医薬品業界の新型コロナワクチンへの取り組みが不当に過小評価されている

医薬品業界の新型コロナワクチンへの取り組みが不当に過小評価されている

  • Forbes JAPAN
  • 更新日:2022/06/23
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まるで永遠のように感じるかもしれないが、米国をはじめとする世界のほとんどが新型コロナウイルスのパンデミックで封鎖状態になってからまだ27カ月である。状況は実に恐ろしく、大量の死体を一時的に保管するための冷蔵トラックが必要な都市さえある。奇跡のように、バイオ医薬品産業は、ファイザー/ビオンティック、モデルナ、ジョンソン・アンド・ジョンソン、およびアストラゼネカ(欧州で)の各社から新型コロナワクチンを供給し、数百万人の命を救っている。

残念なことに、ロバート・パール博士の書いた、「我々は効果の低い薬品になぜ大金を払うのか」という意見記事は、新型コロナとほとんど関係のない文章の中でこのすばらしい功績を矮小化している。同氏は次のように書いている。

「最小限のリスクで最大限の利益を得るというルールに基づいて、医薬品メーカーは効果が最小限の薬品を、救命薬であるかのような価格で販売、宣伝することが常態化している。極めて効果が高く21世紀最大の革新ともいえる新型コロナワクチンでさえ、最小限のリスクで市場にもたらされた。連邦政府は、数十年にわたる国立衛生研究所(NIH)の受託研究を通じて基礎研究費用の大部分を負担し、「オペレーション・ワープ・スピード」の一環として1800万ドル(約24億3000万円)の事前資金を提供することで企業のリスクを最小限にしている」

まず、これらのワクチンが「最小限のリスクで市場にもたらされた」という見解から見てみよう。ファイザーは、大部分の新型コロナワクチンを生産し、これまでにおよそ70億回の接種が行われているが、同ワクチンの発見、生産、流通に関して、オペレーション・ワープ・スピード(OWS)の資金は一切受けていない。パール氏は、パンデミック開始当初にはmRNAワクチン技術がまだ確立されていなかったことを忘れているようだ。ファイザーは、このワクチンの開発に20億ドル(約2723億円)の事前投資を行うとともに、このまったく新しいワクチンの生産に必要な工場を建設した。ファイザーのCEOであるアルバート・ブーラ博士は、もしこの技術が失敗しても、20億ドルの投資で「会社は倒れることはない」と強く宣言した。しかし、ファイザーの2020年の売上は417億ドル(約5兆6300万円)だったため、もしmRNA事業が失敗していれば、投資家はいい顔をしなかっただろう。ファイザーがOWSと交わした契約は、ワクチンが臨床試験に合格し、米食品医薬品局(FDA)に承認されれば、接種1億回分をOWSが購入するというものだった。つまり、ファイザーにはワクチンが失敗した場合の転落防止ネットはなかった。

第2の新型コロナワクチン生産者であるモデルナは、OWSから資金を受けた。しかし、パンデミック初期、モデルナは苦闘するバイオテック企業であり、創立10年間にまだ1つの製品も作っていなかった。つまり効果を立証されていないワクチンを開発、生産するために必要な資金を持っていなかった。ありがたいことに、OWSはこの事業に資金を提供した。それはパンデミックまっただなかに第2のワクチンを得るために不可欠だった。これこそが、国家危機において政府がなすべき役割だ。モデルナも、同社のワクチンがFDAに承認された暁には1億回分を販売する契約を結んだ。しかし、もしmRNAワクチンが失敗していたなら、この基礎技術の重要性を踏まえると、モデルナもまた財政危機に陥っていただろう。「最小限のリスク」などと誰がいえるだろうか。

連邦政府が数十年のNIH委託研究を通じて、基礎研究コストの大部分を支払ったというのも、ひどい誇張だ。なによりも、これらワクチン開発を真に推進したのはベンチャーキャピタリストたちだ。この技術の潜在的利用に関する研究は、数十年来行われており、進捗は遅かった。モデルナとビオンティックが設立され、数千万ドル(数十億円)のVC資金を得て上場するまで、mRNAワクチンを現実のものにするために必要なブレークスルーは生まれなかった。

NIHが指揮あるいは資金援助した研究が、幅広い医薬品の発見と開発の連続にとって重要であることに疑いはない。政府と業界の相互関係を大きく変えたバイ・ドール法の共同提案者であるボブ・ドール上院議員が、同法律が新型コロナ治療の競争に与えた影響に関する重要な論説記事を書いている。彼は公共と民間の研究の相互関係を刺激することが、革新的科学の恩恵をいち早く患者にもたらすために必要であることを説明した。

「多くの研究機関と大学が、この種の基礎研究や、最終的に革新的治療や製品につながる発明を担っている。しかし、こうした革新を市場にもたらすためには、莫大な投資と、民間セクターによるさらなる研究と開発が必要だ。政府が1ドル費やすたびに、業界はその10倍から100倍を費やしている」

パール博士のような批判は、バイオ医薬品産業における救命にかかわる業務の重要性を矮小化している。バイオ医薬研究開発は、リスクが大きく多大な費用を要する取り組みであり、そこでは何千人もの創造的で勤勉な科学者がその才能を活かして世界の病気を治し、パンデミックをなくそうと日夜努力している。これは改めて認識すべきことであり、過小評価されるべきではない。

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