連載・伊藤詩織 「チョコレートの国」ガーナで消えるカカオ農場

連載・伊藤詩織 「チョコレートの国」ガーナで消えるカカオ農場

  • PRESIDENT Online
  • 更新日:2021/04/08

「チョコレートの国」ガーナで消えるカカオ農場

バレンタインデーと聞いてあなたは何を思い出すだろうか。大切な人に手渡すチョコレートはどんなものにしようか、今年はいくつ義理チョコを贈らなくてはいけないのか、などと頭を抱えている人もいるかもしれない。

この記事を書いている今はまだ2021年1月後半だというのに、すでに街では赤やピンクの看板とともにバレンタインチョコを売っている店を見かける。そんなチョコレートの原料のカカオ、日本は約80%をガーナからの輸入に頼っている。

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カカオ農園で違法金採掘をしているガーナの人々。カカオ豆の栽培では生活がままならない人もいる(2018年5月、筆者撮影)。

カカオ生産はこれまでも児童労働など様々な問題が挙げられてきたが、近年、ガーナのカカオの多くが生産されている中南部アシャンティ州では、カカオ農園から青々とした木々が消え、グレーの泥沼に激変した光景が見られる。ミネラルの豊富な土地が違法金採掘のスポットとして掘り起こされているのだ。取材に訪れた2018年5月、現地では違法金採掘の取り締まりに、政府が武装した軍を投入しており、物々しかった。

ガラムゼイと呼ばれる中国人違法金採掘業者たち

そこにはガラムゼイと呼ばれる中国人違法金採掘業者たちがいた。外国人が採掘をすることが難しいガーナでは地元農家にアプローチをし、金を掘るのに必要な2年間ほどのリースを持ちかける。元の農園に戻すことを約束する業者もいるが、1度に10~15メートルも掘り起こされ、採掘のために汚染された土地を元通りにするのは安易ではない。そのまま放置されることも多く、カカオ農園を続けることができなくなるケースも……。

カカオ生産者は、ほとんどが政府管轄の機関に豆を卸しているが、その価格は生活に十分なものとは言えない。違法金採掘業者から受け取る目先の金額に飛びつき、持続的な農業を絶つ農家とその家族が増えている。

そして何よりも、この違法金採掘には水銀が使われているにもかかわらず、素手で作業している人がいることに驚いた。こうして1つの農園が灰色の穴に変わるとき、近辺の農園も同じく土壌の汚染の影響を受ける。さらに汚染された水は川を渡り人々の健康被害を及ぼしている。私が出会ったカカオ農園や違法金採掘で汗を流す人々の多くはチョコレートの味すら知らないそうだ。今年もチョコレートを見ると彼らを思い出す。

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伊藤 詩織(いとう・しおり)
ジャーナリスト
1989年生まれ。フリーランスとして、エコノミスト、アルジャジーラ、ロイターなど、主に海外メディアで映像ニュースやドキュメンタリーを発信し、国際的な賞を複数受賞。著者『BlackBox』(文藝春秋)が第7回自由報道協会賞大賞を受賞した。
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伊藤 詩織

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