
自分は本当は地球人ではない。別の惑星にいたのだが、魂が転生して地球にやってきたのだと信じている人がいる。
自分は宇宙由来の魂を持つ宇宙人であるという彼らは「スターシード」と呼ばれており、最近その数が増加傾向にあるそうだ。
スターシードたちは、この地球より良い方向へと導くために使命や役割を持ってやってきたのだという。
いまだに地球外知的生命体は発見されていないが、どうして自分のことを宇宙人と信じ込んでしまうのだろうか?
心理学者によると、そこには「自分を宇宙人と信じたくなる心理学的効果」があるらしい。
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宇宙由来の魂が転生に地球にやってきた宇宙人「スターシード」
スターシードに出会いたいのなら、ちょっとネットを散策してみればいい。TikTok、Instagram、Twitter、FacebookなどのSNSには、異星からやってきたと主張する人たちの投稿がたくさんある。
#starseedというはハッシュタグ付きの動画は、TikTokで10億回以上再生されているほどだ。
そうした人たちは、自分が地球以外の惑星からやってきたと主張する。宇宙由来の魂を持っており、その点、地球由来の魂を持つ「アースソウル」とは違うという。
スターシードが元々いた惑星は地球よりも高次元へ進んでいるそうで、わざわざ地球にやってきたのは、地球の次元を上昇させるため、神の領域との橋渡しをするためだという。
遠路はるばるご苦労様と言いたくなるが、彼らにとってそれはそれほど大変なことではないのかもしれない。
というのも、スターシードは瞑想することで銀河から銀河へと移動できるらしいからだ。また、彼らは「ライト・ランゲージ」なる魂の言葉で会話ができるとも言われている。

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スターシードの見分け方
そんなスターシードを見分ける方法もあるようだ。
たとえば、スターシードは、しばしば人生の意味を探していたり、自分の居場所がないと感じていたりするのだという。スピリチュアルを重んじ、直感が働くことも彼らの特徴とされている。
また人間の体に不慣れなせいで、心や体を病みやすいとも言われる。気の毒なことに、せっかく地球を助けにきてくれたのに、なにかと忙しい地球の生活に圧倒されがちで、自分を癒すためにひとりの時間を必要ともしているそうだ。
また、スターシードは大きな使命を持っている分、エネルギーの消耗も激しいそうで、多くの睡眠が必要で、常に寝不足を感じている人もいるという。
さらに、前世で受けた傷がほくろやあざとして体に残っている人がいるようで、これらは「バースマーク」と言われており、地球での役割や本人の能力を意味するとも考えられている。
一般的にスターシードは直感が鋭く物事の本質を見抜こうとする傾向にあるので、創造性が求められる仕事が得意なんだとか。

なぜスターシードと思い込む人が増えたのか?バーナム効果の関連性
なぜそうした人たちは、自分を地球人ではなく、地球外惑星からやってきたなどと思い込んでしまうのだろうか?
英マンチェスター・メトロポリタン大学の心理学者ケン・ドリンクウォーター氏らはら『The Conversation』に寄せた記事で、その1つの要因として「バーナム効果」を指摘する。
バーナム効果とは、ごくごく一般的な性格の説明を、自分や特別なグループだけの特徴だと信じてしまう心理効果のことだ。
その典型的な例が星占いだ。そこで述べられているのは、大抵の人に当てはまるごく一般的なことでしかないが、まさに自分のことを言っていると感じた経験はないだろうか?
血液型占いもそうだ。「A型は几帳面」、「O型は大雑把」などと良く言われるが、誰にでも几帳面だったり大雑把な一面はある。だがそれを真に受けてしまい、自分の性格を枠にはめ、占いの結果に寄せにいってしまうような心理効果だ。
先ほどのスターシードの説明を読んで、「もしかして自分のこと?」と思った人もいるかもしれない。
人生の意味を探し、ときに居場所がなく孤独を感じることなら誰にでもある。スターシードたちがそれを自分だけの特別なことと思ってしまうのは、バーナム効果ゆえかもしれない。

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ニューエイジ思考の影響も
またドリンクウォーター氏らは、スターシードは1970年代に生まれた「ニューエイジ思考」の一形態であるとも説明する。
ニューエイジ思考にもいろいろ種類があるが、共通しているのは、この世界を宇宙の観点からとらえる、スピリチュアリティや自己を重視する、輪廻転生や高次の意識を信じるといったところだ。
こうした信仰の裏には、科学に対する不信感や、従来の現実認識に対する疑問などがあるのだという。

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空想癖のある人は、自分をスターシードと信じやすい
ドリンクウォーター氏らは、自分のことをスターシードと信じやすい性格もあると説明する。
たとえば、空想癖があり、夢と現実を混同しがちな人は、深遠な宇宙的意識があると言われれば、それを受け入れるかもしれない。
心理学では、これを「ソース・モニタリング・エラー」という。つまり現実と想像を混同してしまう記憶の間違いだ。
そして、これは統合失調症によく見られる症状なのだという。
実際、「統合失調型パーソナリティ障害」(軽症の統合失調症とされている)の人は、陰謀論を信じやすいことが知られている。

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比喩と現実の区別がつかない人も信じ込みやすい
古い家でずっと昔から使われてきた家具は、きっとその家のさまざまな出来事に居合わせたことだろう。
だがもし「古い家具はその家の歴史を知っている」と言ったらどうだろう? あなたは、その家具には家で起きたことについての記憶があると思うだろうか?
もちろんそんなはずはない。それはただの比喩的な表現だ。
ところが、比喩を比喩ととらず、現実のことと受け止められることがある。
これが「存在論的混同(ontorogical confusion)」と呼ばれる、また別のスターシードであると思い込みたくなる心理だ。
比喩と現実との区別がうまくできない傾向がある人たちは、疑似科学的なトンデモ理論でも素直に信じてしまうことがあるのだ。
権威ある人や科学者が言っていると、デタラメな情報でもそれらしく感じてしまう現象を「アインシュタイン効果」と呼ぶが、彼らはまさにそういった情報を受け入れてしまう。その話を信じる人が増えれば、それはいっそう信憑性をおびてくる。
スターシードについても、大手出版社から関連の本が出版され、中にはベストセラーになったものまである。それがただのトンデモ説の信憑性を高めている可能性はある。
このように自分を宇宙人と思い込む人が増えている裏には、心理学的にみるとさまざまな要因があるようだ。
スターシードで本当に奇妙なのは、ちょっとした条件であれやこれやと影響を受ける人間の心なのかもしれない。
References:Starseeds: psychologists on why some people think they're aliens living on Earth/ written by hiroching / edited by /parumo
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