岩渕真奈「経験したことがない苦しさを味わった」。東京五輪では「攻守でどれだけ自信を持てるかが大事」

岩渕真奈「経験したことがない苦しさを味わった」。東京五輪では「攻守でどれだけ自信を持てるかが大事」

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  • 更新日:2021/07/20

苦しいときに一発を決められるのがエース。岩渕真奈は十分その期待に応えられる存在となって東京オリンピックを迎えようとしている。

彼女が世界的に注目されたのは、15歳で臨んだ2008年のU-17 FIFA女子ワールドカップだった。卓越したドリブルとパスセンスが高く評価され、"リトルマナ"と親しみを込めて多くの人に呼ばれた。飛び級を重ねながらアンダーカテゴリーの代表を経験し、なでしこジャパンに初招集されたのは16歳の時。その存在をタレント的な扱いで報道されることも多々あり、自らの実力との差に苦しんだ時期もあった。

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東京五輪には10番をつけて出場することになった岩渕真奈

2011年には、なでしこジャパンの一員として世界一という大きな経験もした。それらはすべて先輩の背中を必死に追いかけて掴んだもの。この夏は、自らがチームを牽引する立場として、自国開催のオリンピックを迎える。28歳となった岩渕が思い描くオリンピックとは。

――2016年のリオデジャネイロ五輪予選で敗退したことで、オリンピックとしてはロンドンの2012年から9年待ったことになります。

「個人的には、この9年は本当に濃い時間だったので、"待った"という感覚はないですが、延期が決まってからのこの1年は間違いなく"待った"時間でした(笑)」

――オリンピック開催の延期が決まった時、今後について悩んだと聞きました。大会までの半年、海外に出れば国内合宿に戻ってこられるのか、先行きが見えない状況でアストン・ヴィラLFC(イングランド)への移籍(現在はアーセナル・ウィメンFC所属)を決めた理由は?

「年齢も大きかったですね。今行かなかったら、オリンピック後のシーズンとなると29歳、そこからというのは想像できなかったので、ラストチャンスだと思って移籍を決めました。オリンピックに向けての合宿に参加できないかもしれないデメリットも考えましたが、それよりも日頃から海外の選手とプレーができるというメリットを取りました。最終的な決断を下す時には潔く、気持ちよく決めることができました」

――シーズンが進むうちに契約時とアストン・ヴィラLFCのチーム状況が変わってしまったところはありましたが、求めていたものは掴めましたか?

「正直に言うと、この半年は今までのサッカー人生で経験したことがない苦しさを味わいました。自分を求めてくれた監督がコーチに降格になって、新監督は守備的な考えで、『点を獲るよりゼロで頑張ろう』という失点をしないサッカーでした。その中で監督も自分のよさは理解してくれていましたが、やるサッカーに自分がまったく合っていなくて、守備の立ち位置とか、コントローラーを握られながらプレーしている気分でした。その苦しさは初めての感覚でしたね。

でも、それがあったからこそ充実してたと思うんです。サッカーの部分では、日々身体の大きい、強い、速い相手とプレーできて、自分にとってプラスしかなかったですから」

――それを体感できるのは、海外に出た選手だけですよね。

「それが目的というか、自分はさらに自信をつけたくて移籍を選んだんです。最初にドイツに移籍して、そこでの経験のおかげで、なでしこジャパンでもビビることなく、自信を持って試合に臨めるようになっていたんです。今まで、イングランド代表と対戦する時は『嫌だな』っていう気持ちがどこかにあったんですよね。だからこそ、次は自信を持って戦うためにも決断した移籍でした」

――移籍を決断した時は、まだオリンピックの対戦国は決まってなかったですよね? 第2戦はイギリス(イングランドを含む)になりましたが、自信を持って臨めそうですか?

「やっぱりイングランドは強いです(笑)! 100%の自信という訳にはいかないですけど、自分がやらなきゃという気持ちは他の対戦国以上に持つと思うし、イギリスの選手たちの特長は身に染みて感じたことなので、そういう情報部分はプラスにはなると思います」

――イギリスは強い、そう思わされる最大の要素とは?

「所属していたヴィラは強豪チームではありませんでしたが、それでも個人の能力が"速い""強い"と感じました。マンチェスター・シティやチェルシー、アーセナルの選手は、そこにうまさが加わっていて『え? どうやって勝つの?』って思わされる選手が揃っていました。それはドイツにいた時以上に感じましたね。

イギリスの選手たちは国外のチームには出てないですし、アメリカの選手が移籍してきたり、オーストラリアの選手も10人前後いて、盛り上がっているリーグだと思います。資金の面でも男子チームもあってバックが強いので、これからもっと強くなる国であり、リーグであると思ってます」

――そんなイギリスチームに日本が挑む上で勝機を見出すとしたら?

「みんなで協力して、1人に対して2人でいくのは日本ならではです。協調性、考える力が日本人にはあるので、そこでいかに対抗して、全員でサッカーをできるか。そこを武器にしないといけないと思っています」

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日本女子サッカーにとって東京五輪は大事な大会になると語った

――2019年のワールドカップ決勝トーナメント(ベスト16)のオランダ戦(●1-2)では、チャンスを作りながらもあと一歩のところでゴールを割れずに終わりました。ああいった、重要な局面を迎えていくために必要なことは何でしょうか。

「難しい質問ですね......。結局いい形を作っても"決定力不足"で片づけられちゃうじゃないですか。自分はフォワードだし、シュートを打ったら決めなきゃいけないっていうのは当たり前のことですけど、それ以外にあるかな......。前を見てほしいっていうのに尽きるかな。パスだけをしていても、(相手を)剥がせない場合もあって、逆に個人でゴールに向かえる時もある。やっぱり点を取って勝ちにいきたいですから」

――横じゃなく縦に。前に進めるかが大事なんですね。

「はい。何をするにも自信って必要だと思うんですよ。どれだけ自分たちを信じられるか。2019年のワールドカップの時、初戦でアルゼンチンに引き分けてちょっと自信を失いかけました。だからオリンピックの初戦のカナダ戦は絶対に大事! 初戦までに、攻守においてどれだけ自信を持てるか。やってきたことを信じられるか。そこに尽きる。そこで自分たちを信じることができたら負けても後悔はないと思うんですよ。だからこそ、戦術も含めて『限られた時間のなかでもやってきたよね』って言えるようにしたいです」

――攻撃側でいうと、長谷川唯さんが今年からACミランへ移籍して、どんなプレーをなでしこジャパンに持ち込んでくるかというのも楽しみです。

「彼女が持っているアイデアや技術は好きなので、お互いが絡むことでチャンスの数を増やせる自信はあります。唯がどう思ってるかはわからないですけど(笑)。運動量が多い選手なのでどんどん絡みにきて欲しいなって思ってます」

――自分がけん引して臨むオリンピックは初めてですよね。チームの色を作る立場にいると思いますが、このオリンピックでどんなチームになりたいですか?

「2011年のワールドカップで優勝したなでしこジャパンのように、『誰がどう見てもいいチームだよね』って言ってもらえるようなチームになりたいです。日本女子サッカーは今秋からWEリーグが開幕したり、今後に向けても大事な大会になると思うので、その責任をしっかり背負って女子サッカーのすべてをかけて優勝を目指してがんばりたいと思います!」

早草紀子●取材・文・写真 text&photo by Hayakusa Noriko

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