【センバツ】東北、笑顔で楽しむ“洋さん野球”最後まで貫いた...チャンスでもノーサイン

【センバツ】東北、笑顔で楽しむ“洋さん野球”最後まで貫いた...チャンスでもノーサイン

  • スポーツ報知
  • 更新日:2023/03/19
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◆第95回センバツ高校野球大会第1日 ▽1回戦 山梨学院3―1東北(18日・甲子園)

開幕戦で12年ぶり20度目出場の東北(宮城)は2年連続6度目出場の山梨学院に1―3で惜敗した。初戦敗退という悔しい結果に終わったものの、昨年8月に就任したOBで元巨人の佐藤洋監督(60)とともにノーサインで戦うなど「自立・自律」をテーマにした野球を展開。選手が主役の“新生・東北”の姿を春の聖地で全力披露した。

12年ぶりに戻ってきた春の聖地で、伝統の縦縞のユニホームがエンジョイベースボールを披露した。苦しい場面でも、好機の場面でも、東北ナインは雨上がりの曇天を吹き飛ばすかのような笑顔でプレー。佐藤監督は「いつも通り笑顔で楽しんでいたし、子どもたちに(楽しむ)野球を返すというテーマでやってきて、少しは返せたかなと思う」と指揮官として初の聖地を振り返った。

先発したエース・ハッブス大起(3年)は4回2/3を投げ5安打5四死球で2失点。続く左腕・秋本羚冴(りょうご)も3回1/3を5安打1失点と強打戦を粘り強く抑えた。野手陣も低めの変化球に苦戦しながらも意地を見せ、7回2死一、二塁で伊達一也(3年)が三塁強襲の適時二塁打。その後は得点に結びつかずあと2点及ばなかったが、佐藤響主将(3年)は「思ったより緊張もなく、最後まで諦めることなく戦いきれた」と納得の表情だった。

昨年8月にOBで元巨人の佐藤監督が就任。「自立・自律」をテーマに佐藤監督を「洋さん」と親しみを込めて呼び、楽しむ野球を目指してきた。大舞台でも選手が主役のエンジョイベースボールは健在で、得点圏に走者を置いた場面でもノーサインを貫いた。佐藤監督は「ランナーを送れなかったのは一つの決断」と話し「子どもたちが自主的に判断して、結果を考えて、改めて行動して大きく成長しようということなので、そういう意味ではとてもいいゲームだった」とナインの一つの挑戦に前向きだった。

野球以外の場面でも練習前に佐藤監督が一般常識や考え方などを説く「道徳の時間」を作り、意識も改革。徐々に相手を思う気持ちを養ってきたナインは、センバツ前の遠征やキャンプを「目配り気配り合宿」だと意気込み、食事の際に上座・下座まで意識するなど、人間力を鍛えてきた。エース・ハッブスも「生活が変わると野球でも見える場所や意識も変わった」と効果を実感。佐藤監督も「想像以上の成長。皆が使命感を持って一緒に戦ってくれていることに感謝」と話す。

それでも悔しさはこみ上げてくる。佐藤主将は「もっと“洋さん野球”を見せたかった。結果が出るんだと、夏は勝って証明したい」。野球界を変えるという大改革の旗を立て、聖地へ乗り込んだ東北ナイン。逆風のでこぼこ道を進むかもしれない。それでも夏に“洋さん”とこの聖地に戻ってくる日を目指し、全力でエンジョイし続ける。(秋元 萌佳)

★東北・秋本羚冴(りょうご)投手(3年。5回途中から登板して5安打1失点)「ピンチでも落ち着いて投げられたけど、制球力がだめだった。もっとレベルアップしないと甲子園では勝てない」

★東北・佐藤玲磨右翼手(3年。5回にチーム初安打など2安打をマーク)「あまり緊張せずに楽しめた。ヒットを打てて良かったけど、得点に絡めなかったのは悔いがある」

★東北・伊達一也左翼手(3年。7回にチーム唯一の得点となる三塁線を破る適時二塁打)「追い込まれていたので何でも打とうと(バットを)短く持った。もっとチャンスに強くなるように、日頃から意識して練習していきたい」

◆震災直後、11年大会時の監督・OBもアルプス席から応援…元監督・五十嵐校長試合覚えていない

東北にとって東日本大震災発生後の11年以来、12年ぶりとなるセンバツ舞台。あの頃を知る人々が一塁側アルプス席に詰めかけた。当時監督を務めていた五十嵐征彦校長(47)は「客席がたくさんの人で埋まっていた。でも試合(の内容)はほとんど思い出せないんですよ」と振り返りながらも、「全力疾走とか、選手たちはできることをやってくれたのは覚えている」。試合の9日前に大阪入りして練習を再開し、万全ではないなか全力で躍動した教え子たちを思い出していた。

当時背番号11をつけ、1回戦・大垣日大戦(0―7)も3番手で登板した片貝智晴さんも駆けつけた。甲子園を訪れるのもあのとき以来だという。「声援の大きさは今でも覚えているし、甲子園に来るまでのこともよみがえってきました」と話すと、選手たちに声援を送っていた。

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