世界に500台しか存在しない“特別なアルファロメオ”とは? ノーマルの“クアドリフォリオ”とは別物! 「ジュリアGTAm」は速さが驚異的

世界に500台しか存在しない“特別なアルファロメオ”とは? ノーマルの“クアドリフォリオ”とは別物! 「ジュリアGTAm」は速さが驚異的

  • VAGUE
  • 更新日:2023/11/21

“軽量化されたGT”をさらに“改造した”「ジュリアGTAm」

先のマイナーチェンジで、ES30型「SZ」「RZ」や「159」「ブレラ」といったかつての名車からインスパイアを受けた3眼×2の目つきとなり、より彫りの深い顔立ちとなったアルファ ロメオ「ジュリア」シリーズ。

同シリーズの最高峰であり、アルファ ロメオ史上最速のセダンともいえる「ジュリア クアドリフォリオ」も本国でマイナーチェンジ済みですから、こちらもそう遠くない時期に上陸するものと予想されます。

【画像】「えっ!…」世界に500台だけ! 超希少なアルファ「ジュリアGTAm」を写真で見る(25枚)

そんなクアドリフォリオには、実はさらに特別なモデルが存在しています。ある意味、“究極のジュリア”ともいえるそのモデルこそ、「ジュリアGTA」と今回フォーカスする「ジュリアGTAm」です。

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アルファ ロメオ「ジュリアGTAm」は、全身に走りを極めるためのモディファイが加えられた“究極のジュリア”

GTAとGTAmは2021年に世界限定500台にて予約受付がおこなわれ、瞬く間に完売。日本には世界最多の台数が上陸することになったのですが、それでも88台という少なさです。

アルファ ロメオのオーナーは走ることが好きな人が多いため、イベントの場などでその姿を見かけることもありますが、同時に、相当数がコレクターズアイテムとして秘蔵されているといわれており、街中ですれ違う機会などありません。

先日、幸いなことに、ジュリアGTAmに試乗できるという夢のような時間を体験できたので、今回はその印象をお伝えしたいと思います。

ところで、アルファ ロメオのGTAやGTAmとは、どんなクルマを指す名称でしょう? GTAはイタリア語の“Gran Turismo Alleggerita”の略で「軽量化されたGT」という意味。さらにGTAmの“m”はイタリア語の“modificata”の略、つまり「改造済み」であることを表します。

創業翌年の1911年にレース活動をスタートしたアルファ ロメオは、第二次世界大戦後もF1世界選手権の初年度を圧倒的な強さで制したほか、公道レース、ツーリングカーレース、スポーツカーレースなどで華々しい戦績を残してきました。

そして1965年、アルファ ロメオはレースに参戦するためのベース車両を市販します。それが、初代「ジュリア・クーペ」をベースにした「ジュリア・スプリントGTA」と「GTA1300ジュニア」です。

この2モデルはエンジンなどに特別なチューニングを受けていましたが、最大の特徴はその車体。ボディをまるごとアルミニウム製とし、ベースとなった「ジュリア・スプリントGT」比で200kg以上もの軽量化を成し遂げていたのです。

当然、GTAはツーリングカーレースで猛威を奮い、発展版である「1750GTAm」、「2000GTAm」と合わせて世界中でいくつものタイトルを獲得します。まさに、アルファ ロメオの黄金期を築いた伝説的な存在であり、歴史的な名車でもあるのです。

アルファ創立105周年の節目に誕生した「ジュリア」

以来、GTAという名称は、アルファ ロメオのパフォーマンスの高さを象徴するものとなりました。

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アルファ ロメオ「ジュリアGTAm」は、全身に走りを極めるためのモディファイが加えられた“究極のジュリア”

市販モデルとしての次のGTAは、1997年にデビューした「156」の時代に誕生します。こちらはレース参戦のためというよりも、156シリーズの高性能モデルとしての意味合いが強く、V6エンジンをチューンナップしてパワーとトルクを引き上げ、サスペンションや空力にも手を入れ、速さもさることながら官能的なドライブフィールを感じさせるモデルに仕上がっていました。

ちなみにその「156GTA」は、ジュリア・スプリントGTAのような軽量化こそおこなわれていませんでしたが、パワーウエイトレシオはシリーズ中、最も優れた値をマーク。相対的な軽量化が図られていたことから“Alleggerita”を名乗ったという説があります。けれどおそらくは、パフォーマンスの高さの象徴としてのGTAなのだろうなと筆者は考えています。

そして最新のGTAとして発表されたのが、2021年に誕生したジュリアGTAとジュリアGTAmです。驚いたことにこの2台、ある意味、初代GTAを凌駕するような凝ったつくりのモデルだったのです。

2代目ジュリアが発表されたのは、2015年の6月24日。アルファ ロメオが創立105周年の節目を迎えた、まさにその当日でした。

そのちょうど1年前、主に株主や投資家に向けてアナウンスされた中期計画の中で、アルファ ロメオは「革新的なエンジン」「50:50 の前後重量配分」「独創的な技術的ソリューション」「卓越したパワーウエイトレシオ、」「洗練されたイタリアンデザイン」という5つの要素を備えたニューモデルを近い将来、発表すると予告していたのですが、まさにそれがジュリアだったのです。

なかでもアルファ ロメオらしいエピソードといえるのが、最初にお披露目されたのがトップパフォーマーのクアドリフォリオだったこと。パワーウエイトレシオは3.0kg/ps。0-100km/h加速タイムは3.9秒。最高速度は307km/h……。

「ハイパフォーマンスセダンといえばドイツ車の独壇場と思ってたけれど、それらに匹敵するかも……」なんて考えてたら、2016年にはニュルブルクリンクの北コースで、当時の4ドアセダン世界最速記録となる7分32秒というタイムをたたき出し、“世界一速いセダン”の称号を手に入れたのでした。

しかも、単に速いだけじゃありません。実際にステアリングを握るたび、ジュリア・クアドリフォリオは歓喜に近い気持ちを味わわせてくれました。他国のスポーツセダンとは明らかに異なる官能性を備えていたのです。

リアシートのない「ジュリアGTAm」は約100kgの軽量化を実現

そして2020年、アルファ ロメオは創立110周年を記念し、伝説のGTA/GTAmの名を与えたジュリアを復活させると発表したのです。

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アルファ ロメオ「ジュリアGTAm」は、全身に走りを極めるためのモディファイが加えられた“究極のジュリア”

新世代のGTAは、リアルに“alleggerita”なモデルとされていました。ボディ各部やインテリア、機能パーツなどにカーボンファイバー、アルミニウム、ポリカーボネート樹脂が多用され、GTAでおよそ75kg、後席のないGTAmでは約100kgの減量を果たしていたのです。

もちろん、エンジンにもしっかりと手が加えられていて、最高出力はクアドリフォリオ比プラス30psの540psに。最大トルクはクアドリフォリオと同じ600Nmですが、発生回転数は2500rpmに引き下げられていました。

それらは、ターボの過給圧アップやECUのマッピング変更、アクラポヴィッチ製チタンエキゾーストなどにより実現したものですが、実はコンロッドを新設計してピストンのオイルジェットを倍にし、オイルクーラーも新調するなど、潤滑系や冷却系にまで改良の手が及んでいます。速くするだけじゃなく、耐久性や乗りやすさまで考えたチューンナップが施されていたのです。

またシャシーにも、驚くほどのチューニングが加えられていました。フロントのトレッドを25mm、リアのトレッドを50mm拡大し、ショートホイールベース化と同じ効果をねらっていたのです。ホイールベース/トレッド比はさらに敏捷性の高さを示す数値となりました。

もちろん、電子制御式アクティブサスペンションのセッティング変更、スプリングのレートやデフのロッキングレートの変更、トルクベクタリングのキャリブレーションの見直しなどもおこわれています。

また、フロントからリアにかけての地上高を変えてアンダーステア対策を講じると同時に、フロア下の空気の流れを見直し、さらにリアディフューザーを加えることでダウンフォース量を増やしています。

空力関係では、F1で関係のあるザウバーのエンジニアリング部門の協力を得て、フロントのカナードやエアスロットを増設。大型サイドスカートを採用したり、さらにGTAmには長さを40mm調整できるフロントスプリッターと、同じく4段階に角度を調整できるリアウイングを追加したりと、大小さまざまなチューニングが施されました。

その結果、ダウンフォース量はGTAがクアドリフォリオの1.5倍、GTAmでは3倍の数値を得ています。

生産台数は、GTAとGTAm合わせて世界限定500台。当然のごとく瞬時に完売しました。というよりも、生産台数をはるかに上回る数の申し込みが殺到した、とお伝えする方が正確ですね。

そして、発売当時の価格でGTAが2064万円(消費税込/以下同)、GTAmが2198万円とクアドリフォリオより1000万円ほど高額だったにもかかわらず、日本には合わせて88台という世界で最も多いGTA/GTAmが上陸することになったのです。

最初に驚かされたのは意外にも「乗り心地のよさ」

普通ならまずステアリングを握る機会などないであろう、真打ち的存在のジュリアGTAmをドライブできる日がやってきました。まず素晴らしいと感じたのは、クアドリフォリオの延長上にあり、ジュリアであってジュリアではないその乗り味です。

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アルファ ロメオ「ジュリアGTAm」は、全身に走りを極めるためのモディファイが加えられた“究極のジュリア”

GTAmは、ジュリア・クワドリフォリオという出来のいいベースモデルを活かしながら、コストと手間を惜しまずに走りを磨きに磨き込んだロードカー。その一足飛びの進化は異次元に感じられるほどの感動を与えてくれたのです。

最初の驚きは、乗り心地のよさでした。その出で立ち、その存在感から、もっと足回りがガチガチに硬いクルマを想像しがちですが、ハイパフォーマンス化に当たっておこなわれたサスペンションのチューンナップとセッティング変更は、快適性にも大きなメリットを与えています。「コーナーで踏ん張ればいいや」という脚にはなっていないのです。

もちろん、引き締まってはいますが、ガッチリ感が飛躍的に高まった車体から伸びる脚はしっかりよく動き、路面の表情をガツゴツと伝えてくることもなく、フルバケットシートに収まってるにもかかわらず、クアドリフォリオはおろかスタンダードのジュリアよりも乗り心地がいいように感じられたほど。

GTAmはしばしば、ジュリアで最もスパルタンなモデルと形容されますが、そういう意味では全くスパルタンではありません。相当ハイコストなダンパーやかなり高度なチューナップなどが投入されてるに違いありません。

もうひとつ驚かされたのは、やはり軽さでした。ベースモデル比で100kgも軽くなっていれば、いくら鈍い僕にだって分かります。アクセルペダルをジワッと踏み込んでタイヤが転がった瞬間に「おっ!?」と思い、そのままジワッと踏み増ししてゆっくり加速していくだけで「おぉ、やっぱり……」と軽さを感じられたほど。

最初のコーナーをスルッとやり過ごしたときのクルマ全体の軽快な動きに、期待感は増すばかり。そしてその期待感は、それをさらに大きく越える走りっぷりで満たされたのでした。

「ジュリアGTAm」はとにかくファンタスティック!

もちろん、エンジンは絶品です。スタートさせるだけで思わず口元が緩みます。ジュリア・クアドリフォリオよりもサウンドのツヤっぽさを増している印象で、さらにリズミカルな響きを聴かせるような感じがして、それだけで機嫌がよくなるのです。

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アルファ ロメオ「ジュリアGTAm」は、全身に走りを極めるためのモディファイが加えられた“究極のジュリア”

ただでさえ名機というべき2.9リッターのV6ターボは、アクセルペダルをほんのわずかに踏み込むだけで、絶妙に呼応して瞬時にサウンドを変化させ、同時に加減速のGへと変えていきます。その反応のよさは、クアドリフォリオのそれを明らかに上回るものです。

ゆっくり走らせるだけでそうなのですから、そこから先のゾーンは想像していただけるでしょう。エンジンの吹け上がりの鋭さ、回転のなめらかさ、回すに連れてパワーが炸裂していく感じ、そして、自在にオクターヴを変化させながら気持ちをとろけさせてくれるサウンド。これらはクルマ好きにはたまらない、アルファ ロメオからの贈り物なんだと思います。

もちろんフィーリングがいいだけじゃありません。速い。速いです。クアドリフォリオ比でマイナス100kgということは、パワーウエイトレシオから換算するとプラス30.3ps分のアドバンテージを得たことに相当。さらに、30psというエンジンのパワーアップ分を加えると、合計約60psが上乗せされた計算です。

だから速い。速いのです。1速ギアの全開加速では、呼吸をする間もなくほとんど瞬時に吹け切りそうになり、2速では美しくサウンドが弾ける快感とめくるめく速度の乗りに呼吸をするのを忘れそうになり、3速でもシチュエーションによってはうっかりホイールスピンをさせてしまうほど。あらゆる意味で鳥肌モノなのです。

だからといって扱いづらさは微塵もなく、アクセルペダルを踏む右足の教育さえ行き届いていれば、とても柔順に走ってくれるのです。

加えて、カーボンセラミック製ブレーキも絶品でした。ペダルを踏んだ瞬間にグッと噛んで減速Gを生み出そうとするのですが、その噛み加減が絶妙で、ペダルの踏み具合に極めて忠実に減速Gをコントロールしてくれるのです。ペダルそのもののフィーリングも抜群。スポーツドライビングを楽しむときの大きな武器になってくれます。

ブレーキでねらったとおりの減速具合を手に入れつつ、フロントに若干の荷重を残したままコーナーに飛び込んでいくと、いや、曲がる曲がる。素晴らしくよく曲がります。

12対1を下回る恐ろしく速いステアリングギア比がノーズを瞬時にインにつかせ、ワイドトレッド化=ショートホイールベース化されたシャシーがそれを受けとめながら素早く旋回を決めさせます。車体の軽さがクルマの余分な動きを抑え、強靱な筋肉のようなサスペンションと極太のタイヤと空力デバイスが、ガシッと路面をとらえながらコーナー出口に向かわせるのです。

しかも、そのときのクルマの挙動は軽やかにしてソリッド。タイヤの接地感も高いです。かといって、タイヤのグリップだけに頼ってる感じはありません。元気よくコーナーを抜けていきながらアクセルペダルをグッとプッシュすれば、後輪にグリップを放棄させるのはいとも簡単ですし、ステアリングでもアクセルペダルの加減でもどちらでも──あくまでも慣れと理解と腕があればという前提ですが──その動きをコントロールしていくことはそう難しいことではありません。

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GTAmはとにかくファンタスティック! ノーマルのジュリア・クアドリフォリオを買って1000万円かけてモディファイしても、こうはなりません。

メーカー謹製の完成度の高いスペシャルモデルというのは、そういうもの。手に入れることのできたオーナーさんがうらやましくて仕方ありません。

●ALFA ROMEO GIULIA GTAm
アルファ ロメオ ジュリア GTAm
・全長:4669mm
・全幅:2024mm
・全高:1397mm
・ホイールベース:2820mm
・車両重量:1580kg
・エンジン形式:V型6気筒ターボ
・排気量:2891cc
・駆動方式:RWD
・変速機:8速AT
・最高出力:540ps/6500rpm
・最大トルク:600Nm/2500rpm
・タイヤ:(前)265/30R20、(後)295/30R20

嶋田智之

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