「僕と一緒にいれば、百パーセント満足できたのに!」黒柳徹子がNY留学中に出会ったプレイボーイたち

「僕と一緒にいれば、百パーセント満足できたのに!」黒柳徹子がNY留学中に出会ったプレイボーイたち

  • 文春オンライン
  • 更新日:2021/05/03

「自分とは無縁の職業と思っていました」 黒柳徹子が女優になり、NY留学を決意した理由から続く

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1953年にNHK放送劇団に入団し、テレビ女優としてデビューした黒柳徹子さん。『夢であいましょう』や『若い季節』など数々の人気番組に出演し、テレビの第一線で活躍を続けてきた。1971年、働きづめだったテレビの仕事を休み、ニューヨークに留学することを決意。長い休暇も海外生活も一人暮らしも何もかもが初めての経験だった彼女が「サービスもここまで行きとどけば完璧!」とまで感心したニューヨークのプレイボーイたちの言葉とはーー。

黒柳徹子氏の著書『チャックより愛をこめて』(文春文庫)から一部抜粋して紹介する。(全2回中の2回。前編を読む)

◆◆◆

〈【G】  ガール〉

ニューヨークで見る若い女の子は、本当に若い果物という感じがします。私のおつきあいしている家にも、たくさん年頃の女の子がいますが、みんな、のびのびと健康的な身体つきで、見ているだけで「若いって、なんていいんだろう」と思わせてくれます。なんにもお化粧していなくて洗いっぱなしなのに、頬っぺたはピンクで、そばかすのある子もいるけれど、みんな輝くような肌で、見れば見るほどきれいで、清潔です。

この年頃の女の子のファッションは、といえば、揃って髪の毛は真中からわけて長くたらし、おへその出るくらい短いセーターにブルージーンズ、と決まっています。そして靴は、ウォーキングシューズというのか、茶色の革でできていて、底などタンクのキャタピラのようにゴロゴロしているのか、または日本でも戦後、流行した高いヒールの紐などついているのをはいています。

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セントラル・パークのベンチには一日中お婆さんたちが物見高くすわっている

そして、彼女たちは、この格好で、パーティにだろうと、ディナーにだろうと出かけようとするので、母親や父親と衝突するのです。母親にしてみれば「こんないい年頃の娘が、昔のようにピンクのリボンなんかつけて、女の子らしいスカートなんかはいてくれたら、どんなにうれしいだろう。でも、そんな、だいそれた望みは持つまい。せめて、その茶色の兵隊のようなドタ靴と、しみだらけのジーンズだけは、ぬいでもらえないかしら!」と思い、また父親は「そんなジーンズに紐つきのハイヒールは、あわないからよしなさい。その靴が流行した頃のファッションはよく知っているが、髪の型といい、オーバーといい、スカートといい、もっとずーっと女らしいものだった。お前のは、醜いというんだよ。ぬぎなさい!」と叫ぶのです。

旦那さんが奥さんに言い続ける“ある言葉”

私なんかも、まあ、もうちょっときれいな格好しても悪くないな、と思うのですが、彼女たちにしてみれば、なぜこれが「美しくない」といわれるのかわからない。「これで、きれいじゃない?」と信じて疑わないのですから、それよりきれいなのを着せるということは、無理なことかもしれません。

それでもとにかく、二十歳くらいまでの女の子は、見ていても飽きないほどきれいです。でも昔から「花の命は短くて」という歌にもあるように、残念なことながら、二十歳を越える頃から、肥り始め、顔からはつやと、生き生きした若さが消えて、急に中年に近づいていくように見えます。もちろん、これは人にもよりますし、また中年が悪いというのでもなく、内面の美ということはあるのですが、いちおう、見たところをいえば、大部分がこうなるわけです。

そのかわり逆に、こっちのショウ関係の人や女優の中には、日本人がかなわないほど、すばらしく若い人たちがたくさんいます。

例えば、『ルーシー・ショウ』のルシール・ボールは、相変わらず穴に落ちたり、ゴーゴー踊ったりと、テレビで活躍していますが、もう六十歳だそうですし、アレキシス・スミスという、私が中学生の頃、すでに中年だった映画女優が、いまブロードウェイに出て、『フォーリーズ』というミュージカルの中で、足を全部出して、チャールストンやいろいろのダンスなどを踊るのですが、若わかしくて、魅力たっぷりです。また、キャサリン・ヘップバーンも舞台で見れば映画より若く、セクシーで、私の倍くらいのスピードでセリフをいいますが、六十四、五歳にはなっているそうです。

ということは、気をつければ若くいられるということなのでしょうか。でも一般の女性の若さを失っていく速度は早く、もちろん、若さを保つための本、カロリーの本、やせるための本、そのための先生と、いろいろあるようですが、どうもふせぎきれないようです。でも、こちらの旦那さんは、どんなに奥さんが太ってしまってシワがあろうと、彼女たちにいい続けます。

「マイ・ガール! ご機嫌はいかがかね!」

〈【H】  ホース〉

セントラル・パークに、リスやいろんな鳥がたくさんいることは、前にお話ししましたが、このニューヨークには、馬もたくさんいます。それも、おまわりさんを乗せて、パカパカと、自動車と並んで、銀座通りのような賑やかな大通りを歩いているのです。一頭のときもありますし、二、三頭連れだっているときもあります。あっちこっちでよく見かけるのですが、何をしているのでしょう。

「あなたが美しいので見張ってるんですよ」

そこで、この間、ブロードウェイの通りで、手帳をひろげて何やら書いている馬の上のおまわりさんに質問してみました。

「失礼ですけど、なにか見張ってらっしゃるの?」

答え「あなたが美しいので見張ってるんですよ」

「………」

話はそれますが、こちらは、おまわりさんでもこの調子で、すぐお上手が口から出るのですから、ましてや、プレイボーイだの、世馴れている人の口から、オートメーションの機械のように、ほめ言葉とか、愉快な言葉が出てくるのはあたりまえですし、喋るのが商売のプロの司会者などにいたっては、のべつ人を笑わせて、つきることがない、というのも、驚くことではないのかもしれません。

あまり、しょっちゅうなので、そのときは笑っても、あまり憶えていませんが、この間も、こういうことがありました。

中年の男の友だちから、ディナーに誘われたのですが、その夜は芝居を見に行くことに決めてあったので断わり、芝居を見て帰って来たところに、彼から電話があり「芝居どうだった?」そこで「脚本があまり上できとはいえないみたい。とにかく百パーセント満足というわけにはいかなかったわ」すると、すぐさま「だから、今晩、僕と一緒にいれば、百パーセント満足できたのに!」といいました。

とりたてて、びっくりするほどお上手、というものではないけれど、瞬間的にこういうものが出る、というのは訓練によるものか、国民性によるものか。

世界一暴力沙汰が多く面白い国・アメリカ

もっとも日本でも、森繁久彌(もりしげひさや)さんという、外国人をうわまわるほど、お上手のかたがいらっしゃいますけれど。

それはともかく、美しいといわれた私は、馬の顔の前で、「オホホホ」と笑ってから、そのおまわりさんがこわくないと思ったので、いろんなことを聞きました。

要するに馬でパトロールをしているのです。車が混む所ではパトロールカーより場所をとらず、背が高いからあたりがよく見え、犯人などを追跡するときは、どこまでも追いかけていかれ、おまけに格好もよく、さらにいいことは、「私が乗馬が好きなことであります」と最後につけ加えました。

その他、駐車違反の車を見つけるのも、どうやらこの乗馬おまわりさんの役目と見うけました。ついでにいうなら、このマンハッタンをパトロールする馬は二百頭。そして常時、七十頭はこのマンハッタンをパカパカやっているそうです。馬のパトロールというのも、やはり西部劇の国だからでしょうか。

いずれにしても、世界一暴力沙汰の多いこのニューヨークで、のんびり馬にまたがって「あなたが美しいので見張ってるんですよ」なんてのんきなことをいっているおまわりさんのいるこの国も、相当に変わってて、面白い国だと思います。

おまわりさんとお別れのとき、私は「サンキューベリマッチ!」といいました。ちょっとハンサムなそのおまわりさんは、ていねいに馬の上から頭を下げ、「ドウイタシマステ!」と日本語でいってにっこり笑いました。

サービスもここまで行きとどけば完璧! といったふうで私は感心したのであります。

〈【I】  アイスクリーム〉

アメリカは、なんといっても、甘いものの豊富な国で、アイスクリームは、その代表的なものです。十年前に、初めてこの国に来たとき、私はアイスクリーム専門店、というのが、たくさんあるのに、とても驚きました。

日本でもこの頃は、こういうお店もできて、種類も随分あるようですが、私の若いときは、ヴァニラと、チョコレートくらいしかありませんでした。私のいまいるアパートの近くに、わりと有名なアイスクリーム屋さんがあるので、今日、通りがかりによって、どのくらいの種類があるのか聞いたところ、やはり本場だけあるとびっくりしました。

「風船ガム入り」のアイスクリーム

目の前に並んでいるアイスクリームは、五十種類。そして、この店の本社には、なんと、五百種類あって、毎週、二種類ずつ、新しい味を、どれかと交換して置いて行くのだそうです。五百種類のアイスクリームを考え出す人も考え出す人だけど、きっとそれをテストしてたべてみる係がいるに違いないから、その人も大変だと思いました。

メニューを見て、日本で珍しいのはどれかな? と考えましたが、「風船ガム入り」というのは、やはり目新しいほうじゃないでしょうか。メニューに説明がついています。「信じられますか? 本当の風船ガムが入っています。噛んでください」。ピンクのアイスクリームの味は、なるほど風船ガム。中に、水色や黄色、茶色などの柔らかいガムがプツプツと入っています。そして、クリームをのみこんだ後、ほんの少しのガムが口に残ります。ただし、ふくらませて、パチンとやるほどは入っていませんし、入っていたら大変です。

「ブランディ・アレクサンダー」というのは、「特別製法によるフランス本場のブランディ入り」。色は薄いコーヒー色で、味は確かにブランディそのもの。「酔っぱらいません?」と売り子のお兄さんに聞いたら、笑われました。また「ラム酒と乾しぶどう入り」とか「デンマークのチーズケーキを、そのままアイスクリームにしました」なんて、およそアイスクリームとは思えないようなのもあります。

「年よりのいうことを聞くのよ」

「西瓜(すいか)」とか「野苺(のいちご)」なんていうのは、ローズ色できれいです。世界中の珍しいナッツの入ったものや、チョコレートの小さいかけらが混っているのも私は好きです。

どんな味かを試すために、四つもコーンに入れてもらって両手で受けとったとき、お婆さんが入ってきて「お嬢ちゃん、それ全部一人でたべたら、お腹をこわしますよ」といいました。私はお嬢ちゃんでもないし、四つ全部まるまるたべる気はないし、たべたところで、こわれるようなお腹でもないし、と思ったけど「はい」といいました。

お婆さんは満足して「年よりのいうことを聞くのよ」といい、続けて「これをたべると、太る太ると思いながら、この店の前を素通りはできないじゃないの。貴女は何を買ったの?

風船ガムに、マンゴウとメロンのと、ブランディと西瓜。どれもいいわね。ちょっと、お兄さん。(カウンターの後ろのお兄さんを呼んで)あなたの推薦するのはどれ? この間のヤツ、ものすごく気にいったけど、今日はね……」と永久に続くので、私は彼女にお別れをいって外に出ました。

4つの味をかわりばんこにナメナメ裏通りを歩いているとき突然「アイスクリームって、もうせんたべたことがあるわ。どんな味かっていうとね、甘くて、冷たくて、口の中でとけるのよね」と、アメリカの空襲をさけるため、真っ暗な防空壕の中にしゃがんで、大豆の煎ったのをかじりながら、友だちと話をしてた小さかった私が、目に浮かびました。私の手に持っているこれを、あのときの私にたべさせてやったら、何ていったかな? と考え、生きていて本当によかったと思いながら、私はアパートに帰ったのです。

(黒柳 徹子/文春文庫)

黒柳 徹子

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