワードローブについて、改めて調べてみたくなりました。

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Elizabeth Peyton による E.P. (Elvis) 2022 (紙にパステル)Sadie Coles (ロンドン)Photo : Minako Norimatsu

11月末には同フェアのアメリカ版、アート・バーゼル・マイアミ・ビーチが始まります。現地には行けなくても、まずはオンラインで楽しんでは。

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