バイデン民主党完全勝利なら株暴落も!?米大統領選に市場関係者が身構える理由

バイデン民主党完全勝利なら株暴落も!?米大統領選に市場関係者が身構える理由

  • MONEY PLUS | くらしの経済メディア
  • 更新日:2020/10/16

11月3日に米大統領選挙が実施されます。民主党は、2016年に共和党が勝利したミシガン、オハイオ、ウィスコンシンなどのいわゆるラストベルトや、トランプ大統領の在住地であるフロリダなどの接戦州でいずれも選挙戦を有利に進めており、賭けサイトではバイデン候補の勝利確率が70%を上回っています。

バイデン候補が勝利した場合、株式市場にはどのような影響があると考えられるのでしょうか。

民主党完全勝利がメインシナリオか

大統領選挙と同時に行われる議会選挙でも、民主党は上院こそ小幅な優勢にとどまっているものの、下院では過半数維持がほぼ確実です。大統領選挙、上下両院選挙のすべてで民主党が勝利するシナリオの可能性が最も高くなっています。

バイデン候補は中道寄りでトランプ大統領との討論会でも穏健な姿勢を示していたことから、株式市場は安定した動きを続けています。

また、すでに民主党が過半数を握っている下院は10月1日にインフラ投資に向けた地方政府支援や家計向け給付金を含む2.2兆ドルの歳出法案を可決しました。共和党が過半数を占める上院で可決される見込みはありませんが、株式市場では選挙後に民主党主導となった議会でさらに巨額の財政法案が可決され、株価を押し上げるとの期待も高まっています。

景気対策の株式市場への恩恵は限定的

しかし、民主党の完全勝利が株式市場にとって押し上げどころか大きな逆風になる可能性には警戒が必要です。

インフラ投資で恩恵を受けるのは地方の中小建設、不動産会社ですが、こうした企業のほとんどはそもそも上場していません。実体経済やGDPにはプラスになっても、上場企業の利益が増えなければ当然ですが株式市場にはプラスになりません。

家計向け給付金についても、4月に実施された際には新型コロナウイルス感染拡大に伴う外出制限がかけられていたこともあり、比較的高所得なホワイトカラー層のオンライン株取引の盛り上がりが株価の上昇要因となりました。しかし、民主党政権下では給付対象の所得制限が厳格化される可能性が高く、株式需給の改善効果も限られそうです。

また、バイデン候補は景気対策の財源の一部とするため、21%の法人税率を28%に引き上げると表明しています。法人増税は企業利益を確実に減少させるため株価にダイレクトに影響を与えます。民主党の政策は同じ大型景気対策でも、法人税率の35%から21%への引き下げが中心となって株高を引き起こしたトランプ政権のものとは根本的に性質が異なります。

バイデン政権の左傾化が株価暴落を生む?

さらに大きな影響を及ぼしそうなのが規制強化です。バイデン候補自体は中道派ですが、民主党が完全勝利し上院、下院ともに過半数を握ると、党内左派の勢いを抑えられず急進的な政策が採用される可能性が高まります。

バイデン候補は大統領に就任後、最初に取り組む政策としてパリ協定への復帰を挙げていますが、民主党内部にはトランプ政権が進めてきた環境関連の規制緩和の巻き戻しだけでなく、エネルギー企業によるシェールオイル開発に欠かせない水圧破砕の禁止や、パイプラインの延伸打ち切りなどを支持する議員が多数存在します。

民主党は金融規制の強化にも積極的です。リーマンショック後に導入された厳格な金融規制、いわゆるボルカールールをオバマ政権下で中心となって推し進めた立役者は大統領候補にもなったウォーレン氏です。

また、ペロシ下院議長は2019年に処方薬の価格抑制に向けて政府が製薬会社と価格の交渉を直接行う法案を公表していますが、こうした動きはヘルスケアセクターの利益率引き下げに直結します。

最も株式市場への影響が大きそうなのはハイテク規制です。10月6日、下院司法委員会の反トラスト小委員会は、特定の支配的なプラットフォームの解体を目指すという衝撃的な勧告を行っています。こうした動きが広まれば、米国の株式市場をけん引してきた巨大ITプラットフォーム企業に大きなダメージとなります。

IT、コミュニケーションサービス、ヘルスケア、金融、エネルギーは米国株式市場の6割強を占めるため、民主党政権による規制強化は株価の暴落を引き起こしかねない大きなリスクとなります。

為替の動向についても注意が必要です。FRB(連邦準備制度理事会)のブレイナード理事は民主党政権の財務長官候補として有力視されていますが、彼女は財務次官だった2013年に、アベノミクス下の日銀による金融緩和に否定的なコメントを出し、たびたび円高を引き起こしています。株安に加えて円高となれば日本の米国株投資家への影響はさらに大きくなります。

今年序盤のマーケットでは民主党の大統領候補にウォーレン氏やサンダース氏が選ばれるリスクが警戒されていました。しかし、たとえ中道派のバイデン氏が大統領になっても、民主党が選挙で完勝すると結果として株式市場がかつて恐れていたシナリオが実現してしまう可能性が出てきます。

民主党完全勝利がバイデン政権の左傾化をもたらすリスクには改めて警戒が必要です。

<文:ファンドマネージャー 山崎慧>
<写真:ロイター/アフロ>

(三井住友DSアセットマネジメント 執筆班)

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