世界的に活躍したヘアデザイナー加茂克也の約20年にわたるクリエイションが、ひとつの展覧会にまとまった。2023年3月21日(火)から4月2日(日)まで、「表参道ヒルズ」にて開催される。
90年代から数々のトップメゾンのランウェイでヘアを手がけてきた加茂克也。2020年に没した彼が生前企画・構想していた展覧会が、本展『KAMO HEAD -加茂克也展 KATSUYA KAMO WORKS 1996-2020-』だ。
福岡で生まれ、90年に渡仏。帰国後に〈ジュンヤ ワタナベ〉や〈アンダーカバー〉などのコレクションに参加し、加茂はファッションにおけるヘアの存在意義を刷新した。
〈ジュンヤ ワタナベ〉では、いくつものスパイクをつけたヘッドピースでブランドのパンク精神に見事に呼応してみせた。〈アンダーカバー〉では「潜入」というコンセプトからマスクを製作したりもした。ヘアデザインは単なる「髪型」ではなく、もっと広く「イマジネーションを表現する場」となったのだ。とはいえ、加茂は作品を独走させることは決してなかった。加茂にとってヘアやヘッドピースは「服をSHOW UP (=引き立てる)する」ためのものであり続けた。

Courtesy of JUNYA WATANABE

UNDERCOVER 19/20AW Mens Collection

ANREALAGE 2019-20 A/W Collection
ANREALAGE 2019 S/S Collection

ANREALAGE 2019 S/S Collection

KIKO KOSTADINOV 19/20AW
Photo by Adam Katz Sinding
その唯一無二のクリエイションはやがて海外メゾンからも注目され、〈シャネル〉や〈フェンディ〉なども手がけることとなる。たとえば紙で作ったカメリアを頭に乗せるといった、斬新な手法と技術。そして何よりもブランドのエスプリを的確に表現する感性が、多くのデザイナーに愛された。

コレクションのために制作されたさまざまなヘッドピースが公開される。撮影:Yasutomo Ebisu

撮影:Yasutomo Ebisu

撮影:Yasutomo Ebisu
本展では、これら国内外のコレクションで使われたヘッドピースが約200点集められる。それ以外に、加茂がプライベートで制作していたアートを合わせて400点ほどの展示品が並ぶ。アトリエの再現スペースも設けられ、リアルな創作過程を追いかけることもできる。

会場には、モードを創ってきた200点ほどの作品が並ぶ。撮影:篠田英美

加茂のプライベートなアートピース。箱形の中に卵の殻や蝶の標本などを用いて製作していた。撮影:Takashi Homma

ヘアの作品と見比べて加茂の世界観をより深く探るのも面白い。撮影:Katsuhide Morimoto

いくつもの作品が生み出されたアトリエ風景。本展では、制作現場もの再現される。撮影:Yasutomo Ebisu

制作道具などを撮影したポラロイドブックも展示される。撮影:Takashi Homma

過去の作品を収録した作品集も販売される。『KAMO HEAD』¥12,100
類い稀なセンスと鍛え抜かれた指先が織り出したヘアデザインの世界を体感したい。
黒木許子