法律でもないのにずっと64馬力! 軽自動車のパワー「自主規制」が30年以上も撤廃されないワケ

法律でもないのにずっと64馬力! 軽自動車のパワー「自主規制」が30年以上も撤廃されないワケ

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  • 更新日:2022/08/06
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この記事をまとめると

■メーカーの自主規制によって、軽自動車のほとんどが64馬力(47kW)だ

■最近登場した軽EVも最高出力は47kW

■64馬力以上の軽自動車が積極的に開発されない理由について解説する

軽自動車の64馬力は業界による自主規制

軽自動車というのは、言うまでもなく日本独自のレギュレーションに基づいたコンパクトカーだ。その規格は全長3.40m、全幅1.48m、全高2.00mというボディサイズに収まっていることと、エンジンの総排気量は0.66リッター以下であることとなっている。

大昔に遡ると、定格出力が規定されていたこともあったが、出力そのものに制限はない。しかし軽自動車の最高出力は64馬力(47kW)が上限だと認識しているユーザーが多いはずだ。

最近、日産と三菱から登場した軽EVにしても最高出力は47kWとなっている。排気量制限を受けないEVも「64馬力規制」を守るくらいなのだから公的なレギュレーションと思いがちだが、じつはこの規制は業界による自主規制だ。

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事実、スズキの軽自動車用3気筒ターボエンジンを搭載したケータハム・セブン170の最高出力は85馬力となっている。ケータハムという尖ったブランドとはいえ、自動車メーカーとしての保証を考慮した上で、ここまで馬力を上げることができるというわけだ。

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つまり、軽自動車の(実質的には)ターボエンジンが軒並み64馬力なのは、技術的な限界ではなく、十分に余力を残したうえで自主規制によって抑えているに過ぎないのだ。

そんな最高出力に関する自主規制の歴史は古い。事実上、64馬力規制がはじまったのは1987年である。その年、スズキが初代アルトワークスを発売した。軽自動車として初めてDOHC(スズキはツインカムと表記していた)とターボチャージャーを組み合わせたエンジンの最高出力が64馬力だったことに端を発する。

1987年といえば、軽自動車の規格が、いまのレギュレーションからすると前の前といった時代。ボディサイズは全長3.20m、全幅1.40mであったし、エンジン排気量も0.55リッター以下だった。エンジン排気量が2割ほど少なかった時代の自主規制が、いまだに残っているというのは不思議というか、不自然ともいえる。

電動化が進む上で自主規制を積極的に見直す必要はないといえる

ちなみに、軽自動車の排気量が0.66リッター以下となったのは1990年のことで、その際にボディサイズが全長のみ3.30mへと伸ばされている。初代アルトワークスの誕生から、この規格改正までもう少し時間があれば64馬力規制を見直すという動きにもなり得たのかもしれない。

しかし、ただでさえ排気量アップによって軽自動車のメリットである優遇税制に対しての批判(増税)が盛り上がっていた時期に、最高出力の自主規制を撤廃しようというのは藪蛇になり兼ねない。業界的には無用な刺激を避けることもあって、排気量がアップしても最高出力の自主規制を続けたというのが本音だろう。

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結果として1998年の規格改正によってボディサイズを拡大した際にもエンジン排気量は手つかずであったし、排気量が変わらないのだから64馬力規制も維持された。それが電動化の進んだ現在まで続いているといったところだ。

もし自主規制を撤廃するチャンスがあるとすれば、軽自動車税が7200円から10800円に増税された2016年だったが、軽自動車の主役がスポーツモデルだった20世紀ならまだしも、後席スライドドアのスーパーハイトワゴンが主流の21世紀においては64馬力規制を撤廃するメリットは、さほどユーザーベネフィットとはならないだろうし、メーカーにもメリットは少ない。

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仮に64馬力規制がなくなったとすれば、いくら燃費性能が重視される時代だとしても、結果的にメーカー間では馬力競争をすることになるだろう。グローバルな商品開発が求められる時代に、シュリンク傾向にある日本市場専用モデルの開発に、きつい言い方をすれば無駄なリソースを割くのは軽自動車を開発している全メーカーが避けたいはずだ。

こうしたマインドは、軽自動車のエンジンは0.66リッター以下にするという規格を改正する必要性を感じないというメーカーのコンセンサスにもつながっているといえる。一部のモータージャーナリストなどは軽自動車の排気量を増やすことで、もっと熱効率のいいエンジンにできると主張しているが、電動化時代において軽自動車用のエンジンを新開発するというのも各メーカーとしては避けたいところだろう。

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日産、三菱の軽EVの登場に続くように、スズキとダイハツは軽商用EVを2023年度にローンチすることを発表したばかりだ。さらにホンダも2024年前半には100万円台の軽商用EVを発売するという計画を発表している。

このように軽自動車のフル電動化が進んでいくのが既定路線である限り、あえてエンジン排気量の拡大や64馬力の自主規制を積極的に見直す必要はないといえる。結果として64馬力規制はいつまでも残り続けるのではないだろうか。

山本晋也

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