東工大、発光効率95%ながら有害元素を含まないハロゲン系青色発光体を開発

東工大、発光効率95%ながら有害元素を含まないハロゲン系青色発光体を開発

  • マイナビニュース
  • 更新日:2020/09/16
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東京工業大学(東工大)は9月14日、カドミウムや鉛などの有害元素を含まず、なおかつ波長の変換効率を表す発光効率が95%と高いハロゲン系青色発光体「Cs5Cu3Cl6I2」を開発したと発表した。

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同成果は、同大学元素戦略研究センターのリ・ジャンウェイ研究員、キム・ジョンファン助教、細野秀雄 栄誉教授らの研究チームによるもの。詳細は、ドイツの科学誌「Advanced Materials」オンライン版に掲載された。

光をどれほど効率よく作れるかを表した指標として、吸収した光子の数のうちの放出された光子の数の割合で導き出される「発光効率」がある。高い発光効率を有する材料として近年注目を集めているのが、「量子ドット」や「ペロブスカイト型ハロゲン化物」などだ。しかしこれらは、カドミウムや鉛などの有害元素を含んでいることが大きな課題となっている。

そうした状況から、研究チームは以前より有害元素フリーの新規発光材料の開発を進めてきた。その結果、2018年には90%以上という高い発光効率のハロゲン系青色発光体「Cs3Cu2I5」の開発に成功。それによってハロゲン系青色発光体に注目が集まるようになり、多くの研究者によって開発が行われてきたが、高い発光効率と大気安定性という条件を共に満たすのは、結局のところ「Cs3Cu2I5」のみ。発光効率や大気安定性を高めるために必要な要因の解明が求められていた。

研究チームが今回、新たなハロゲン化物発光体を発見するために着目したのが、2種類以上のアニオン(陰イオン)の化合物である「複合アニオン化合物」だ。イオン半径が比較的近い2種類のアニオンを用いることは、発光波長を幅広く変化させられるという利点があるが、発光特性や大気安定性の面で課題があった。そこで今回選ばれたのが、イオン半径が大きく異なるヨウ素イオンと塩素イオンからなる複合アニオン化合物である。

ただし一般的な考え方からすると、ヨウ素イオンと塩素イオンを用いれば「Cs3Cu2I5」と「Cs3Cu2Cl5」に相分離することが当初は予想されていた。しかしまったく新しい結晶相が精製される場合は違った結果になる可能性もあったことから、研究チームはヨウ素イオンと塩素イオンの複合アニオンを許容する新しい相の有無の調査を実施。その結果、「Cs5Cu3Cl6I2」という新たな相の存在が確認されたのである。

「Cs5Cu3Cl6I2」の発光波長は、「Cs3Cu2I5」よりもやや長波長側にシフトした460nmであることが分析で判明。そして発光効率は95%と高いことも確認された。これまでに開発されたどのハロゲン系青色発光体よりも高い値だったという。

大気安定性に関しては、90日間大気中に放置しても劣化が見られなかったという。塩化物発光体は大気中での劣化が数多く報告されているが、「Cs5Cu3Cl6I2」は塩素がアニオンの75%を占めているにもかかわらず、優れた大気安定性を示した。その理由としては、ヨウ素イオンが多面体同士の結合位置を占有し、かつ価電子帯上端を塩素イオンに代わって支配していることが大きく影響していると考えられるとしている。

また、95%という高い発光効率についても考察を実施。Cuを含むハロゲン系発光体のほとんどでは、発光は「自己束縛励起子」から生じる。自己束縛励起子とは、励起子-格子相互作用により、結晶格子が大きく歪んだ状態で励起子が特定の場所に局在していることをいう。この自己束縛励起子の生成には、正孔が空間的に局在されていることが望ましい。また「Cs5Cu3Cl6I2」の伝導体下端には、比較的大きなバンド分散が見られる。よって、価電子帯上端に生成した局在した正孔と、伝導体下端の遍歴性の高い電子によって、発光効率の高い自己束縛励起子が効率よく生成されることが、「Cs5Cu3Cl6I2」の高い発光効率につながっていることが考えられるとしている。

研究チームは今後、今回の成果に基づき、赤色や緑色発光体についても新たな探索を実施し、低コストかつ省エネの白色光を実現することを目指すとしている。

波留久泉

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