巨人のドラフト総括 1位指名、関西国際大・翁田大勢はありだったのか?

巨人のドラフト総括 1位指名、関西国際大・翁田大勢はありだったのか?

  • 文春オンライン
  • 更新日:2021/10/14

ドラフト会議が終わった。

毎年、有望なアマチュア選手を追う身としては、ドラフト会議が終わると虚脱感に襲われる。1年間見守り続けた逸材の晴れやかな門出に涙し、指名漏れに終わった選手の心中を思い胸が詰まる。「他人の人生」と言えばそれまでだ。それでも、「この選手が野球をもっと面白くしてくれるかもしれない」という勝手な願望をドラフト候補に乗せて、発信せずにはいられない。

右肩上がりの選手を多く指名できた巨人

巨人のドラフト会議の結果について、なんとも微妙な反応がネット上に飛んでいるようだ。

「今年もクジを外したか……」

「ドラフト1位が『野球太郎』の巻頭名鑑に載っていない」

「可もなく不可もなくというドラフト」

「今年も巨人とソフトバンクの育成チキンレースか……」

などなど。

なお、事前に私が巨人のオススメ選手として挙げた森木大智(高知高)、岡留英貴(亜細亜大)の2投手は、何の因果か阪神にドラフト指名(森木が1位、岡留が5位)されている。

ここで、巨人の支配下でドラフト指名された顔ぶれをおさらいしておこう。

× 隅田知一郎(西日本工業大/投手)
1位 翁田大勢(関西国際大/投手)
2位 山田龍聖(JR東日本/投手)
3位 赤星優志(日本大/投手)
4位 石田隼都(東海大相模高/投手)
5位 岡田悠希(法政大/外野手)
6位 代木大和(明徳義塾高/投手)
7位 花田侑樹(広島新庄高/投手)

巨人のドラフトを総括するなら、「右肩上がりの選手を多く指名できた」という一言に尽きる。具体的に振り返っていこう。

即戦力左腕の最右翼だった隅田には4球団の指名が集中し、西武が交渉権を獲得。巨人が1位入札のくじを外したのはこれで6年連続、11連敗。だが、前にも書いたようにその年の目玉から逃げなかった証でもあり、むしろ誇るべきだろう。来年以降も「これは」と思うドラフトの目玉に攻めてほしい。

とはいえ、外れ1位として翁田(関西国際大)を指名した点については、「ずいぶん攻めたな!」と驚かずにはいられなかった。

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巨人ドラフト1位指名 関西国際大・翁田大勢

翁田についてSNS上では「『野球太郎』の選手名鑑にも載っていない」という野球ファンの感想が散見された。『野球太郎』とはドラフト情報に強い野球専門誌で、私もスタッフに名を連ねている。だが、翁田が巻頭カラーの有望選手名鑑(108名掲載)に載っていないのも当然である。

翁田は大学2年時より阪神大学野球リーグを代表する速球派スリークオーターとして名前は知られていたが、3年以降はほとんどマウンドに立っていなかった。3年時はコロナ禍による春季リーグ戦中止と、翁田自身の右ヒジ痛で登板機会なし。4年春も右ヒジ疲労骨折の影響で、登板はわずか1試合のみ。それも1アウトも奪えず、4失点という散々な内容だった。この時点で翁田はドラフト戦線から脱落したと見られた。

また、関西国際大の所属する阪神大学野球連盟は感染症対策のため、緊急事態宣言中の公式戦でスカウトの入場を認めていなかった。つまり、翁田のアピールの場はオープン戦に限定され、緊急事態宣言が解除された後は10月4日の大阪体育大戦の1試合だけ。なお、唯一の公式戦でのお披露目の場となった大阪体育大戦には12球団40人を超えるスカウトが翁田の視察に訪れている。

結果的に秋の急激なアピールが実ってドラフト上位候補に浮上したものの、9月に発売される野球専門誌では翁田の掲載が間に合わなかったのだ。

巨人スカウト陣は、翁田を2021年ドラフト候補の右投手のなかで一番の評価をしていたという。サイドハンドに近い角度から最速157キロをマーク。右打者のインコースにシュートしながら食い込む力強いボールは、プロの強打者をも苦しめそうだ。

翁田と球団の間で食い違う「適性」の認識

とはいえ、気になる部分もある。ドラフト1位指名直後の記者会見で、原辰徳監督の口から「先発完投」「ジャイアンツのエース」といったフレーズが飛び出した。球団サイドとしては先発型として翁田を評価していることがうかがえるが、翁田自身は「リリーフ向きだと思う」と真逆の考えを示しているのだ。

チーム事情としては、翁田がブルペン陣に加わってくれたら大きな戦力アップになる。今季は矢継ぎ早にリリーフを投入する「マシンガン継投」の影響か、中継ぎ陣に疲労が目立ち盤石とは言えなかった。そこへ独特の角度から腕が出てくる翁田の個性が加われば、相手チームにとって脅威になる。

また、「巨人のドライチ」というプレッシャーも内なる敵になる。2017年にドラフト1位で鍬原拓也を指名した際も、私はコラムで「本来は2位で指名したかった」と書いている。熱狂的なファンが多く、メディアにも大きく扱われる巨人で、ドラフト1位ルーキーに求められるハードルは必然的に高くなる。並みのメンタリティーでは、重圧に潰されてしまいかねない。

右肩上がりでドラフト指名にこぎつけたとはいえ、翁田が残した実績は乏しい。ファンはいきなり結果を求めすぎず、長い目で見守りたいところだ。

ドラ5の岡田は大化けの可能性も

支配下で指名した7人中6人が投手。原監督は上位3投手について、「先発ローテーションを目指して十分戦える3人」とコメントしている。だが、2位の山田(JR東日本)も翁田と同様に今秋にかけて急激に力を伸ばしてきたタイプで、即戦力らしい確固たる実績はない。むしろ3位の赤星(日本大)は実戦型だけに、1年目から結果を求めていきたいところだ。

かといって、山田が期待薄かと言えばまったく違う。外れ1位でもおかしくない潜在能力の持ち主であり、「よく2位で残っていた」という逸材である。JR東日本に入社して3年目の夏まで、実績は皆無と言ってよかった。だが、今秋の都市対抗予選ではエース格となり、1戦投げるたびに急激な成長を見せていった。

スイッチが入ると「オ~ラァー!」と雄叫びを挙げ、最速153キロのストレートがうなりをあげる。ドラフト当日にも大事な公式戦を戦い、延長18回まで9イニングにまたがる超ロングリリーフ。翌日も好リリーフでチームを都市対抗へと導いた。21歳という若さも大きな魅力だ。

まだ力任せな部分もあり、球筋は荒れ気味。それでも、いずれは先発ローテーションの一角を占めてもらいたい左腕である。

下位指名で推したいのは、5位の岡田(法政大)だ。長打力が注目される打者だが、プロですぐ存在感を発揮するのは強肩かもしれない。エネルギッシュな腕の振りから放たれる、低くて伸びるスローイングは圧巻。そこへ打撃の技術がついてくれば、とてつもない選手に化けるかもしれない。

育成ドラフト会議ではソフトバンクの14選手に次ぐ、10選手を指名。快足を武器にする育成1位の鈴木大和(北海学園大)や身長195センチの大型左腕・鴨打瑛二(創成館)など、一芸に秀でた選手やスケールの大きな選手を多数指名している。

近年のドラフト会議でも着実に好素材を確保できているだけに、今後も3軍制の利を生かしたチーム運営を期待したい。

巨人に指名された17人の選手は、まだスタートラインに立ったに過ぎない。プロに進んだ大半の選手が、志半ばで球界を去るという現実もある。

それでも、野球ファンは夢を見る。彼らが厳しい世界で一回りも二回りも大きくなり、今まで以上に面白い野球を見せてくれることを。

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(菊地選手)

菊地選手

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