トヨタ直営レクサス「車検不正」の背景にある“根本的業界問題”

トヨタ直営レクサス「車検不正」の背景にある“根本的業界問題”

  • JBpress
  • 更新日:2021/07/23
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愛知県豊田市のトヨタ自動車本社(筆者撮影)

(桃田 健史:自動車ジャーナリスト)

7月20日午後、トヨタが「トヨタモビリティ東京 レクサス高輪における不正車検」についてオンライン記者会見を行った。

会見によると、トヨタモビリティ東京が運営する「レクサス高輪」が、6月17日に国土交通省から不正車検に関する監査を受けた。過去2年間に同店が実施した車検について調査したところ、同店舗での車検総数の約3分の1にあたる565台で道路運送車両法の法令違反があったことが判明したという。

同店舗には車検担当者が5人おり、そのうち現在も車検業務を行っている3人と、過去に車検業務にあたっていた1人の合計4人が不正に関与したことを認めた。

具体的な不正内容は5つある。「ヘッドライトの明るさ」「フロントタイヤの角度」「パーキングブレーキの効き」という3項目については基準を満たす値に書き換えていた。そのほか「排気ガスの成分」「スピードメーターの精度」の2項目については、検査を実施していなかった。

不正が行われた原因について、トヨタモビリティ東京の関島誠一社長は大きく2点を指摘した。

1点目は、人員と設備の不足だ。増加する仕事量に対して、対応する人と設備が追いつかず、慢性的に高負荷な状態が続いていた。それにもかかわらず、社内、または販売店とトヨタ本社との情報共有ができていなかった。

2点目は、車検に要する時間だ。レクサスでは2時間を目安としており、これに合致させることが最優先された。本来は、クルマは年式、走行距離、使われ方によって修理・点検・検査するべき箇所は異なる。当然、車検に要する時間も異なることになるが、完了時間を守ることが最優先されてしまっていたという。

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ネッツトヨタ愛知の「45分車検」

今回のオンライン会見では記者との質疑応答で様々な点が指摘された。

例えば、2020年12月にネッツトヨタ愛知の販売店「プラザ豊橋」で発覚した不正車検との関係性についてだ。

同店では国土交通省中部運輸局の監査が行われるまでの2年間で不正車検は合計5185台にも及んだ。ネッツトヨタ愛知では、レクサスの2時間車検よりさらに時間が短い45分車検を実施しており、時間短縮最優先の経営が不正につながったという。

トヨタ本社側として会見に参加した国内販売事業本部・本部長の佐藤康彦氏は、ネッツトヨタ愛知と今回の事象について直接的な関係性はないと話す。

ただし、顧客により良いサービスを提供したいという思いから、トヨタ本社と販売店各社が連携して車検の時間短縮を進めた経緯があると説明。だが、トヨタ本社から販売店各社への十分なフォローができておらず、結果的に販売店の負担が拡大してしまったことに「メーカーとして責任を感じている」と胸の内を語った。

また、トヨタ本社が販売店の販売台数や修理や車検のためのサービス入庫数を重視する“成果主義”の評価を見直すべきとの考えも示した。

直営の販売店でも現場を把握できず

筆者はこれまでの自動車業界の取材を踏まえて、今回のレクサス高輪およびネッツトヨタ愛知での車検不正には、自動車産業界が抱える根本的な問題が影響していると感じる。それは、「製販分離」である。メーカーと販売店(ディーラー)が事実上、完全に分離した存在となっているのだ。

自動車メーカーの定款では、自動車製造と卸売販売が主体な事業とされている。つまり、メーカーは一般消費者ではなくディーラーに卸売りをしている。実際、トヨタの大手販売店の経営者は常々「メーカーの顧客は我々ディーラーだ」と口にしている。また、今回の会見でトヨタ本社の佐藤本部長は「我々(メーカー)は、販売も修理もしていない」と表現し、製販分離が自動車産業の基本的な仕組みであることを改めて示唆した。

だからこそ、今回のトヨタモビリティ東京での車検不正は重大な意味を持つ。なぜならば、トヨタモビリティ東京はトヨタ本社の直営だからだ。

トヨタモビリティ東京は、トヨタ直営5社のトヨタ東京販売ホールディングス、東京トヨタ、東京トヨペット、トヨタ東京カローラ、ネッツトヨタ東京が2019年4月に合併して誕生した。トヨタの販売店は、各都道府県の地場資本による独立系が基本である。その中で、東京23区を中心とする商圏を持つトヨタモビリティ東京は異質な存在だ。

たとえトヨタ直営であっても製販分離が明確に存在し、販売店の現場の状況を本社が把握できていない。今回のレクサス高輪の車検不正発覚で、いみじくもその状況が明らかになった。トヨタが今回の事態を極めて重く受け止め、再発防止に向けてゼロベースで望むという姿勢を示すのは当然だ。

産業構造を抜本的に見直す時期

今後、トヨタ本社と販売店各社は一丸となって再発防止に向けた動きを進めることだろう。とはいえ、自動車産業界の実情を鑑みると、製販分離という業界の基本構造を根本的に改めることは極めて難しいと思う。

さらに、トヨタのみならず自動車メーカー各社と連携してきた民間修理工場が抱える問題も影響する。

民間修理工場はその多くが家族経営の小規模事業者であり、後継者不在のため廃業を余儀なくされるケースが増えてきている。これまでの一般的な修理である分解整備に加えて、コンピュータ機器を使った車体データや事故データの解析、電子制御による高度な運転支援システム等に対する特定整備などが求められることも大きな負担になっている。

新車の販売、修理、そして車検。いま、自動車の産業構造を根本的に見直す時期に来ているのではないか。

桃田 健史

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