韓国の「水かけフェス」がタイで超盛り上がる背景

韓国の「水かけフェス」がタイで超盛り上がる背景

  • 東洋経済オンライン
  • 更新日:2023/05/26
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タイでも人気の韓国アイドルSUNMIも参加した(写真提供:WATERBOMB JAPAN)

アジアのエンターテインメントシーンにおいて、いま熱い注目を集めているのがタイだ。コロナ禍の日本でBL系ドラマ『2gether』が女性層を中心に熱い人気を得ていたように、タイのエンタメ市場は近年アジアで存在界を高めつつあるのだ。

音楽に関していえば、タイは日本と同様にK-POPが2000年代初めから進出していた。洋楽とならぶメインストリームの人気ジャンルとして確立されており、昨今では国際的に活躍するBLACKPINKのリサやNCTのテンなど、人気グループにタイ出身メンバーが多いことも同国のK-POP熱をより高めている。

タイに韓国水かけフェスが初上陸

そうしたなかで、人気K-POPアーティストやDJが集結する韓国の水かけフェス『WATERBOMB』がタイに初上陸した。韓国で2015年から続く本フェスは、K-POPアイドル、HIP HOP、EDM(エレクトロニック・ダンス・ミュージック)、ダンスミュージックなど幅広いジャンルのTOPアーティストが集結する夏の恒例イベントだ。

これまでは韓国国内の開催だったが、初のアジアツアーが行われることとなり、その第1弾としてK-POP人気の下地があるバンコク(タイ)が選ばれた。4月13日〜14日に開催され、若い世代の観客たちが、会場となったバンコク郊外のサンダードームスタジアムを埋め尽くした。

『WATERBOMB』の特徴は、ビル5階ほどの高さの巨大なウォータースライダーや、水鉄砲の水汲み用に蛇口が並ぶ給水スペースが会場内に設けられるほか、T字型のステージの観客側の各所にウォーターキャノン、ウォーターガンが設置されること。屋外のスタジアムが、クラブとプールが並ぶレジャーランドに早変わりしたようなイメージだ。

ちょうど本イベントが開催されたこの時期には、旧正月の祝日に水を撒いて幸運を祈る、伝統行事の「水かけ祭り」がタイ各地で実施されていた。タイ国民に親しまれているだけでなく、海外からも観光客が多く訪れる恒例の祭りになっており、近年はこの期間にあわせて水を演出に使う音楽イベントがいくつか開催されている。街中の至るところで「水かけ祭り」が行われる中で、本フェスもまるでその1つのようにタイに溶け込んでいた。

さて、会場でライブがはじまると、アーティストのパフォーマンスとともにウォーターキャノンが上空に向けて炸裂。ステージセットの高さを軽々と超える巨大な水柱がいくつも立ったかと思うと、それがシャワーとなってステージと客席に降り注ぐ。ステージは水幕に包まれて、舞い散る水滴や霧にレーザーや照明のカラフルな光が乱反射し、その数秒間だけステージは幻想的な世界に変わった。

アーティストも観客も水をかけあう

さらに、ステージからはアーティストやダンサーがウォーターガンを操って観客に向けて放水。カラフルな水鉄砲を抱える水着の観客たちもこれに応戦する。びしょ濡れになりながら、ステージ端に来たアーティストを狙い撃ちし、観客同士も水をかけあうなかで誰もが大興奮。楽しそうな歓声が会場中に響いていた。

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出演者も観客も水着で水かけファイトを楽しむ『WATERBOMB』(写真提供:WATERBOMB JAPAN)

今回のバンコク公演では、前半にタイのアイドルグループやDJが登場し、中盤からは韓国のアーティストたちが続々と登場。韓国アイドルのSUNMI(ソンミ)やGOT7のYUGYEOM(ユギョム)のほか、ヘッドライナーにはK-POPグループ・Block Bのリーダーを務め、ラッパー、音楽プロデューサーとしても活躍するZICO(ジコ)が会場を大いに盛り上げた。

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ヘッドライナーを務めたのはK-POPグループ・Block Bのリーダーを務め、ソロでHIP HOPアーティストとして活躍するZICO。会場を大いに沸かせた(写真提供:WATERBOMB JAPAN)

前述したように、こうしたタイでのK-POP人気の一翼を担っているのが、K-POPグループで活躍するタイ人メンバーたちだ。

今回のイベントにはK-POPグループ・GOT7のメンバーでタイ人のBamBam(ベンベン)が出演するなど、彼らのタイの音楽シーンにおける影響力の高さを感じられる。

その一方で、タイにはK-POPだけではなく、独自の音楽カルチャーもある。「K-POPだけでなく、HIP HOPシーンでもワールドワイドで活動中のMILLI(ミリ)や、韓国歌手ファン・ソユン(SE SO NEONのメンバー)との共作でも知られるタイのシンガーソングライター・Phum Viphurit(プム・ヴィプリット)など、人気、実力ともに申し分ないアーティストは多い。こういった事例は、タイ音楽の多様性と、レベルの高さを証明しています」(WATERBOMB KOREAの担当者)。タイの音楽カルチャーには、世界的にもさらに人気が高まるポテンシャルがありそうだ。

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アジアで人気急上昇中のタイのガールズグループ・4EVEも会場を盛り上げた(写真提供:WATERBOMB JAPAN)

本フェスはタイの次に『WATERBOMB JAPAN TOUR 2023』(7月に東名阪で計6日間開催)として日本に初上陸する。日本でもすでに『ULTRA JAPAN』など都市型ダンスミュージックフェスは夏のパリピイベントとして一定層の人気を得ている。また、K-POPはZ世代の女性層を中心に根強い支持を受ける人気ジャンルとして定着しているのは周知の通りだ。

日本では、タイのような水をかける祭りの風習は一般的な大きな行事としてはないものの、エンタメのほか、食やコスメなど生活雑貨も含めて幅広く韓国文化への人気が高いうえ、新しいもの好きの若い世代には韓国発の水かけフェスが受け入れられる可能性は高いと思われる。

フェス大国の日本でどう存在感を高めるか

とはいえ、すでに多くの夏フェスがひしめきあうフェス大国の日本において、特定ジャンルのコアファンを超えてより広い音楽ファン層を呼び込むためには、プラスアルファのフックが必要になるだろう。

タイで伝統文化との親和性から一般層への共感を生み出した成功経験を日本でどう生かすか。それは花火大会や盆踊りなどの夏祭り、浴衣や和装、かき氷やスイカ割りなど日本文化をステージに取り込むローカライズや、韓国と日本の人気アーティストの音楽ジャンルを超えたコラボ、K-POP以外のアジアの若手アーティストの招聘などになるかもしれない。

日本公演の全容発表はこれからだ。音楽とお酒を楽しみながら、全身に水を浴びて非日常を体感する本フェス。新たな日本の夏の定番イベントとして定着するか注目される。

(武井 保之:ライター)

武井 保之

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