
自宅でくつろぐ田村さん家族3人
電気、ガス、水道の生活インフラ契約なしで、可能な限り自給自足の生活を青森県南部町で送る田村余一さん(45)、ゆにさん(35)夫妻と長男の泰地ちゃん(4)。4度目の冬を越え、間近に迫った春を待ちわびている。4月からはこれまで得た知識を共有し、県内外から12組の個人・家族が順次、同町に通ったり滞在したりしながら、緩やかに助け合うコミュニティーをスタートさせる。
世界的な社会情勢の変化等で、世間が電気料をはじめとした生活用品全般の値上げに頭を悩ます中「そんな実感はほとんどない」(余一さん)と、地に足をつけたマイペースな生活を続ける。田村家の暮らしは朝のコーヒータイムでスタート。朝食を含め3食取るのは泰地ちゃんだけで、余一さん、ゆにさんは基本的に夕食1食のみ。独身時代からの習慣という。コーヒータイムは簡単なミーティングを兼ね、その日の動きを確認する貴重な時間。泰地ちゃんもお茶で参加する。
自給自足といっても、パソコンもスマートフォンも、車も利用し、アナログとデジタルのハイブリッド生活を送る。ソーラーパネルによる太陽光発電と蓄電池を組み合わせ電気を生み出し、小型冷蔵庫を使う夏場以外は電力に余裕があるという。自分たちで自作できないしょうゆや肉はスーパーなどで購入、3人の生活には月4万円程度かかる。
幼稚園に通っていない、わんぱく盛りの泰地ちゃんだが、野山を駆けまわり、植物の知識を身につけたかと思うと、スマホで見た戦隊ものや忍者の動画に夢中になったり、英語を覚えたり、プラスチック製ブロック玩具で造作を楽しんだりと、伸び伸びと成長。ゆにさんが泰地ちゃんの世話を週5日しており、ご用聞きの仕事をしている余一さんは2日だが、4月からは余一さんが3日に増やし、畑仕事をしているゆにさんの負担を減らすという。
テレビのバラエティー番組で全国的に知られるようになった一家。日々忙しいながら、都会で暮らしていたストレスから解放され、「倒れるように眠る」(余一さん)日々だという。
余一さんは、村コミュニティーづくりのサイト「うちみるコミューン」やユーチューブなどで情報発信をしており、4月以降はあり余る土地を活用し実際に動き出す。個人・家族ら12組のうち、1組が夏以降に完全移住予定で3、4組は春から秋ぐらいまでの滞在、その他は周辺の市町村に住み、都合のいいときに通うという。
余一さんは「これまで家庭単位でやってきたことを広げると、今までできなかったことができるようになる。生産した野菜や果実をシェアし、お金だけでは得られない豊かさを分かち合いたい」と話している。
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田村ファミリー 南部町出身でアナログ、デジタルを交ぜ合わせ、サイトなどで得た知識を活用して家を建築するなど精力的に活動している田村余一さんと、北海道出身で、歌手を目指して東京で活動し365日着物で生活、ネット上で行われた余一さんのお嫁さん募集に応募し結婚して同町に移住したゆにさん、2018年に生まれた泰地ちゃんの3人家族。余一さんは地域のご用聞きをしながら“外貨”を稼ぎ、ゆにさんが畑作業の中心になるとともに、インスタグラムなどで暮らしの知恵、野菜の知識等を発信している。夫妻の著書に「都会を出て田舎で0円生活はじめました」(サンクチュアリ出版)がある。