「花見じゃないよ、新歓コンパ」 飲んでる人に「事情」を聞いてみた

「花見じゃないよ、新歓コンパ」 飲んでる人に「事情」を聞いてみた

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  • 更新日:2021/04/07
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※写真はイメージです (GettyImages)

都内の桜が満開だった3月下旬、テレビニュースでは酒を飲んで騒ぐ花見客の姿が連日のように報道された。しかし、実際に花見の名所を歩き回って出会えたのは、それぞれの「花見」をひっそりと楽しむ人たちばかり。そんな彼らが桜の下で語ってくれた人生模様とは──。

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花見といえば上野公園だろう。そう考え繰り出したのは3月30日。満開の桜は6割ほど、多くの桜は風に揺られて花びらを散らしている。それでも上野公園には「歩き花見」の人があふれていた。ドリンク片手に歩きながら桜を眺め、満開の桜の前で立ち止まってスマホやカメラで記念撮影というもの。酒を飲んでいる人はほぼゼロ。

やっと発見できたのは、桜の下でビール片手に立ち話しているサラリーマン風の男性5人組。「花見ですか?」と話しかけると、「会社終わりで、これから食事に行くところ。どうせなら回り道して歩き花見しようぜってことになったんです。コロナ中だし、本気の花見はお預けです」。

彼らは上野近くのIT企業の仕事仲間。リモートワークが続いていたが、この日は月1回の全体ミーティングで出社した。その勢いで桜を眺めに来たという。「飲み会も久しぶりですよ」と嬉しそうに言って、去っていった。

その後、清水観音堂の下のベンチに座り缶チューハイを飲む20代女子2人組を発見したが、「居酒屋に行ったら思いのほか混んでいて、怖くなってここに来た。でも歩いている人の視線が怖くて……桜の写真は撮ったし、これ飲んだら帰ります」という。お酒を飲むにも勇気がいるようだ。

その後も公園内を延々と歩き回ったが、宴会客は見つからない。上野では花見ルールが守られているようだと感じ始めていたとき──いたぞ、発見! 公園隅の桜の下のコンクリートの段差に座っているマスク姿の3人組が、間違いなくビールのロング缶を飲んでいる。突撃しよう!

「週刊朝日で花見客の取材をしてるんだけど……」と話しかけると、「やべぇ、見つかった」と顔を見合わせて大笑い。彼らは台東区に住む中学・高校で同級生だった仲良し3人組。進路はそれぞれだが、毎年集まって上野公園で花見をするという。

「去年も花見自粛だったけど、野球場の近くの階段でこっそり花見しました。でも今年はそこも立ち入り禁止。やっと見つけたのがここ。俺、飲食店だから、コロナになると店に迷惑かけちゃうので、こいつらにもマスク宴会してもらってる」という。禁を破って花見はしても、真面目な一面を見せる。

「酒飲んで騒ぐのが目的じゃなくて、毎年の3人花見会が継続できればそれでいい。特にこの1年は、なかなか会えなかったし。大目に見てください」と別の一人が言う。

結局この日、上野で発見できた花見酒客はこの3組だけ。テレビのニュースで批判されていたような花見宴会客はどこにもいなかった。

翌31日は外濠公園に行ってみた。市ケ谷から飯田橋の土手沿いを歩いたが、歩き花見客はいても酒を飲んでいる人はいない。唯一、シートを敷いて寝そべっていた中年男性2人に声をかけた。

「花見というか、暇つぶしだよ」という2人は、失業中。勤務先の飲食店がコロナでつぶれたので、ハローワークに寄った帰りにここに来たという。

「コンビニで酒買って飲もうと思って来たら、誰も飲んでないのよ。諦めたよ。どうせカネもないしね、ハハハ」

仕事ばかりか、花見までコロナに奪われて、笑い声も力がない。

郊外を狙って中野区の桜の名所・新井薬師公園まで足を延ばすと、すでに葉桜状態。花見客はいない。それなら近くの哲学堂公園へ。やはり桜は少ない。歩き花見客ばかりの中、たった1組、若いカップルがシートを敷いてお茶を飲んでいる。さっそく突撃。

女性は美容師で男性はその彼氏で学生。「今日は私が休みなのでお花見デートに来た」と彼女は言う。2人の出会いは彼女の勤める美容室に彼が客として行ったこと。付き合い始めて1年ちょっとで「交際期間のほとんどがコロナで外出自粛なの。互いの部屋で会ってばかりで、Go Toで熱海に1泊したのが唯一のデートらしいデート」と彼女。来年彼氏が卒業し、就職したら結婚する予定だ。お邪魔しました。

この後、ネットで花見宴会目撃情報があった恵比寿東公園(通称タコ公園)と友人情報の高円寺・蚕糸の森公園を見に行ったが、花見客はなし。

4月1日、ネットでも目撃談が多い多摩川べりへ。田園調布の多摩川台公園は子供連れのセレブ風の奥様ばかりで、宴会客は皆無。桜を求めて多摩川べりを彷徨(さまよ)っていたら、10人以上の男女混合大集団を発見。しかも音楽をかけて結構楽しそうに騒いでいる。

「お花見、楽しそうだね」と話しかけると、「花見じゃないよ、新歓コンパ」と面倒くさそうなお返事。入学式の新入生を狙って新人勧誘した後のサークル仲間の宴会らしい。「大人数なのでお店には入れないから、誰もいない河原に来ただけです」という。イベントサークルだという彼らの本日の勧誘成果はゼロ。「コロナのせいかな。俺たちのサークル、人気なかったよ」と代表格の男子が気落ちした声で言うと別の仲間が「だからやけ酒でーす」と楽しそうに笑った。

最後に向かったのは夜の代々木公園。ライトアップもなく真っ暗だが、遠目に何組か集まっているシルエットが見える。さっそくシートに座るカップルの話を……と近寄ったとたん、2人は濃厚接触し始めた。花見目的じゃなかったのだ。

のぞき犯に間違えられぬようカップルを迂回して、にぎやかな8人組に接近。缶ビールを積み上げ、たくさんのお菓子を広げている。同じ飲食店に勤務する仲間たちで、仕事終わりに外飲みしに来たと、すでに酔っ払い気味の一人が説明してくれた。

「花見だけど、桜はない(笑)。だから花見じゃない」などと、カラミ口調のその男性の頭をポカリと殴り、酔ってない女性が説明してくれた。

「毎年、店の常連さんも呼んで明るい時間から花見をしているのに、去年も今年も中止でね。花見奉行のこの人、欲求不満で荒れ気味なんです」

花見大好き日本人の“我慢”もかなり限界にきているのかも。(本誌・鈴木裕也)

※週刊朝日  2021年4月16日号

鈴木裕也

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