「相続問題」から見えてくる、「選択的夫婦別姓」の必要性

「相続問題」から見えてくる、「選択的夫婦別姓」の必要性

  • 幻冬舎ゴールドオンライン
  • 更新日:2022/05/14
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現在の日本の法律では、婚姻した2人は同姓になることを義務づけられています。別姓を希望する場合「事実婚」を選択することになりますが、こと「相続」においては大きな障壁ともなり得ます。内閣府が公式発表している「家族の法制に関する世論調査」と併せて、「選択的夫婦別姓」について一緒に考えましょう。

世界で唯一、婚姻後の別姓が認められていない国、日本

婚姻後に同姓を名乗ることが義務付けられているのは、世界広しといえどもただ一つ、日本だけです。

かつて義務づけてられていた国々も、1990年代以降、続々と別姓の選択が可能となり、2005年には同じアジア圏であるタイも法改正に踏み切っています。同年、もともと別姓を名乗っていた韓国では、子どもが自ら両親どちらの姓を名乗るかを決められるという、さらに一歩進んだ法改正がなされています。

一方で、東南アジア圏のトルコは国民の大半がイスラム教徒です。女性は頭にヴェールをかけるなど、古くからの宗教的慣習が、現在にも色濃く残っているように見受けられます。ですが、2001年の法改正により婚姻後の別姓、複合姓が認められています。

日本でも、諸外国同様に「婚姻後の姓を選択可能にするべき」との議論が度々巻き起こりますが、いまだ法改正まで至っておりません。そのため別姓を希望する場合には、「事実婚」を選択することとなります。

「事実婚」は婚姻者が双方ともに元気でいる際には、特段の不便を感じないという声も聞かれます。ですがどちらかの死後、思いがけない障壁が浮上する場合があります。具体的にどのような問題が起こり得るか、確認しましょう。

パートナーの死後、持ち家に住めなくなる危険性も

「相続」の場面において、「事実婚」が思わぬ障壁となる場合があります。次のような例を見てみましょう。

仕事上の都合から「事実婚」を選択した2人がいます。パートナーが40代の若さで急逝し、パートナーの親は健在です。若くして急逝したため、遺言書を残しておらず、こどもをもたなかった場合に、「遺産相続」はどうなるでしょうか。

例えば、2人が家庭生活を送る住居として、共有名義でマンションを購入していたとします。頭金として同額の貯金を出し合い、各自でローンを組み、持分も半分づつです。ですが、戸籍上は赤の他人であるためパートナーの持ち分は相続することができません。この場合は、パートナーの親が相続することになります。

これまで住んでいた住居を、完全に所有することを希望する場合には、パートナーの親から「遺贈・贈与・売買」のいずれかの方法で譲り受ける必要があります。親と目的が共有されており友好的な間柄であれば「公正証書遺言」を作成してもらい、遺贈を受けるのが、最も負担が少ない方法といえます。

ですが、もしパートナーにきょうだいがいる場合、この遺贈に関して「遺留分」を請求される可能性が生じます。「遺留分」とは戸籍上、相続の権利をもつ法定相続人に、最低限保障される遺産取得分のことです。「遺留分」は遺言の内容よりも強い権利であるため、主張すれば必ず一定の財産を取得することができるのです。

経済的負担はかかるが、親から買い取るのがおすすめ

将来パートナーのきょうだいに「遺留分」を請求された場合、生活基盤である住居の半分を所有できなくなる可能性が生じます。そのリスクを摘み取るためにおすすめなのは、パートナーの親から買い取る方法です。

不動産の買い取りですから、数100万円~1,000万円以上の額になることもしばしばあります。とはいえ、将来年齢を重ねたあとに持ち家に住めなくなる可能性や、心理的負担などを考慮すると、最も安全かつ、快い策であることは否めません。

婚姻前の名字(姓)を通称として使えばよい!?

このような「相続」において生じる問題を見ると「選択的夫婦別姓」の必要性を感じずにはいられません。一方で、「選択的夫婦別姓」に反対する人のなかには、「仕事の上でのみ、婚姻前の姓を通称として使用すれば解決するのでは」という声も聞かれます。

この意見に関して、どのような意見をもっている人が多いのでしょうか。次の質問に対する回答が記された図表1をご覧ください。

「婚姻をして名字(姓)を変えても、仕事の上で不便を生じないようにするため、婚姻
前の名字(姓)を通称として使えばよいという考え方がありますが、あなたは、このよ
うな考え方について、どのように思いますか。次の中から1つだけお答えください。」

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図表1(内閣府政府広報室)

「仕事の上で通称を使うことができれば、不便を生じないで済むと思う 」と答えた人が、全体の57.7%。「仕事の上で通称を使うことができても、それだけでは、対処しきれない不便があると思う」と答えた人が、全体の41.2%です。若干、「不便を生じない」と回答した人が「不便がある」と回答した人を上回っています。

年齢別に確認すると、18歳~20歳はちょうど半数で意見が分かれており、70歳以上は「不便がある」と回答した人が約3.3割にとどまっています。ですが、その間の年齢層では回答の割合に大きなばらつきは見られず、概して、約4割の人が「不便がある」と回答しています。

先ほどの「相続」に関する話は「事実婚」に不便が生じた例です。一方で、世論調査では約4割の人が、「婚姻」のうえ、「仕事上は通称として婚姻前の姓を名乗ることには不便がある」と懸念しています。

「選択的別姓」の必要性が差し迫られていると、言えるのではないでしょうか。

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