【震災10年】帰れない故郷、先祖、家族の思い...次世代へ「家系図」でつなぐ

【震災10年】帰れない故郷、先祖、家族の思い...次世代へ「家系図」でつなぐ

  • 産経ニュース
  • 更新日:2021/02/23

東京電力福島第1原発事故で全村避難となった福島県飯舘村は、一部地域を除き避難指示が解除されたが、帰還を断念した村民は少なくない。戻ることのなくなった故郷や先祖、家族の思いと歴史を次世代へ引き継ぐためにはどうしたらいいのか。同村の元職員で行政書士の男性は今、避難者らの依頼をもとに「家系図」の制作を行っている。そこにあるのは、原発事故によって故郷に戻れなくなった住民たちの「心の整理」だ。(大渡美咲)

飯舘村職員だった横山秀人さん(50)は震災後に役場を退職、その後は行政書士として村民の賠償請求などをサポートしてきた。横山さんによると、震災前の村は約1700世帯あったが、現在、村に住んでいるのは約760世帯。避難後、村内の自宅を取り壊して更地にしたままにしているのは300戸に上るという。

村民の相談を受けて気づいたのは「先祖や家の歴史をなんとか形に残したいと思う人が多い」こと。それなら行政書士として作ることができる家系図が役に立つのではないかと考え、今年1月、福島市に家系図制作サービス「縁結び家系図や」をオープンした。

村で唯一の帰還困難区域で、今も立ち入り制限が続く長泥地区の住民、鴫原良友さん(70)は、横山さんに依頼して妻と自身を中心とした親族255人分の家系図を作成した。A1サイズの用紙に収まらず2枚になった家系図を前に、「先祖から受け継いだ故郷と家の歴史を孫世代にも残したかった。いつか家系図を囲んで思い出話をしたい」と話す。

家系図を作るにあたり、横山さんは依頼者から数回、話を聞くようにしている。新聞記事の切り抜きや思い出の品を持ってくる人には、要望に応じて、家系図をプリントする際に掲載することもある。

「ご自身や先祖が頑張ってきた証しを子孫に残していきたいという気持ちと同時に、自分の代で家を取り壊さないといけなかったことへの申し訳なさも感じる。家系図を作ることは気持ちの整理の意味もある」と横山さん。「家系図の作成を通じ、故郷や家族への思いをきちんと整理する手助けをしたい」と語っている。

制作依頼は飯舘村だけでなく、福島県の避難市町村や、東日本大震災で被災した岩手、宮城県などからも受け付けている。役場で戸籍謄本を取り、依頼者から聞き取って制作する「オーダー家系図」は10万円から。問い合わせ先はホームページ(https://enmusubi-kakeizu.com/)に掲載している。

■福島県避難者約3万6千人 避難長期化で鈍る帰還者

東京電力福島第1原発事故で大きな被害を受けた福島県。現在も7市町村に避難指示が出ており、約3万6千人が県内外で避難生活を続けている。避難が長期化した地域では、若い世代が避難先に定住するなど、住民の帰還が思うように進んでいない。事故から間もなく10年が経過するが、地域の再生は容易ではない。

事故後、福島県は最大で11市町村約1150平方キロメートルが避難指示区域となり、最大で約16万人の住民が避難を余儀なくされた。平成26年4月から避難指示の解除が始まったが、今も7市町村には「帰還困難区域」337平方キロメートルが残る。

県によると、避難指示の全域や一部が解除された11市町村の今年1月1日までの住民票の登録者数は計4万5543人だが、実際の居住者は計1万4322人。住民票を置いて実際に生活する住民の割合を示す「居住率」は31・4%と、1年前に比べて3・2ポイント増加した。

自治体別では田村市都路地区(26年4月解除)83・9%▽楢葉町(27年9月解除)59・6%▽川内村(28年6月解除)52・9%-で、解除が比較的早かった自治体は5割を超えている。一方、解除が遅いほど戻る人が少ない傾向が強く、浪江町(29年3月一部解除)11・2%▽飯舘村(同)29・6%▽富岡町17・5%(29年4月一部解除)。原発立地自治体の双葉町では一部の避難指示が解除されたが、住民の居住は始まっておらず、令和4年春の帰還開始を目指している。

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「故郷に戻れないなら、そこで先祖代々生きていた証がほしかった」と、つくった家系図を見る、未だ帰還困難区域となっている飯舘村長泥地区の鴫原良友さん=11日、福島市飯野町(松本健吾撮影)

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