【二宮清純コラム】阪神ぶっちぎりの18年ぶりリーグV 四球価値見直しで得点力大幅アップ

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  • 更新日:2023/09/19

優勝マジック1で迎えた9月14日、阪神タイガースは甲子園球場で読売ジャイアンツに4対3で勝ち、2005年以来、18年ぶり10度目(1リーグ制時代含む)の優勝を達成しました。目標とする優勝を「アレ」という言葉にくるんでの快進撃でした。「四球もヒットと同じ」大きな勝因としてあげられるのが四球数です。9月14日現在、阪神の総四球数452個はリーグトップ。2位の東京ヤクルトスワローズに46個もの差をつけています。ちなみに昨シーズンの総四球数は358個でリーグ3位。トップは優勝したヤクルトの442個でした。阪神・岡田彰布監督は「四球もヒットと同じ」という考えの持ち主です。2005年、岡田監督の下で優勝を果たした桧山進次郎さんは、「同じ出塁でも初球をカーンと打ってのヒットと、ピッチャーに5球も6球も投げさせての四球では、与えるダメージがまるで違ってくるんです」と語っていました。以下はセ・リーグの四球数トップテンです。1位  大山悠輔(阪神)   882位  村上宗隆(ヤクルト) 813位  岡本和真(巨人)   64近本光司(阪神)   645位  中野拓夢(阪神)   536位  佐藤輝明(阪神)   527位  坂倉将吾(広島)   458位  細川成也(中日)   449位  佐野恵太(DeNA)   4110位  ドミンゴ・サンタナ(ヤクルト) 39坂本勇人(巨人)   39「歩のない将棋は負け将棋」実に11人中4人までを阪神の選手が占めています。相手ピッチャーが4番の大山選手を警戒するのは当然として、注目すべきは1番・近本選手と2番・中野選手の四球数です。本来、俊足の彼らを、相手ピッチャーは塁に出したくないはずです。にもかかわらず、これだけの数を与えているのは、「2人の意識が変わってきたから」(セ・リーグ球団スコアラー)でしょう。「これまでは、2人とも積極的に打ってくるタイプのバッターだった。それが今年はじっくりとボールを見て、クリーンアップにつなげようとする。これは明らかにベンチの意向を反映したものでしょう」(同前)シーズンが始まる前、岡田監督はフロントにかけ合い、それまで1ポイントだった四球の査定を1.2ポイントにしました。シーズン後には、積み上げた四球が年俸に加算されるわけですから、選手の四球への意識が変わるのも当然です。たかが0.2ポイント分の上昇とはいえ、これは岡田監督の大ヒットだったと言えるでしょう。そう言えば岡田監督、外国人選手を獲得するにあたり、決め手となるのは「ボール球に手を出さないこと」と述べています。<とくに日本の野球は、低めにボールになる変化球で攻めてくることが多い。そんな球に手を出しては、安打にするのが難しいばかりでなく、自分の打撃を崩すことにもつながる。ボール球を振らないことが、日本で成功するいちばんの秘訣だ。そういう素質を持った選手なら、契約の仕方1つで働かせることが可能になる。簡単に言うと、四球にも出来高の契約を付けてやるのだ。外国人の選手と契約する際に、本塁打や安打、打点に出来高が付くのはもはや当たり前だが、日本の球団は四球については重要視してこなかった>(自著『そら、そうよ 勝つ理由、負ける理由』宝島社)阪神の総ホームラン数は、下から2番目の71本。それでいて総得点504はリーグトップ。「歩のない将棋は負け将棋」という格言が将棋の世界にはありますが、「歩」を「四球」に置き換えれば、野球も同じことが言えるのではないでしょうか。(記録は全て9月14日現在)二宮清純

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二宮 清純

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