DV加害夫の告白「楽しいはずのキャンプ、私は子どもの前で妻を蹴り飛ばした」

DV加害夫の告白「楽しいはずのキャンプ、私は子どもの前で妻を蹴り飛ばした」

  • 現代ビジネス
  • 更新日:2021/11/25
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DVは治らない、加害者は反省しないは本当か

「おかしいよ」「あなたは間違っている」と、妻に言われたことがあります。
でも私には、正直、自分がDVをしているという感覚はありませんでした。
喧嘩をしているのだから、妻もやり返せばいい。そう思っていました−。

こう語るのは、アラフォー男性の池田光一さん(39歳・仮名)。DVが原因で妻子と別居することになり、自分の間違いに気づいた時にはもう妻の心は離れてしまっていた。別居を経て離婚に至り、今はDVをやめたいと思っている人のためのDV加害者プログラムに参加し、後悔と葛藤の中で内省を繰り返す日々を送っている。広い意味で言えば、人を助ける仕事をしているという。

DVは力で相手を支配しようとする関係性と言われる。愛する女性に暴言を吐いたり、殴っている間、加害者は何を感じているのか。「DVは治らない」「DV加害者は反省などしない」とも言われるが、それは本当なのだろうか。

DV加害者が、自分の気持ちを語ることは、そう多くはない。今回、池田さんは、DV加害者として自分が感じていたことやDVの背景にあるものについて、一つひとつ言葉を絞り出すように語った。その全てを3回にわたりお伝えしたい。

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今は離婚し、DV加害者プログラムに参加。後悔と葛藤の日々を過ごしているという。photo/iStock

※文中にはDVの具体的なシーンが出てきます。DV被害に遭われた方やフラッシュバックの可能性がある方はお気をつけください

結婚後始まったDV、妻の顔に唾を吐いた

今回は、離婚に至るまでのお話。DVはどのように繰り返され、家族の破綻を招いたのか。

池田さん:元妻とは、恋愛結婚でした。大学時代、同じサークルのメンバーで、社会人になってから付き合いました。交際中も喧嘩はありましたが、激しいものではなかったように記憶しています。20代後半で結婚。ごく普通のカップルだったと思います。

別居後、妻は「結婚してからDVが始まった」と話していました。その通りだと思います。新婚の頃から、何かのきっかけで喧嘩になり、腹が立って妻に当たることがありました。鮮明に記憶にあるのは、言い合いになった結果、妻の顔に向かって唾をかけたこと。ほかには、イライラしてものを壁に投げつけたり、飲み物をわざと床にこぼしたりということもありました。

今は、それがどんなにひどいことかわかります。私は男で、女性よりも体格、体力の面で有利ですし、収入の違いもある。喧嘩をして大声で言い合うにしても、妻が感じるものと、妻が大声を出して私が感じるものでは大きな差がある。でもその時は、すべてが喧嘩の延長だと思っていました。喧嘩なんだから、妻も怒ればいい。やり返せばいい。妻が怖い思いをしていたとは、全く気づけていませんでした。

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photo/iStock

妻から、「おかしいよ」「間違っている」という訴えはあり、私もその都度謝って「変わるから」「次はしないから」というやりとりを繰り返しました。
よく言われているDVのサイクルそのものです。

私としては、その瞬間は本気でそう思うんです。妻を騙そうとか、なだめようとしているわけではなくて、反省しているのです。

でも、その後も自分の感情について深く考えようとせず、喧嘩になってしまいました。例えば仕事で疲れて眠い時に不機嫌になり妻に当たり散らし、大声をあげたり、ドアを「バタン!」と力任せにしめたり。そうした行為もDVなのだ(※)とわかったのは、DV加害者プログラムに参加するようになった後でした。

※夫婦や恋人など親密な関係性で起こる暴力はドメスティック・バイオレンス(DV)といい、殴る・蹴るだけでなく、精神的な嫌がらせや脅迫、性的な行為の強要なども含まれる。また面前DVといって、子どもが見ている前で、夫婦間で激しく喧嘩をしたり暴力を振るったりすることは、子どもへの心理的虐待に当たる。被害者のほとんどは女性だ。国の調査によると、女性の10人に1人は何度も暴力を受けている。

子どもの面前で妻を蹴った

なぜ妻にひどい態度をとり続けてしまうのか。池田さんは子どもの頃、両親の激しい喧嘩をよく目にしていたという。母の怒りは池田さんにも向けられ、大事にしているものを壊されたりもした。

池田さん:ものを投げたり大声を上げたりすることがDVなら、実家の両親も、祖父もみんなDVをしていたと言えます。それくらい、私にとって喧嘩は日常的にあるものでした。だからこそ、「自分が親になったら、子どもを大切に育てたい」と、思っていました。それなのに……。

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自分自身の両親も大きな声を上げ、ものを投げる人だったという、photo/iStock

そして、私は決定的なDVを犯してしまいます。夏休み、子どもたちと妻とキャンプに出かけました。前々から計画していた旅行で、仕事から解放されることもあって、私自身がすごく楽しみにしていました。コテージを予約し、昼間は子どもと遊び、夜は自分たちで料理を作り……。一方で、「楽しい夏休みにしなくては」と、多くを求めすぎました。

トイレは少し離れている場所にあるし、子どもは夜泣きをするしで、夜は全く眠れませんでした。楽しいはずのキャンプでストレスが積み重なっていきました。

翌日、些細なことで私は怒り出しました。「お前のせいで、うまくいかないんだろう」と、自分の不満を妻のせいにして、喧嘩をふっかけるいつものパターンです。当然、妻も言い返してきて喧嘩になりました。その日違ったのは、妻を蹴ってしまったこと。
「ついに(身体的な暴力を)やってしまった」。しかも、子どもの見ている前で。

その時の私は、今思えば両親に叱られている子ども時代の私でした。一時不登校になり、学校に行けなくなった時期があり、学校に行くまで親に責め立てられた思い出があります。妻から責められると、フラッシュバックのようにあの時の自分と重なって、怒りが爆発してしまったのだと思います。

妻の言うことはいつも正論で、間違っているのは私です。そのおかしさに気づいていながら、その時はどうしても謝ったり、認めたりできないのです。責められると反発心が芽生えました。自分を否定されるのが我慢ならなかったんだと思います。

離婚へのカウントダウンが始まった

池田さんは、妻子が出て行き会えなくなるまで、モラハラやDVを繰り返した。一方で、早く止めなければという自分もいた。悪いことだとはわかっている、もうやっちゃいけない。次第にこれはDVかもしれないなと思うようにはなった。朝起きると「今日1日、機嫌よく過ごせますように……」と祈った。話を続けよう。

池田さん:ある日、朝ごはんを食べている最中でした。イライラした私がいつものように妻に怒り出しました。そのとき3歳だった長女が妻に「ママがしっかりしないからでしょう」と言いました。妻にとってみれば、理不尽この上なくつらかったと思います。こんなことが繰り返されたら、子どもにとってもよくないと思ったでしょう。

妻が家を出て行く少し前、妻から「些細なことで怒られすぎている。専門家に相談したら、あなたがやっていることはDVだと言われた」と告げられました。そして「DV 加害者プログラムを受けてほしい。今度怒られたら出て行くから」と言われました。

妻はICレコーダーを買っていました。それを見て、私はまたしても怒りがこみ上げ「俺の会話を録音して離婚の証拠にするんだろう」と、ひどいことを言いました。

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photo/iStock

妻にしてみれば、苦しくて、これ以上は耐えられないと追い詰められていたのでしょう。でもこの段階まで来ていても、私は妻が出て行くとはまだ思っていませんでした。「そんな簡単に離婚になるはずがない」という思いがありました。

その後も、夜10時ごろに喧嘩をして、妻が実家に行くと言い出し、子どもを自転車に乗せて出て行こうとして、それをなだめて止めたことがありました。全く学習していませんよね。よくよく考えればおかしい話なのですが、DV加害者プログラムなんて受けなくても、自分一人で変われると思っていました。

私が小学生の頃に、遠い親戚のおばさんが再婚しました。その後、母から「再婚した夫と喧嘩をして、夫の手の甲にフォークを突き刺したそうだよ」と聞きました。そんな怖いことがあったのに、そのおばさん夫婦は離婚しませんでした。だから(自分たちも)大丈夫という思い込みがありました。

最後の日は、あっけなくやってきました。休みの日、妻と言い合いになり、またしても私は怒り出してどうにもならなくなって外出したのです。「またやってしまった」。気持ちが落ち着いた後、反省して妻にメールをしました。しかし、返事は「子どもを連れて実家に帰ることにしました」と。それ以来、妻も子どもも、この家に帰ってくることはありませんでした。

いよいよマズイかもしれない……。そう思ったのはこの何週間か後でした。

次回は、なぜあの時、暴力やモラハラをやめられなかったのか。「取り返しがつかないことをしてしまった」と後悔する池田さんが、DVの背景にあった虐待を受けていた子ども時代を振り返りながら、自らの気持ちの変化を語る。池田さんの中にある心の傷とは––––。

次回の記事『包丁を持ち出す母、罵声を浴びせ暴れる父。親のDV見
て育った過去』は、11月24日6時公開予定です

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