「ファイナルファンタジーとは?」作り手たちの“たったひとつの答え”からみる情熱と崖っぷちからの逆転

「ファイナルファンタジーとは?」作り手たちの“たったひとつの答え”からみる情熱と崖っぷちからの逆転

  • 文春オンライン
  • 更新日:2021/02/23

初代発売は1994年…あなたの選ぶ「一番名作だった歴代PlayStation」は?から続く

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文春オンラインで昨年に実施した「もう一度やりたい!プレステゲーム」アンケートで、トップは並みいる名作・傑作を押しのけて、「ファイナルファンタジー(FF)」になりました。ダウンロード版を含めると1987年の第1作発売から世界出荷1億5900万本以上を誇る大ヒットシリーズですが、実は企業存亡を賭けた“崖っぷち”から始まったのはご存じでしょうか。先鋭的な挑戦と逆転を続けた軌跡を振り返ります。

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第7作リメイク版も500万本以上の販売本数となった「ファイナルファンタジー」シリーズ Ⓒ SQUARE ENIX CO., LTD. All Rights Reserved. CHARACTER DESIGN: TETSUYA NOMURA/ROBERTO FERRARI LOGO ILLUSTRATION: Ⓒ 1997 YOSHITAKA AMANO

「ドラゴンクエストの対抗馬になるものは扱えない」

FFの誕生は、ファミコンに参入したスクウェア(当時、現スクウェア・エニックス)がなかなかヒット作を生み出せず、経営の苦しい「存亡の危機」に立たされていたところからはじまります。エニックスの人気ゲーム「ドラゴンクエスト」に注目したゲームクリエーターの坂口博信さんが、「最後に大きな夢を見よう」と残された資金と社内の開発陣を総動員してRPGの開発に着手。崖っぷちの土壇場で、まさしく「最後の夢(ファイナルファンタジー)」を抱き、力をふりしぼって生み出されたのが初代FFでした。

当初は、情報を掲載してもらうため雑誌社に行っても「ドラゴンクエストの対抗馬になるものは扱えない」と門前払いをされるなど、苦労もあったといいます。しかし、市場は「面白いもの」「良いもの」を放っておきませんでした。

初代FFは、「ゲームは子供のもの」と思われがちな中で、イラストレーターの天野喜孝さんを起用し、クールでスタイリッシュな作風に仕上げました。ゲームの序盤を終えてからオープニングが立ち上がるなど演出面でサプライズがあり、天才プログラマーの手でありえないハイスピードで動く「飛空艇」を登場させて、ゲームファンの度胆を抜きました。初代FFは50万本のヒット作となり、シリーズの快進撃は始まります。

進化を続け日本を代表する大作ゲームに

FFシリーズといえば、常に挑戦をすることでも知られています。RPGではキャラクターが敵を倒して経験値を貯めてレベルアップをして強くなるのが定番です。FF2では、レベル制ではなく、武器や魔法の使用、戦闘中の行動で能力がアップするシステムにしました。FF3では、その後のシリーズでおなじみになったナイトや黒魔道士など好きなタイプの“職業(ジョブ)”が選べるシステムを導入。自由度の高さもあり、さらに人気となりました。

その後も快進撃は続きます。三角関係と裏切りという大人の物語を描いたFF4。ドット画のCGの美しさを極め、オペラの演出を取り込んだFF6。このころにはシリーズの新作を出せば、確実に200万本以上の売り上げが見込める、日本を代表するゲームに成長しました。

“新参”だったプレイステーションとの運命の出会い

さらなる飛躍となったのがFF7。「映画とゲームの融合」を追求して、当時ゲーム業界の“王者”だった任天堂のゲーム機ではなく、データ容量の大きいCD-ROMが使える“新参”のゲーム機「プレイステーション(PS)」で出すことを選んで業界に衝撃を与えました。

1997年に発売されたFF7は、CD-ROM(最大650MB)3枚組みという膨大なデータ量を生かし、名作映画「ブレードランナー」を思わせるサイバーパンク的な世界を3DCGで演出。同業者すらも衝撃を受けるグラフィックにファンは狂喜しました。

見た目だけではありません。現実の社会問題だったエネルギー問題を織り込み、ヒロインの一人が志半ばで死ぬ衝撃の展開も、ファンを大きく惹きつけます。そのうえやりこみ度十分のゲームシステム……。スキはありませんでした。

結果、前作(FF6)を大きく上回る325万本を売ることとなり、PS本体の売れ行きもけん引したことから、「ソフトの力」でゲーム機を爆発的に売った歴史的作品となったのです。

順風満帆な矢先に直面した“巨大な壁”

ところが、“巨大な壁”に直面します。映画事業への挑戦が「落とし穴」になったのです。

巨額を投じて注目を集めたフルCG映画「ファイナルファンタジー」は、北米地域の興行収入が3000万ドル台と計画の半分にとどまり、日本での上映も2週間で打ち切られ、スクウェアは約139億円の特別損失を計上します。同社は、映画事業からの撤退を発表するなど、危機を迎えます。

そこでFFは方針転換を図ります。従来はわざわざ1作ごとにストーリーやゲームシステムをガラリと変えていましたが、既存作品の活用とコスト削減の観点からシリーズ続編の開発に着手したのです。

そして2003年にFF10の続編「FF10-2」を出すと、売り上げは国内だけで200万本を記録。FF7のその後の世界を描いた映像作品「アドベントチルドレン」も人気となりました。

そして2002年にはオンラインRPG「FF11」のサービスを開始します。

当時はオンラインゲームのビジネスが「時期尚早」と言われている状況。そんな中での“船出”でしたが、日米欧のゲームプレーヤーを同じサーバーに接続させることで、サーバーのピークタイムを均一にしてコストを削減。サービスは成功し「パッケージソフトを売って終わり」という考えが常識だったゲームビジネスで、長期の月額課金という収益モデルが生まれました。FF11は、間もなくサービスを開始して20年に届く“ロングセラー”になり、収益に大きな貢献をすることになったのです。

「FFとは何でしょうか」へのたったひとつの答え

近年のFFシリーズも挑戦的な作品が多く、時には問題を抱えながらも解決し、最終的に成功させ続けています。

オンラインゲームの「FF14」は、当初は社長自らが失敗を認めたものの、そこから2年以上かけて巻き返し、「FF11」以上の同時接続者数を獲得するゲームとして生まれ変わり評価は一変しました。

そして仮想の神話世界を打ち出したFF13シリーズですが、当初「FFヴェルサス13」と呼ばれた作品は、10年以上かかり、対応ゲーム機もPS3からPS4に変わりました。それでも最後は、オープンワールドのRPG「FF15」になり世界で950万本以上を売りました。

そして昨春に発売された「FF7リメイク」。1作では完結しない「分作」で、さらに普通のソフト以上の価格設定にしたこともあり、発売前には批判も集まりましたが、フタを開けてみれば500万本以上を売ることになりました。

FFシリーズは、作品ごとにプロデューサーが変わり、ゲームシステムも世界観もまちまちです。クリスタルや魔法名、シドなどのキャラクターなど共通の“お約束”はありますが、決まりごとが緩いのです。

FFシリーズのプロデューサーに取材する機会があると「FFとは何でしょうか」と質問してきました。すると皆さんは、一瞬ためらいつつも、口をそろえて「(前述の)“お約束”を踏まえつつ、最新の技術を用いて、自身が作りたいものを全力で作る」とかみしめるように答えています。同時に責任者は坂口さんの元へあいさつに行くそうで、坂口さんの答えも「頑張って」と後押しをするだけで、束縛をしないそうです。

“生みの親”の若い世代への信頼と、それに応えて全力を尽くす実力のあるクリエーターの情熱。必要とあれば時間とお金を投じて挑戦を続け、目の肥えたファンをうならせる高品質の作品を作り出してきました。だからこそ多くのゲームファンの胸に感動を刻み続けているように思えるのです。

(河村 鳴紘)

河村 鳴紘

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