北海道「カート事故」に衝撃! 問題は主催者から抜け落ちていた「ワーストシナリオ」への備えだった

北海道「カート事故」に衝撃! 問題は主催者から抜け落ちていた「ワーストシナリオ」への備えだった

  • くるまのニュース
  • 更新日:2022/09/23

まだまだ世間の認識には乏しい「モータースポーツ」イベント中でのアクシデント

2022年9月18日に北海道で発生したレーシングカートによる死傷事故は、ドライバー、死傷者ともに子どもだったという衝撃の大きさや、イベント関係者の対策の甘さなどに対し、SNS上でも大きな反響を呼んでいます。

今後再びこうしたイベントが開催できるためには、どう対策すべきなのでしょうか。

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「カート」とひとことでいっても、遊園地などで走らせる「ゴーカート」から、本格的なコースで競技をおこなうための「レーシングカート」まで、用途に応じたさまざまな種類が存在している[画像はイメージです]

北海道の函館北部に位置する森町で2022年9月18日に開催された、レーシングカートの体験試乗会で悲しい事故が起こってしまいました。

【画像】訴訟にも発展した「あの」カートもあり さまざまな「カート」の画像を見る(10枚)

各種報道によると、11歳の女の子が乗るレーシングカートがコースからピットエリアに戻る際、減速せずにそのまま直進して観客席に進入。観客の数人に接触して負傷者が出て、2歳の男の子が病院に運ばれましたが、存命することが叶いませんでした。

仮設コースは1周約200mで、参加の条件は身長140cm以上ならば年齢制限はなく、乗車の前に走り方に関する講習を受けるという流れになっていたといいます。

この事故に関して、テレビやネットでさまざまな報道があり、それに対してSNS上では数多くのコメントが寄せられています。

そうしたなかで、報道やコメントでは、いくつかの指摘があるように思います。

ひとつは、「11歳の子どもが、簡単な講習だけで時速40kmで走行することに無理がある」という指摘です。

ここでポイントなのは、公道での走行ではなく、私有地で行われたモータースポーツ関連の走行だということに対して、人によって理解の差があるという点でしょう。

レーシングカートといえば、モータースポーツ全体のなかで見ると比較的コストの負担が少なく参加できることから、子どもから大人まで幅広い年代で人気があります。

また、F1レーサーや日本国内レースのトップレーサーでも幼少期や青年期からレーシングカートで腕を磨いた人が少なくないなど、レーシングカートはプロレーサーに向けた登竜門という位置付けでもあります。

そうしたレーシングカートが走行する専用サーキットでは、十分なセーフティゾーンの確保や、コースサイドにはガードレールや衝突力を緩和する装置などを完備して、安全性に対する配慮を十分に施しています。

また、子どもがキッズカートやレーシングカートで走行するために、段階的に走行速度を上げるような形での実地講習をおこなっています。

そのうえで、例えば小学校低学年でも時速40kmを超えるスピードで走行することも珍しくありません。

つまり、今回の事故について考える場合、公道での一般的なクルマの運転、または遊園地での走行速度が比較的低いゴーカートと、モータースポーツにおけるレーシングカートは、基本的に別物であることを理解する必要があります。

なおカートにはいくつかの種類が存在し、子ども用に作られたものから大人も楽しめるもの、本格的なカートレースを目的とした競技用のものなどバリエーションがあります。

そのなかで今回事故が発生した際に使用されていたカートは、本格的なものではなく、カートコースなどでレンタル可能な排気量200ccのものだったと報道されています。

これはエンジンの出力を抑えて加速や最高速度を抑制していますが、一般的な遊園地のゴーカートと比べると高い走行性能があります。

主な製品としては、有名カートメーカーが完成品として製造販売していますし、またレンタルカートを使う屋内型また屋外型の専用施設も全国各地に存在します。

主催者側が第一に考えるべきだった「万が一」への対策には大きな問題があった

そのほか、報道やSNSでのコメントなどでは「観客の前の防護用具がカラーコーンやポールだけで良いのか」、または「コースレイアウトにおける安全性に対する疑問がある」という指摘があります。

各種報道によりますと、参加者は1周200mで、直線路の先に乗り換える場所であるピットエリアに戻ってくるコースレイアウトでした。

直線路の先に観客がいましたが、ピットエリアとの間にはカラーコーンやポールのみが設置されており、コースサイドにあるような防護用具は置かれていなかったようです。

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カートを楽しく走らせるために重要なのはなによりも徹底した安全対策だが、一定のガイドラインなどは設けられていないのが現状だ[画像はイメージです]

ここでいえることは、ワーストシナリオという“万が一の状況”に対する、イベント運営者の認識の甘さではないでしょうか。

常設サーキットであれば、走行速度が最も高い直線路の延長上に、段差や防護用具がない状態で観客が立ち入る場所を設けることはありません。

一般的に、主要な観客席は直線路と並行した場所に設置されるものです。

これが、今回のような仮設施設の場合、限られたスペースでコースを設定し、そのほかの併設イベントとの人の導線を考慮し、そして参加者の人数が多ければレーシングカートの効率的な乗り換えを考慮する必要があります。

その結果として、今回のようなコースと観客がいる場所のレイアウトになったと考えられます。

こうしたコースレイアウトなど、イベントの運営における安全性の確保について、法的な規制や規定、または何らかのガイドラインのようなものはあるのでしょうか?

一般的には、私有地での各種イベントについては、警察や地元自治体などに事前に開催許可を得る必要は基本的にはないとされています。

そこで、長年にわたり自動車関連の仮設イベントをおこなう関係者らから話を聞いてみたところ、実際の運営でもそうした一般論で語られているのと同じような対応をしており、ガイドラインようなものはないとのことです。

また、万が一の場合、当然ですが、主催者はイベント保険に加入するのが一般的とも指摘します。

今回の事故を教訓として、これからは一定以上の速度が出せるカートでの走行を伴う私有地でのイベントについては、国が全国一律のガイドラインを設けるべきではないでしょうか。

ただし、これらのカートは、道路運送車両法の適用外なほか、また私有地では乗用車などでも道路交通法の適用が難しくなります。

そこで、例えば消費者庁がイベント運用のためのガイドラインを作り、それに基づく運用が実際にできているかどうかを地元の自治体がチェックする、またはイベント主催者が自治体に報告するといった形が考えられるのではないでしょうか。

今回のような悲しい事故を二度と起こさないために、国が主導する総括的な仕組みづくりが求められます。

桃田健史

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